漢a.k.a.GAMIさんは全摘…膀胱がんは化学放射線療法で膀胱温存も

男性の膀胱がん罹患数は女性のおよそ3倍(写真はイメージ)/(C)iStock

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

ラッパーの漢a.k.a.GAMIさんが膀胱がんの手術のため活動を休止すると報じられました。自らのインスタグラムによると、膀胱を全摘するといいます。そうすると、尿をためるところと尿の出口がなくなるため、切除した膀胱の部分を、切り取った小腸の一部でつないで尿の通り道とする回腸導管造設術も行うそうです。

国立がん研究センターの「がん統計」によると、2019年の膀胱がん罹患数は男性が1万7498人。女性のおよそ3倍で、男性に多く見られます。

膀胱がんを組織型で分けると、90%が移行上皮がんで、キノコのように増殖するのが特徴です。血尿や頻尿、尿意切迫、排尿時の痛みなどの症状が見られることもありますが、早期は無症状。私も2018年12月にエコー検査で膀胱がんを見つけたとき、症状がありませんでした。移行上皮がんで早期なら、内視鏡で切除し、膀胱を温存するのがベストでしょう。

残りは扁平上皮がんと腺がんで、漢a.k.a.GAMIさんは扁平上皮がんだそうです。このタイプは慢性的な感染症や粘膜への刺激、尿路結石によって発生すると考えられています。エジプトではビルハルツ住血吸虫による膀胱がんが多く、膀胱の扁平上皮がんの発生率が高い。粘膜への刺激は尿道カテーテルの留置などが一般的です。

扁平上皮がんは、移行上皮がんに比べて悪性度が高く、2年ほどで亡くなることが珍しくありません。手術をする場合、膀胱全摘です。

しかし、ほかの臓器に発生した扁平上皮がんと同様に放射線治療が効果的であることも分かっています。特に最近はシスプラチンを主体とする抗がん剤と放射線を組み合わせる化学放射線療法を用いると、2年を超えて生存するケースも増えています。化学放射線療法はもっと検討されてよいでしょう。手術後の再発予防で、化学放射線療法が行われることもあります。

化学放射線療法のメリットは、膀胱を温存できることです。前述したように膀胱を全摘すると、尿をためるところと出口がなくなるため、一般に腹部の右側に尿の出口を設けた上、尿をためるパウチをつけることが不可欠です。パウチはビニール袋のようなもので、これを嫌がる方は少なくありません。そこで、手術を拒否する方や高齢者などで膀胱の温存を希望される方には、化学放射線療法が提案されるわけです。

膀胱がんは再発しやすいのも特徴。長期にわたって検査を受け続けることになるため、米国では「医療費が最もかかるがん」といわれますが、経過観察をおろそかにせず、きちんと受けることも大切です。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

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