日本国債大暴落の壮絶シナリオ…止まらぬ円安、ドル爆騰を経た先にある、まさかの光景【経済のプロがシミュレート】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本政府が抱える巨額の財政赤字。このままでは、専門家をはじめとする多くの人々が警戒するように「国家の破産」へと至ってしまうのでしょうか? 経済評論家の塚崎公義氏は、それとは違う展開が起こりうると考えています。財政赤字が膨らみ過ぎたことによる日本国債暴落と日本円暴落、そしてその先に広がる予想外のシナリオを追っていきます。

多くの人が恐怖する「巨額の財政赤字」だが…

日本政府は巨額の借金を抱えているので倒産する(財政が破綻する)と考えている人も多いのでしょうが、筆者はあまり心配していません。日本人投資家にとって日本国債が最も安全な資産なので、日本政府が資金繰りに困ることは考えにくいからです。

そのあたりについては、前回の拙稿『日本政府の財政赤字は巨額だが…「財政破綻は起こらない」といえる、3つの理由【経済評論家が解説】』を併せてご覧ください。

日本人投資家が日本国債を買わなくなる可能性も否定はできませんが、そうなっても最後の瞬間に大逆転が起きると筆者は予想していますので、シミュレーションしてみましょう。

国債が暴落し、国債の新規発行が不可能に

ある日、大手格付機関が日本国債の格付けを投機的に引き下げた。機関投資家の中には投機的格付の債券を保有禁止と決めている所も多いので、そうした投資家からの売りが殺到した。そうなると、それ以外の投資家も「値下がりする前に急いで売ろう」と考えるので、売りが売りを呼び、暴落が止まらなくなった。政府日銀が必死に買い支えたが、額面100円の国債価格を30円で支えるのがやっとだった。

国債の価格が暴落しても、政府が損をするわけではない。損をするのは国債を持っている投資家である。しかし、政府が新しく国債を発行しようとしても、誰も買わないので、政府は資金繰りに窮することになる。公務員の給料も払えず、過去に発行した国債の満期に償還できず、破産(財政の破綻)は避けられそうもない。

円が嫌われ、ドルが爆騰

日本政府が破産すると考えた人々は、「日本政府の子会社が発行した日本銀行券」が紙くずになると考えて、急いで手放そうとした。日用品はすぐに売り切れ、不動産等は取引に時間がかかるので、人々は急いで外貨を買った。そこで、ドルの値段が急騰した。

政府日銀はここでも必死の介入をしたが、1ドル300円程度で止めるのが精一杯だった。外国人が円をドルに替えて逃げ帰るだけではなく、日本人も銀行預金を引き出してドルを買ったのだから、政府日銀が頑張っても全く力足らずだったのである。

誰もがこの世の終わりを予想し、日本経済の今後、自分自身の今後等についての不安に怯えていた。ただ一人勝利の美酒に酔っているのは日本国債を空売りしている投機家だけであった。

そして、最後の瞬間に大逆転

深夜、総理大臣の会見がはじまった。政府が破産する瞬間を見届けようと、人々は総理の口元を固唾を飲みながら見つめていた。総理が口を開いた。「嵐は過ぎ去りました」。人々は、何が起きたのかわからず、混乱した。総理は続けた。

「日本政府は、1.3兆ドルの外貨準備を持っていました。それを1ドル300円で売り、390兆円を得ました。それを使って額面100円の国債を30円で買ったところ、額面1,300兆円分の国債が購入できました。つまり、日本政府は発行済み国債をすべて買い戻すことに成功したのです。いまや、日本政府は無借金なのです」

国債を安値で売った人、ドルを高値で買った人は、大いに悔しがった。しかし、最も蒼い顔をしていたのは、国債を空売りしている投機家であった。期日までに国債を買い戻さなくてはいけないのだが、発行済みの国債はすべて政府が持っているので、政府に国債を売ってもらわなくてはならない。「まさか法外な値段で売りつけられることはあるまい」と自分に言い聞かせることくらいしか、できることは無かったのだ。

大損をして破産した投資家も多かったが、投資は自己責任であるから、政府が救済する必要は無かった。と言いたいところだが、何事にも例外はある。銀行が倒産してしまうと、日本経済への打撃が大きいので、銀行は救済する必要があるのだ。

そこで政府は銀行に無議決権優先株を発行させ、それを購入することで銀行に資本金を注入した。将来の利益で買い戻すことを約束させたので、事実上は貸し出しをしたのと同じようなものであったが。優先株の購入資金は国債発行で賄ったが、何も問題はなかった。政府が無借金になったことを知っている投資家たちがよろこんで国債を購入したからである。

翌朝、何事もなかったかのように、日本経済は動き出した。銀行も通常営業だったから、投資に興味のない一般庶民の中には、つい数時間前に日本経済が死の淵を彷徨っていた、ということに気付いていない人も多かったようである。

人から「アイツは破産する」と思われることの、意外なメリット

…以上がシミュレーションです。

筆者がこのシミュレーションを思いついたのは、友人から以下のエピソードを聞いて、「他人に破産すると思われると、自分が発行した借用証書が安く買い戻せて得をする」ということに気付いたからです。

そのエピソードは以下の通りです。

「ある途上国に悪徳オーナー社長がいた。自分の会社が多額の社債を発行し、兄の会社からゴミを高値で買い取った。会社は債務超過になり、投資家に社債償還不可能を告げた。投資家は社債を投げ売りしたので、それを兄の会社が安値で買いまくった。結局儲かったのは悪徳兄弟で、損したのは投資家だった」

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

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塚崎 公義
経済評論家

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