正露丸を不適切製造 キョクトウに業務停止 虚偽の試験記録で出荷

キョクトウが製造する胃腸薬「正露丸」(同社ホームページから)

 胃腸薬「正露丸」が主力の製薬会社「キョクトウ」(富山市)に対し、富山県は26日、医薬品医療機器法に基づき製造業務を23日間停止するよう命じた。製造した医薬品の試験結果が承認規格を満たしていないのに、適合したとする虚偽の試験記録を作成して出荷していた。製造販売業務も22日間の停止を命じた。いずれも30日から。健康被害は確認されていないという。

 県によると、正露丸の有効成分「ロートエキス」が承認規格より少なかった。虚偽の試験記録の作成は検査責任者の指示で行われ、2021年12月以降、複数回出荷された。県が22年7月に実施した立ち入り調査を機に社内調査を進め、23年10月に虚偽の作成が発覚した。

 キョクトウは県の立ち入り調査で正露丸の成分分析に問題があると指摘を受け、承認規格外となる可能性が否定できない約516万本を対象に自主回収を実施し、22年9月~23年11月に約20万本を回収した。虚偽の試験記録の作成で出荷された製品も回収対象に含まれていた。

 キョクトウは26日、業務停止命令を受けた事実を公表した。処分に至った経緯や原因に関して、作業人員に比べて生産数が過多で、生産計画のひっ迫が常態化していたとした。虚偽の試験記録を作成した理由について、担当者は「検査責任者は既に退職しており、作成を指示した理由は分からない」と話した。

 正露丸を含む胃腸薬4品目に関しては、原料を仕入れた際に品質試験をせず、原料メーカーの試験を転記する違反もあった。

 キョクトウは1950年に設立され、全国の薬局、やドラッグストアに正露丸を供給し、配置薬の製造販売も手掛ける。不適切製造が発覚する前の年商は約5億円で従業員は約20人。再発防止について「組織全体が法令順守への意識向上を図り、医薬品の品質を最優先にする文化の醸成に努める」とした。1カ月以内に改善計画を県に提出する。

 県内では2020年度以降、製薬メーカーの不適切製造が相次いでおり、行政処分は今回で7件目となった。県薬事指導課の岩瀬怜課長は「遺憾であり、県薬業連合会と連携して法令順守、GMP(製造・品質管理基準)順守の研修を続けたい」と話した。

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