【4月27日付社説】ギャンブル依存症/患者の支援策充実が急務だ

 金銭感覚をまひさせる、ギャンブル依存症の怖さを痛感させられた。社会全体でその危険性を強く認識し、啓発や予防、患者の支援に取り組む必要がある。

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳だった水原一平容疑者が、違法なスポーツ賭博による借金返済のため大谷選手の口座から不正に送金したとして、銀行詐欺の疑いで刑事訴追された。

 衝撃だったのはその金額だ。水原容疑者の賭博による損失は日本円にして約62億に上り、2年余りでオンラインなどで賭けた回数は約1万9千回、1回当たり約200万円をつぎ込んでいた。何とか取り返そうと賭け続け、負けが雪だるま式に膨らんだのだろう。水原容疑者は、自身がギャンブル依存症だと告白している。

 日本でも新型コロナウイルス禍を経て、公営ギャンブルをオンラインで楽しむ人が増えた。違法なオンライン賭博が若者を中心に急速に広がっている。時間と場所を問わず、誰もがパソコンやスマホで気軽に賭け事をやれる環境にあり、決して人ごとではないと自覚することが大切だ。

 ギャンブル依存症は精神疾患の一つで、世界保健機関(WHO)が病気に認定している。厚生労働省が2020年に実施した調査では、18~74歳の2.2%に依存症の疑いがあった。200万人近くの人が依存症を疑われているものの、実際に治療している人は1%にも満たないという。

 賭け事をしないと落ち着かない、負けた金を取り返そうとする、ギャンブルのことでうそをついたり借金したりする―などが依存症の症状だ。借金を重ね、家庭や人間関係が崩壊してしまう人も多い。

 深刻な状況に陥る前に、保健所や医療機関に相談することが重要だ。依存症の自覚がある人、家族や知人に疑われる症状がある場合は相談してほしい。国や自治体は依存症の実態や治療法などについて周知を強化する必要がある。

 患者の支援促進、医療提供体制の整備などを定めた国の対策基本法が18年に施行された。しかし具体的な対策は民間団体などに頼っている状況だ。県内では回復トレーニングに取り組んだり、本人と家族らが正しい知識を学んだり、治療に取り組んだりする自助グループなどが活動しているが、行政による支援は十分とは言えない。

 競馬や競輪などの公営ギャンブルは、自治体の大きな収入源となっている。国や自治体はギャンブルに税収を求めるのであれば、積極的に依存症対策に取り組み、患者や家族らを救済すべきだ。

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