何でもかんでも旧ジャニーズを叩けばいいってもんではない…FCで数百億円の儲けは出ない

スマイルアップの東山紀之社長(C)日刊ゲンダイ

【城下尊之 芸能界ぶっちゃけトーク】

この4月半ば、旧ジャニーズ事務所である「SMILE-UP.」(スマイルアップ)が、ファンクラブとチケット販売を行う事業部門「ファミリークラブ」を今夏をめどに分社し、株保有割合も段階的に減らして独立させると発表した。その間は収益分配を受け取らないとしている。スマイル社はあくまで廃業前提で補償業務に専念するというわけだ。

この発表に対して、一部メディアが「ファンクラブからの年間数百億円という莫大な収入の行方はどうなるのか」と騒いでいる。

確かに、ファンクラブには、さまざまなグループ・アーティスト合わせて1200万~1400万人の会員がいて、1人4000円の年会費で総額500億~600億円くらいの莫大な収入になるとされる。

しかし、何度も繰り返される、このファンクラブの儲け話。僕は常々、大きな違和感を持っている。

まず、その会費収入がそっくりそのまま儲けになるはずはない。というのも、会員には年3~4回、16ページから20ページのオールカラーの冊子が会報として届く。ちょっとした雑誌のようなものだ。そのほか、会員それぞれの誕生日当日に配達指定郵便でバースデーカードが送られるし、元日には年賀状も届く。これらは、それぞれのタレントの撮影、デザイン、印刷などの制作コストに加え郵送費もかかる。

それぞれのグループに複数人の担当者がいて、専属カメラマンも含め、かなりの人件費がかかっているだろう。それらもろもろを考慮すれば、年間4000円でそれなりに満足度が高い会員サービスだと思われる。他の芸能事務所のファンクラブでは、会報もほとんど届かないというところもあるというからなおさらだ。

以前、関係者に話を聞いたことがあるが、「ファンクラブの会費で儲けようなんて気はまったくない」と言っていた。

「コンサートに来てもらうことが大事で、収入源はコンサートのチケット代金とグッズ販売」と説明していたのだ。

マスコミの一部が「ファンクラブ会費だけで数百億円の丸儲けだ」と書き立てるのは、その実態をまったく知らない“机上の空論”だろう。

なんでもかんでも旧ジャニーズを叩けばいいという風潮はいかがなものか。問題点とそうでない点をキチンと分けて考える必要がある。

(城下尊之/芸能ジャーナリスト)

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