交通整理を(4月27日)

 わが国の歩みを振り返る目線は、勝手な思い込みに覆われている。社会の中心は農村、農民だったとは本当か。それだけでないと、歴史学者・網野善彦さんは異を唱えた。山や海の民、商工民、芸能の民の存在を説きながら▼女性のあり方も、これまでの通念とはかけ離れていると指摘した。家の奥に押し込められた存在ではなかったという。平安時代は所領を管理した。鎌倉将軍の御家人になった。「女地頭」もいた。今で言う金融業者として多数、名を残している。家父長制度が浸透し、いつの間にか影が薄くなったようだ(「日本の歴史をよみなおす」)▼県警本部に今春、初の女性所属長が誕生した。交通規制課長に就いた岡崎美加さん。女性警察官1期生として採用され、31年間キャリアを積んだ。副署長や次長など補佐役が女性向きと考えていたという。今度はトップとして、きめ細やかな心遣い、思いやりを事故防止に生かしてと願う▼常識にとらわれず、日本社会を問い直す若者が増えてほしい―。今年で没後20年を迎えた網野さんの思いだ。「女性だから、男性だから」との先入観を、いまだどこかに抱いてはいないか。頭の中を交通整理し直してみる。<2024.4・27>

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