正露丸で虚偽記録 キョクトウ(富山)に業務停止命令

業務停止命令を受けたキョクトウの本社=26日、富山市牛島新町

 富山県は26日、製造した医薬品の試験結果が承認規格に不適合となったにも関わらず虚偽の試験記録を作成して出荷したなどとして、医薬品医療機器法に基づき、胃腸薬「正露丸」などを手がけるキョクトウ(富山市牛島新町、福見勉社長)に業務停止命令を出した。期間は製造業務が30日から23日間、製造販売業務が同日から22日間。これまでに健康被害は報告されていないという。

 県によると、違反があったのは「正露丸」のほか、「本方正露丸」と「複方熊胆円(ゆうたんえん)」「複方熊胆丸(ゆうたんがん)」の計4品目。2022年7、8月に県が同社に実施した立ち入り調査で、医薬品の成分分析が正しく行われていないことが発覚した。同社は同年9月に正露丸500万個余りを自主回収した。

 社内調査の結果、21年12月以降、正露丸の有効成分「ロートエキス」の量が規格基準を満たしていないのに、適合したとする虚偽の試験記録を複数回にわたり作成して出荷したことが分かった。

 原料受け入れ試験の一部を実施していなかったことなども判明。古くは03年から虚偽の製造記録が作成されており、適切な製造管理や人員配置もされていなかった。23年10月に県に報告書を提出した。

 県薬事指導課は「重篤な健康被害が発生する事案ではないと認識している」とした。体制の抜本的な改革などを求める業務改善命令も出し、再発防止策を含めた改善計画を5月24日までに提出するよう求めた。

 同社は26日にホームページで違反の内容や経緯を説明。「製造の継続や出荷を優先し、必要な手続きを避けようとする企業風土が違反につながった。慢性的な人手不足でGMP(製造・品質管理基準)順守の意識が形骸化した」とした。福見社長は取材に「全ての関係者に心よりお詫び申し上げる。原因究明を徹底的に行い、再発防止策を検討する」と述べた。

 県内では近年、不適切製造事案の発覚が相次いでいる。業務停止命令は21年3月の日医工以降、5件目。

© 株式会社北日本新聞社