県外イカ船を金沢に集約 奥能登の漁港損壊、県と県漁協が方針

スルメイカ漁で石川県外の漁船が多く出入りし、活気づく港=2020年5月、輪島市の鹿磯漁港

  ●入港30隻限定 「早く直さないと衰退」 

 能登半島地震で海底が隆起するなど奥能登の漁港に甚大な被害が出たことを受け、石川県と県漁協は26日までに、県沿岸で操業するスルメイカ漁の県外漁船団の入港と水揚げを、金沢港に集約することを決めた。石川近海での漁は毎年5~7月ごろに最盛期を迎えるが、金沢への入港は30隻に絞る。地震がなければ、能登の港に多くの船が出入りし、水揚げ以外の経済効果が見込めただけに、奥能登の漁業関係者は「早く港を直してもらわないと、地域の漁業が衰退する」と訴えている。

 スルメイカ漁は、島根から北海道までの漁船が東シナ海で生まれた群れを追って北上しながら一斉に操業する。

 石川県内の漁港の5~7月の水揚げ量は、2022年が1588トンだったのに対し、昨年は8割以上減って235トンにとどまり、1995年の統計開始以降で最少だった。県水産総合センターによると、資源量の減少に加え、燃料費の高騰で出漁する船の数も減ったとみられる。

  ●外貨獲得の機会

 能登の漁港にとって、県外漁船の出入りは、貴重な「外貨獲得」の機会だという。昨年は県内の港に計130隻が入港。水揚げの手数料収入や、油・氷の補充、食料の購入のほか、しけの日には漁師が飲食店を利用するなど港町の経済を回す役割を果たしていた。

 しかし、地震で主な補給基地となっていた輪島市の輪島、鹿磯(かいそ)、珠洲市の蛸島の各漁港は損傷が激しく、船の利用ができない状況が続く。

 蛸島漁港は給油施設や製氷施設が破損。例年スルメイカ漁で2億~3億円ほどあった水揚げを失うことになる県漁協すず支所の上野和春運営委員長は「カニに続き、イカまでうまくいかない」と肩を落とす。輪島、鹿磯漁港は、海底が隆起して漁船の出入りが難しく、漁業関係者は「どうしようもない」と諦め顔だ。

 例年、50隻以上の県外船が入港し、沿岸スルメイカ漁で4億~5億円の水揚げがあった志賀町の富来漁港も、奥能登から避難する船が停泊するため、県外船の入港対象から外れた。

 県と県漁協は、唯一県外船の寄港を認めた金沢港に関しても、場所の制約があることから、昨年の水揚げ上位30隻までに入港を限定する。県漁協の福平伸一郎専務理事は「やむを得ない措置だと理解してほしい。早く能登の漁業が正常にできるように、国などに漁港の早期復旧をお願いするしかない」と話した。

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