SMILE-UP.が英BBCに“東山発言歪曲”抗議の違和感…なぜ堂々と記者会見を開かないのか?

SMILE-UP.の東山紀之社長(C)日刊ゲンダイ

旧ジャニーズ事務所の創業者であるジャニー喜多川氏(故人)による性加害問題で被害者の補償にあたるスマイルアップ社(東山紀之社長=57)が「厳正抗議」だ。

同社が矛先を向けたのは、ことし3月末にドキュメンタリー番組「捕食者の影 ジャニーズ解体のその後」を放送した英BBC放送に対して。ジャニー喜多川氏やスタッフ2人による連続児童性加害で、被害を打ち明けた「当事者の会」メンバーらが誹謗中傷にさらされている問題で、インタビューに応じた東山社長は「言論の自由もあると思うんですね」と、中傷を容認するようなことを言ってのけ批判が殺到した。

しかしながらスマイル社によると、このインタビューは《東山の発言を意図的にゆがめて放送し》たものだという。具体的には「なるべくなら誹謗中傷はなくしていきたいと僕自身も思っています」との発言部分がカットされ、《視聴者の印象を操作しようとするものであると言わざるを得ず、大変遺憾》というのである。

また、番組で取材にあたったアザー記者はスマイル社から、広報担当者同席との条件で「被害者たちと会って欲しい」との要望があったことを明らかにした。そして行われたミーティングで、「かれらは、私たちが事実を取り違えている、嘘をついていると言ってきたのです」とし、アザー記者は日本メディアにこう伝えた。

「この期に及んでスマイルアップは広報と風評管理に執着している。問題は終わっていないし、終わりにはほど遠い」と。スマイル社はこれについても、こう主張している。

《面談の事実及び面談の内容を番組で放送しないことはもとより、その他の方法によっても公にしないことをお約束いただき、その前提で、当該被害者に面談への協力をしていただきました》

《BBCに今回の事案の本質や実態をご認識いただき、多角的・中立的な観点から本番組を放送していただきたいとの切実な思いからであると話されました》

しかしその舞台裏を明らかにされ、《当該被害者の人権が侵害されたものと言わざるを得ず、弊社としても大変遺憾に存じます》というのである。

藤島ジュリー元社長は雲隠れ

番組放送から約1カ月、今になってこうした抗議措置に出たのは、東山発言への批判の声が鳴りやまないからだろう。また元マネジャーら2人の性加害を知りながら、警察に訴えることすら否定的で、他人事といった面持ちの東山社長への不信感も払拭したいのだろう。「当事者の会」元代表で作家の平本淳也氏(57)はこう言う。

「インタビューでのコメントは、たとえ一言、二言カットされるだけで印象が変わってしまう恐れがあります。ぼくも経験がありますから、今回もそうであれば東山氏がそういう意味じゃないのにと訴え、訂正したい気持ちになるのも分かります。今回批判されている発言が『誤解』でも、それを放置すると、企業トップとして、さらに企業そのものの姿勢や体制への信用度を落としてしまいますから」

■「本気なら法的措置に出ればいい」

とした上で「ただし、今回の抗議とその公表をみると、それだけでは弱いとも感じます」とし、こう続けた。「せっかく情報を発信するのでしたら、もっと強いメッセージを打つべきだと思います。誹謗中傷は許されるべきものではなく、犯罪であること。社として厳正的確な判断のもと対処するなど。またスタッフ2人による性加害問題も、警察に相談した上でそれを公表すればイメージも変わる。インタビューでカットされたという部分のコメントをあげ、『歪曲』との抗議ですが、それこそ最強の弁護団を擁しているのでしょうから、本気であれば法的措置に出ればいい。メディアからの要請に応じて、BBCアザー記者のように記者会見すればいい」

スマイル社は被害者補償・救済について、随時ホームページで公表はしているが、申告者の認定基準などが不明瞭で算定基準も「ブラックボックス化している」との声が少なくない。東山社長は会見で自ら、「言論の自由」発言の真意を説明すべきだし、それが世間の「誤解」を解くのにも、最善の策だろう。

「とは言え、これ以上、騒ぎにはしたくないのでしょう。おそらくもう、何もしないでしょうね」と平本氏。違うのであれば、雲隠れしたままの藤島ジュリー元社長と共に公の場に出てきてメディアの質疑に正々堂々と応じるべきだ。

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