六本木のド真ん中で19時開店・翌5時まで…ギラギラ看板の“深夜薬局”で見た金満と色欲

店内の様子をうかがう男性2人組(C)日刊ゲンダイ

【話題の現場 突撃ルポ】#5

都内屈指の歓楽街・六本木。キャバクラやラウンジ、バーが立ち並ぶ盛り場の一角に、ひときわ目を引く「深夜薬局」がある。営業時間は午後7時~翌午前5時と、近隣の薬局が店じまいをする時間帯に開店することからネット上では「怪しい」とウワサされている。謎めいた店の正体を探るため、本紙記者は夜の六本木に向かった。

東京メトロの六本木駅5番出口から東京タワー方面に向かって歩くこと約4分。ディスカウントチェーン「ドン・キホーテ」の先を左折すると、目の前に見えるのが「六本木漢方薬局」だ。赤色のネオンで煌々と輝く外観からは、俗に言う“薬局らしさ”は到底感じ取れない。

「今日飲まなきゃいけないんだけど、二日酔いに効くクスリある?」

午後7時の開店と同時に来店したのは20代前半とおぼしき夜職の女性。仕事で鯨飲する日は出勤前に立ち寄るというリピーターだ。

「場所柄、お客さまはナイトワーカーの人をはじめ、この辺りで飲まれている方が中心です。飲み屋街である六本木にも深夜薬局があれば便利だと思ったのがきっかけで始め、近々二日酔いに効く薬をボトルキープ制で始める予定です。人の目に留まるよう、あえて“薬局らしくない薬局”のコンセプトで運営しています」(代表取締役会長・笠原翔さん)

2022年1月、コロナ禍で撤退したナイトクラブの跡地に開業。コンセプトに沿って、店内の床は大理石調にあしらわれ、壁に掛けられたモニターからはどこか懐かしいクラブミュージックが流れていた。

滋養強壮剤だけで会計18万円

同薬局では、処方箋がなくても処方できる一部の風邪薬、ビタミン剤、塗り薬といった医療用医薬品のほか、漢方薬、サプリメントなど、約100種類の商品が取り扱われている。客の状態に合わせて常駐する薬剤師により処方・提案される。

中でも男性客から高い人気を誇るのが滋養強壮剤だ。

「先日、1人で18万1000円分の滋養強壮のサプリメントと健康食品などを購入された中国人の男性がいて、一番の目的は1瓶(2カプセル)1万3000円の『牛龍黄』でした。あまりの金額に何度も電卓で値段を確認したのですが、全然お構いなしで……(笑)」

そう話すのは、薬剤師のさくらこさん。土地柄か客の多くは富裕層で、支払いはブラックカードやアメックスのプラチナカードだとか。

午後9時過ぎ、高級ブランドに身を包んだ若い男性2人組が吸い込まれるように店内へ。5分も経たず退店した2人の手には、小さなスティック状の何かが握られていた。1人はこう語る。

「あー、これっすか。『男の青汁』って言うらしいっす。特に性生活で悩みはないけど、1本200円だし夜の行為を充実させるために試してみたくて(笑)」(自営業の20代男性)

「男の青汁」には国産大麦若葉のほかマカ、アルギニン、シトルリン、亜鉛など、男性の活力をサポートする成分が豊富に含まれ、さくらこさんによれば同薬局で販売される男性向け商品の中でも売れ行きは好調だという。

夜も更けた午前0時前、外観につられて店内の様子をうかがう外国人観光客らがチラホラ見受けられた。インバウンド需要の高まりにより、今後はナイトワーカーだけでなく海外旅行者の目的地になる日が来るかもしれない。

© 株式会社日刊現代