摩擦研究に注目!「すべらない靴」開発に込められた研究者の想い

青木秀尚アナウンサー

「こちらのすべりやすい床一般的な靴で歩くとこのように 滑ってしまうんですがこちらの靴を履くと…全然違います」

秘密は靴底の構造に隠されていた

山口教授

「靴の底の形を変えることで摩擦をコントロールして摩擦を上げることができる技術」

開発に携わったのが「摩擦学」が専門東北大学の山口健教授。

左が一般的な厨房用、右が滑りにくい靴。

その違いがはっきりと確認できる。

青木秀尚アナウンサー

「ヌルヌルな状況でもしっかりとグリップ力がある。どうして?」

山口教授

「2つエッジ・角がきちんと立っているブロックがある。」

高さのあるこの部分がポイント。ここが油をよけている。

山口教授

「これによって油を切ってこの中に油が入ってこないよう にすることができる」

この滑りにくい靴は仙台市の企業と共同開発したものですでに商品化もされている。

山口教授

「我々摩擦の研究をしてますので滑って転ぶ転倒を防ぎたいという所からこういう靴底の開発を進めてきました」

滑りにくい靴で転倒を防ぎ労災事故を減らしたい

こちらは厚生労働省の労働災害についての統計。

それによると内訳の4分の1が「転倒」で、その転倒のうち実に4割を占めるのが「すべる」ことによるものだったという。

『滑りにくい靴で転倒を防ぎ労災事故を減らしたい』

この靴に込められた想いだ。

物と物がこすれたり、滑ったりする関係を調べる「摩擦学」その研究は多岐にわたる。

例えば、プロ野球でピッチャーが滑り止めとして使っている「ロジン」。

ロジンを付けるとどれくらい摩擦が上がり、どの程度すべり止めの効果を果たすのか。湿度、気温やボールの種類などでの違いを研究中だ。

山口教授

「日本のボールの方がアメリカのボールよりも20%程度摩擦が高いことが我々の結果から明らかになっている。アメリカのボールは滑りやすいがゆえにロジンバックを付けるのが有効」

さらに、ソールが波を打ったようなこのランニングシューズは2016年リオデジャネイロオリンピックで実際に使用されたもの。

山口教授

「かかとを接地した時はこちら側の摩擦を上げてくれる足を蹴る時はこの向きに摩擦をあげてくれる」

センサーを用いた靴でソールに働く摩擦を計算して設計された。

山口教授

「従来のモノに比べると1,2倍ぐらいグリップ力が上がると実証されている」

摩擦の研究は身近な学問

現在、山口教授はこの研究を生かし高齢者の転倒を防ぐ「つまづきにくい靴」の開発などに取り組んでいる。

ツルツルザラザラ、物と物がこすれると起きる摩擦の研究は私たちの生活に密接にかかわるとても身近な学問だ。

山口教授

「摩擦は色んなところにある我々歩いたりですとか必ず何かと接触をしてそれで何か動きを伝えたり歩いたりしている訳ですそういった事が分かってくると転倒を防ぐとか怪我を予防するとか安全安心な社会の実現に繋がっていくのではないか。摩擦研究を一つのきっかけにしてそういう所に繋がっていけばいいと思っている」

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