「パパ、大丈夫?」被害額“過去最多” クレジットカードを不正利用された報道カメラマンの実体験と教訓

毎日の買い物や食事、ネット通販などをキャッシュレスで簡単に決済でき、ポイントもたまってお得なクレジットカード。春からの新生活を機に新たに作ったという人も多いだろう。しかし、ある日突然、カード会社から身に覚えのない高額請求を受けたら――。
高知さんさんテレビの報道カメラマン・川田卓史が自らの被害体験と教訓を明かす。

「どうして?」“異変”に気付いたクリスマス

それは2023年12月25日、クリスマスの夕方だった。スマホでクレジットカードの金額チェックをしていると、利用可能額が不自然に少なくなっていることに気付いた。カード会社に問い合わせようと思ったが、すでに対応時間が終了していたため、翌朝、電話をすると、全く身に覚えがない“事実”を告げられた。

12月20日20時28分、24万9800円のアップル社の商品が購入されています。海外からの請求です

「25万円近くも支払ったら冬のボーナスが飛んでいくな……」そんな考えが頭をよぎる私に担当者は続けて言った。

川田さんのアカウントは悪用されていますね

その瞬間、私は自分が“カード不正利用の被害者”になったことを知った。

報道カメラマンである私は日々のニュースを通じて「○○詐欺には気をつけて」などと、注意喚起の情報を発信している。それだけに、普段から人並み以上に気を付けているつもりだったが、まさか自分が被害に遭うとは……。

カード会社との電話直後は、頭がぼうっとなって何も考えられなかったが、高校生の娘から「パパの顔、真っ青になっちゅうけど大丈夫?」と声をかけられ、我に返った。

アップル社「発送は止められません」

カード会社からは「アップル社に商品の発送を止めてもらうよう、すぐ連絡を」と指示を受けたが、出社時間が迫っていたため、まずは上司に電話で「遅刻させてほしい」と伝えた。その日は仕事が詰まっていなかったので、なんとかなったが、もしこれが大事な取材の日だったら……。考えるだけでぞっとした。

気を取り直してアップル社に電話。発送を止めてもらうように依頼すると、次のように告げられた。

注文内容は確認できましたが、発送は止められません。ただ、購入に使われたのは、あなたのアップルIDではありません。クレジットカードの情報が別のIDで悪用されたと思われます

結局その日は、カード会社とアップル社を電話で行ったり来たりで、3時間以上も時間を食われることになった。半日遅れで出社したものの、会社に着いた時には気持ちが疲弊していた。

クレカの不正利用被害額は過去最多

日本クレジット協会によると、クレジットカードの不正利用による被害額は2023年、約540億9000万円と過去最多を記録。前年よりも100億円以上増え、2014年に比べると実に4.7倍にもなっている。

ネット通販の利用増でフィッシング詐欺も

カード情報を盗む手口の代表が『フィッシング詐欺』だ。実在の通販サイトなどに似せて作られた、うそのウェブサイトに被害者を誘導。カード情報やパスワードを入力させるというものだ。

コロナ禍を通じてインターネット通販の利用が増えたことも背景にあり、この手口が増加。2023年には、カード不正利用被害額の9割以上にあたる約505億円が、フィッシング詐欺などの番号盗用によるものだ。

私もフィッシング詐欺に遭った可能性が高いが、いつ・どこで情報が盗まれたか、今も分かっていない。普段から不審なサイトに用心して買い物をしていたつもりなのだが……。

高知県消費生活センターによると、「明細書に覚えのない数万円の買い物履歴があった」 「カードが不正利用され60万円の請求がきたが、カード会社に連絡を入れてもつながらない」など、クレジットカードの不正利用や架空請求に関する相談が後を絶たないという。

突然のトラブル、その結末は

年末年始もカードを不正に利用されたことが時々頭をよぎり、気持ち新たに新年を迎えることはできなかった。被害発覚から2週間以上たった1月10日、カード会社から【重要】という文言が入ったメールが届いた。

調査した結果、あなたさまのカードは不正に使用されたと判断し249,800円は請求しないこととなります

正式に補償されることが決定し、やっと安心することができた。

自分の身を守るために大切なこと

消費生活センターでは、不正利用の被害を防ぐために、次の3点を呼びかけている。

・信頼できる通販サイトを利用する ・カード情報の入力を慎重に行う ・カード使用の伝票や確認メールを保存し、利用明細と突き合わせる

被害に遭った可能性に気付いたら、すぐにカード会社に連絡することが大切だ。私はきょうも利用明細をチェックしている。

(高知さんさんテレビ報道部・カメラマン 川田卓史)

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