【相続登記義務化】円滑な実施へ周知を(4月27日)

 相続した土地・建物の不動産の登記が今月から義務化された。所有者不明の土地が増え、公共事業などに支障を来す例が全国で相次いでいるためだ。関係機関は制度変更の趣旨を丁寧に説明し、円滑な相続につなげる必要がある。

 土地・建物の所有者が死亡した際の相続登記は従来、任意だった。今回、正当な理由がないのに、相続不動産を取得して3年以内に登記をしなければ、10万円以下の過料を科すよう、不動産登記法などが改正された。過去の相続分も対象となる。

 東日本大震災を受けた集団移転では、津波で被災した宅地などを自治体が住民から買い取り、高台や内陸への移転を促した。南相馬市では、宅地の名義人が2~3代前のままで、法定相続人が数十人に上る例があった。時効取得裁判を経て相続人を1人に絞ったが、買収まで3年近くかかった。海外にいる相続人と連絡が取れず、買い取りを断念した結果、買収した用地が虫食い状態となり、土地全体の利活用事業に影響が出た地域もあったという。

 未登記により所有者が不明の土地は、地方を中心に全国で410万ヘクタールに上るとされる。九州本島の面積に相当する。公共工事で未登記の土地があれば買収が滞る。不動産開発に向けた民間取引が進まない要因ともなる。管理が放棄されれば、景観の悪化につながるなどとして、対策を求める声も出ていた。

 法務省が昨年8月に実施した全国調査では、登記の義務化について「よく知らない」「全く知らない」との回答が計67%に達した。制度変更に「大いに関心がある」「少しは関心がある」は計51%を占めた。

 福島地方法務局は、市町村の納税通知書に啓発チラシを入れるなどして広報に力を注いでいる。ただ、登記の手続きは煩雑で、専門職に代行を依頼する場合は費用負担が発生するため、二の足を踏む例も少なくないとされる。

 こうした事態への対応策として、相続土地国庫帰属制度が設けられている。登記の名義を変更せずに土地を手放し、国に帰属させられる仕組みだが、広く知られているとは言い難いだろう。高齢化社会が急速に進む中、登記制度が円滑に機能する体制整備は急務と言える。(佐久間裕)

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