選抜ベスト4の中央学院に公式戦で勝利した「千葉県立四街道高校」 高校野球の常識では考えられない指導に驚き

関東勢の活躍が目立った選抜高校野球から約1カ月。全国各地では、春季大会が行われています。

激戦区と言われる千葉県では、春の選抜ベスト4の中央学院に公式戦で勝利したことがある「県立四街道高校」が注目されています。

公立が勝ち上がるには厳しい時代、四街道高校の取り組みを追ってきました。

記事中では、四街道高校が導入している機器の価格を紹介します。

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千葉県で存在感を示す「四街道高校」

四街道高校

1951年に創立された県立四街道高校。地元住民からは「四高(よつこう)」の愛称で親しまれています。

野球部は、2018年の夏の西千葉大会でベスト8。昨年の秋の大会では、選抜ベスト4まで勝ち上がった中央学院に4対1で勝利するなど、千葉の公立の中では頭が一つ抜けた存在と言えるでしょう。

86名の部員(1年33人、2年30人、3年13人、マネージャー10人)を指導する古谷健監督は、県立佐倉南高校でベスト16を経験。その後、県立成田国際高校を率いた実績を持ちます。選手の自主性を尊重する監督で、公式戦での木製バットの使用や投手の分業制など、常識にとらわれない指導を2010年代から取り入れていました。

2024年の春季大会では、夏の大会のシード権となるベスト16まで進出しており(4月26日時点)、さらに上を狙っています。春季大会ベスト16の内訳は、私立13校、県立2校、市立1校となっており、公立校が厳しい状況にあることが分かります。そんな中で、四街道高校は何を強化してきたのでしょうか。

ちなみにですが、秋の新チームから中央学院が公式戦で負けたのは、春の選抜で優勝した健大高崎、準優勝の報徳学園と四街道高校のみ。

※春季千葉県高等学校野球大会は4月20日〜5月5日の日程で行われるため、執筆した4月26日時点ではベスト16まで決定

新チームから重視したのは「1点の取り方」

昨年の夏は、県大会1回戦で千葉英和に敗退した四街道高校。

強豪校に勝つため、新チームから重視したことを聞いてみると、「1点の取り方を何パターンも作ったことですね。昨夏、1回戦で負けたチームも力はあったのですが、点が欲しい時に取れませんでした。新チームから1点の取り方をキーにした結果、中央学院さんに勝つことができたと考えています」と古谷監督は話します。

春季大会2回戦で勝利した四街道高校

テーマは1アウト3塁を作るという点。それは今年の春の大会でも変わらず、盗塁やエンドランを駆使するなど、チーム全体に「次の塁を狙う」強い意識が浸透していました。

ランナーを3塁に置いてからはヒッティング以外にも、スクイズやセーフティスクイズで相手を揺さぶり、点をもぎっとっています。しかし、スクイズ失敗などで点を取れないケースもあったので、確実に1点を取ることをさらに意識していくそう。

選手の野球技術は「最新機器」を使って向上

戦術面では、1点を取るパターンを増やしてきた四街道高校。選手の野球技術向上については、最新機器を使った細やかな指導を行っています。

ラプソードを導入している
ラプソードを使いこなすマネージャー

具体的には、プロ野球などでも使われている簡易型弾道測定器「ラプソード(定価49万5000円)」を実費で購入。投手の球速やボールの回転数、変化量などを測定することで、より論理的な話が可能になったそう。

光電管 ワイヤレスタイム測定機でタイム測定

それ以外にも、正確なタイム測定を行うために使用する「光電管 ワイヤレスタイム測定機(定価:22万円)」や、大谷翔平選手が使用していることでも有名な、スイング測定機「BLAST BASEBALL(定価:2万1780円)」など、さまざまな機器を導入しています。

BLAST BASEBALLを使った測定

科学の力を借りて、選手1人ひとりの身長・体重・筋肉量、スプリント力、持久力、スイングスピード、球速、ボールの回転数といったデータを取って指導を行っているのです。

これまで見えなかった能力が可視化されることで、「課題が明確になるので、選手の伸び方が違いますね」と話す古谷監督。

春の大会で背番号11を付けている、福永竜基投手(2年)も大きく伸びた1人。入学時は120km/hだった球速が1年間で134km/hまでアップし、今では重要な戦力として活躍しています。

トレーナーと契約し、選手のパフォーマンスを上げていく

もう1つ重視していることは、怪我防止とパフォーマンスの向上です。

4人のトレーナーに入ってもらい、正しいストレッチの仕方や、選手個人の状態に合わせたトレーニングメニューを組んでいるそう。古谷監督の後輩や教え子のトレーナーに見てもらっているため、月額1人1000円という価格になっているとのこと(それぞれのトレーナーが週1~2回もしくは、2週間に1回の頻度で来る)。

高校野球を続けるには多額のお金がかかるため、選手の保護者からするとこの価格設定は非常に助かるのではないでしょうか。

トレーナーは大会当日も同行。連投になる先発投手の可動域をチェックして、科学的な根拠に基づき投手運用もしています。私立ほど予算が取れない公立校ですが、本気で上を目指す監督に「協力したい」と心を動かされる人が多いのでしょう。

今年から変更された新基準の「低反発バット」もプラスに

選手とともにトップを目指す古谷監督にとって、今年から変更された新基準の低反発バットはプラスに働くと考えているそうです。

バットが変わった影響について聞いてみると、「長打は減りましたね。以前までのバットであれば多少芯を外しても飛距離はでたのですが、新基準のバットはごまかしが効かなくなっています」と説明。

それでも、バットの芯で捉えるとボールは飛んでいくので、確実にミートする能力が大切になってくると話してくれました。

四街道高校ではデータを駆使し、選手個人の基礎能力をアップ。ボールへの効率的なアプローチが可能になり、スイングスピードもアップしているので、速い球にも余裕を持ってスイングができるようになったそう。

新チームから一冬を超えた四街道高校の躍進に期待したいところです。

参考資料

  • Rapsodo
  • ミズノ公式オンライン

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