心理学者が「ランチは〈ハンバーグ定食〉より〈サバの味噌煮〉がいい」と勧める、驚くべきワケ

心身の健康を維持するには、どんな「食生活」を送っているかが重要となります。心理学者の内藤誼人氏は、著書『老いを楽しむ心理学』(ワニブックス)で、「ランチは〈ハンバーグ定食〉より〈サバの味噌煮〉」を推奨しています。その理由について詳しくみていきましょう。

病気のリスクが減る!?「地中海式食事法」とは

ギリシャやイタリア、スペイン、モロッコなどの地中海沿岸の国では、なぜか心血管疾患や糖尿病やガンなどにかかる人が少ないことで有名です。

理由はいろいろ考えられますが、大きな要因としては「食事」が考えられます。地中海沿岸の人たちは、伝統的に肉ではなく魚をよく食べます。また野菜や果物もたくさん食べます。こうした食習慣が、健康によいのでしょう。

スペインにあるラス・パルマス大学のアルムデナ・サンチェス=ヴィレガスは、55〜85歳の男性と60〜80歳の女性、合計3,923名に、「地中海式食事法」を実践してもらいました。

具体的には、魚と野菜、果物、豆類、ナッツなどをたくさん食べてもらったのです。

すると、食習慣を地中海式にすると、うつ病のリスクが減らせることがわかりました。

健康的な食習慣を身につけると、うつにならずにすむのです。

今はうつ病ではない人も、将来的なうつ予防にもなりますから、ぜひ魚と野菜をたくさん食べるように意識してみてください。高脂肪の肉を絶対に食べてはいけないとまでは言いませんが、極力控えてみてはいかがでしょう。

悲観的なことばかり考えてしまう人は、ひょっとすると魚や野菜をあまり食べていないことが原因の一つなのかもしれません。

また、「地中海式食事法」は、うつ病の予防だけでなく、糖尿病や脂質異常症の予防にもなることも知られています。さらに、肥満予防にも効果的です。スリムな体型を維持できるというのも、ありがたいことですよね。

魚や野菜、果物があまり好きではないという人がいるかもしれませんが、しばらく我慢して食べていると、そのうちに慣れてくるものですし、「おいしい」と感じられるようにもなります。

具体的な料理のレシピは紹介しませんが、興味がある人は「地中海式食事法」という単語で検索してみてください。

魚と野菜を中心とした食生活の「驚くべきメリット」

魚と野菜を中心にした食生活をしていれば、うつ病にもなりにくく、糖尿病や肥満も予防できるというお話をしました。実は、魚と野菜のメリットはこれだけにとどまりません。私たちの認知機能にも好ましい効果をもたらしてくれることもわかっているのです。

米国ラッシュ大学のマーサ・モリスは、1週間で魚を食べる頻度で、3つのグループにわけました(図表)。それからすべての人の認知機能の衰えを測定してみると、1週間に一度も魚を食べない人より、1回は食べる人のほうが認知機能の衰えを10%遅らせることができ、1週間に2回食べる人は、13%遅らせることがわかりました。

[図表]魚を食べると、認知機能はどうなるか? 出所:『老いを楽しむ心理学』(ワニブックス)より抜粋

魚を食べていると、認知機能、すなわち記憶力も、判断力も、そんなに低下しなくなるのです。

ドイツにあるハインリッヒ・ハイネ大学のクリスティナ・ポリドリは、45〜102歳の193名にどれくらい野菜や果物を食べるかを尋ねて、「たくさん食べる」グループと、「あまり食べない」グループにわけて、それぞれの認知機能の差を調べてみました。

その結果、1日に350g以上の野菜や果物を食べるグループのほうが、1日に100g以下のグループに比べて、認知機能の低下は少なかったのです

認知症の予防に、魚と野菜を中心にした食生活を意識することをおすすめします。

ランチの際には、「今日はハンバーグ定食じゃなくて、サバの味噌煮にするか」と、気軽に取り入れてみてくださいね。

内藤 誼人
心理学者

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