【霞む最終処分】(37)第6部 リーダーシップ 福島県 国任せ問われる姿勢 現実的な打開策検討を

除染廃棄物の県外最終処分は法定期限まで残り21年。実現に向け、県の姿勢も問われている=県庁舎

 福島県が「苦渋の決断」として、東京電力福島第1原発事故に伴う中間貯蔵施設の建設を容認したのは2014(平成26)年8月だ。9年余りが過ぎた2023(令和5)年10月。福島市で講演した知事・内堀雅雄は法律で定められた除染廃棄物の最終処分期限を念頭に「2045年まで、たった22年だ」と踏み込んだ表現を口にし、周囲を驚かせた。

 内堀が公の場で最終処分までに残された年数を明示し、危機感をあらわにしたのはこの時が初めてだった。今年3月に開かれた政府の復興推進委員会でも「あと21年しかない」と繰り返した。最終処分を実現するまでのプロセスが見えないまま、時間だけが過ぎていく現実と、環境省へのいら立ちとも取れる。

 環境省福島地方環境事務所次長の成田浩司は「法定期限は常に意識している」とした上で、「県民の不安を代弁した大変重い言葉だ」と受け止める。

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 環境省の中には県外最終処分への〝カウントダウン〟に言及した「内堀発言」を「(懸案だった)福島第1原発処理水の海洋放出が始まり、『次は除染土壌の処分の実現だぞ』という強いメッセージを発した」と解釈する向きもある。

 環境省は2016年4月、県外最終処分に向けた方針などを盛り込んだ「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」をまとめた。工程表も併せて示したが、肝心の具体的な取り組みのスケジュールは2024年度末までしか記載されていない。

 県は政府に対し、2025年度以降の明確な方針と工程を早期に示すように求めている。今年2月の福島復興再生協議会の席上、環境相の伊藤信太郎は「最終処分に向け、2025年度以降の進め方を示していく」と述べたが、どの程度まで具体化されるかは未知数だ。

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 環境省、県とも「最終処分は国の責務」との認識は共通している。しかし、浜通りのある市町村の幹部は「言葉通りの国任せ。県の姿が見えない」と除染廃棄物の最終処分に対する県の関わり方への不満を漏らす。環境省内にも「県の存在感がない」と冷ややかな見方がある。問題が停滞する中、県の姿勢が問われ始めている。

 こうした声に対し、県中間貯蔵・除染対策課長の加藤宏明は国の責任で県外最終処分を行うのが大前提とした上で「県としても事あるごとに最終処分など復興の課題を訴え、国と協議している」と強調。今年度内に示されるはずの新たな工程表を踏まえ、実現に向けた要望を強める構えだ。

 ただ、県内のある自治体幹部は「知事を先頭に国にハッパをかけるのは当然」としながらも、「あれだけの量の除染土を運び出すためには、国だけに委ねず、県も現実的な打開策を考える必要があるのでは」と疑問を呈す。県内では中間貯蔵施設への搬入が進み、除染廃棄物を日常的に目にする機会は以前に比べて減った。県民からはその分、最終処分問題への意識が薄れつつあるとの指摘もある。他県とのつながりを生かし除染土壌の再生利用を促すなど、地元が本気を見せなければ国は動かないとの声は少なくない。(敬称略)

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