西川ヘレンさんのきよし師匠や家族への思い、周囲への気遣いには、会うたびに感激【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】

西川ヘレン(C)日刊ゲンダイ

【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#190

西川ヘレンの巻

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昨年、芸能生活60周年を迎えられた西川きよし師匠の奥さま、西川ヘレンさん。1960年代、端正なお顔と抜群のプロポーションに、ギャップのある関西弁で大人気でした。「関西弁のめちゃめちゃうまい、きれいな外国の人!」と私も新喜劇はもちろん、ヘレンさんの出演される番組は欠かさず見ていた大ファンのひとりでした。その姿がある日を境に画面から消えた……後に知ることになるのですが、新喜劇の看板女優の座を捨て、当時駆け出しだったきよし師匠と結婚されていたのでした。

ヘレンさんにお会いしたのは三十数年も前のこと。きよし師匠に初めて食事に誘っていただき、きよし師匠とマネジャーと一緒に高級ふぐ料理専門店へ。個室の引き戸が開けられて中へ入ると、そこには着物姿のヘレンさんと当時俳優活動をされていた長男・忠志くんと、長女・かの子ちゃんの“きよしファミリー”が!

「西川の妻のヘレンでございます。いつも主人がお世話になって、ありがとうございます」と三つ指をついて丁寧に挨拶をしてくださいました。きよし師匠との食事というだけでも緊張する中、憧れのヘレンさんまで目の前にいたので、何を食べたのかほとんど記憶にありません。

以降、何度もご一緒させていただきましたが、とにかくスタッフへの気遣いが素晴らしいことと必ず「主人や子供らがお世話になっております」とご家族のことで頭を下げられるので私も含めてスタッフが恐縮しています。

結婚された当時のことを伺うと「結婚自体にも反対されたし、するんなら私(ヘレンさん)が残って、主人が引退せえ(吉本から)言われましたよ」。そんな大反対を押しきられた理由は「この人は絶対成功する、この人に私の人生をかけよう、私が支えようと思いましたもん。うまいこといったから言うてんのん違いますよ」と笑っておられました。

直後「これだけ思って、主人も“ヘレンのおかげや”言いながらシッカリ浮気してますねん! ホンマに男の人てなんちゅう生きもんなんでしょうね」と切り返し、「その(浮気相手の)女性と話したら、これがエエ人ですねん! せやから女性を見る目は一流ですねん」。(トミーズの)雅くんが「それ、のろけですやん!」で大爆笑に。

一番感激したのはヘレンさんの講演。お母さまの介護の話をされた時でした。「オムツ替える時に母が言うんです。『こんなことさしてかんにんやで』て。その時、私言いましてん。『なにを言うてんのん。生まれた時はお母ちゃんにおんなじことしてもろたやん。そのお返ししてるだけやんか~』て」。会場では涙を拭うお客さんが数多くいらっしゃいました。

また、バスで移動中、きよし師匠に五木ひろしさんからお電話が。楽しげなきよし師匠の耳元で「パパ、30分過ぎてますよ。お話続けるんやったら、パパからかけ直したら?」。いつもご主人、ご家族、そして同じように周囲のことも考えてくださるヘレンさん。これからもお元気でお過ごしいただきたいと思います。

(本多正識/漫才作家)

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