追加招集から這い上がった山田楓喜が待望の代表初ゴール。不断の努力で大岩Jの重要戦力になったレフティは「これからどんどん点を取っていける」と意気込み【U-23アジア杯】

パリ五輪を目ざす大岩ジャパンが発足したのは、2022年の3月。その頃のMF山田楓喜(東京V)は、“日の丸”にはあまり縁のない選手だった。しかし、そこから駆け上がり、今では欠かせない1人になった。

チームの立ち上げ合宿も、直後に実施された海外遠征でも選外。22年6月にウズベキスタンで行なわれたU-23アジアカップではメンバー入りを果たしたが、追加招集で巡ってきたチャンスだった。

大会では、右ウイングのポジションで質の高いクロスなどを見せていたが、ゴールやアシストに絡むシーンは限定的。決定力にも課題を残し、ミドルシュートを打ってもなかなか枠に飛ばなかった。

思うようなアピールはできなかった。それでも山田はひたむきにサッカーと向き合ってきた。当時所属していた京都では、練習場に誰よりも早く姿を見せ、グラウンドを去るのは最後。「報われるためにやっているわけじゃない。普通に楽しいから。ずっとボールを蹴りたいから蹴っている」。やらされている感覚はなく、楽しみながらボールを蹴っていた。

午前練習が終わると、午後は長澤徹ヘッドコーチ(現・大宮監督)と一緒に、パス&コントロールなどの基礎トレーニングに没頭した。そうした地道な積み重ねが徐々に実を結び、気がつけば代表の常連に。代えがきかない選手となり、期限付き移籍で今シーズンから加わった東京Vでは、開幕から好調をキープして結果を残してきた。

横浜との開幕戦(1-2)、4節・新潟戦(2-2)では、自慢の左足で直接FKを叩き込む。京都で出場機会を掴んでからの2年間で3ゴールしか挙げられていなかったが、今季は7節・柏戦(1-1)でのゴールも含め、すでに3得点を記録している。

大岩ジャパンでもプレースキッカーとして重宝され、インカーブの正確なクロスを武器に主軸の1人に数えられるまでに。その一方で、ゴールという目に見える結果を残せていなかったが、待望の瞬間がようやく訪れる。

現在、カタールで開催されているU-23アジアカップ(パリ五輪アジア最終予選を兼ねる)。日本は準々決勝でホスト国のカタールと相まみえた。山田は4-3-3の右ウイングで先発すると、開始わずか65秒でネットを揺らす。

右サイドの高い位置からプレスをかけると、相手DFのバックパスが中途半端な形で目の前にこぼれた。

「プレスで前からハメるというのは、ずっとみんなで言ってきた。相手の隙をついて、自分のところにこぼれてきた。そこはシュートの選択肢しかなかったです」

そのボールをかっさらうと、3タッチ目で左足を振り抜いた。

「キーパーの立ち位置がおかしかったので、ニアがガラ空きやった。思い切りそっちにシュートを打ったら、そのまま入ったので良かった」

【動画】自慢の左足でズドン! 山田楓喜の大岩J初ゴール

欲しかった代表での初得点。「今年に入って、流れのなかから左足で決めたのは初めて。しかも代表での初ゴールなので、自分としてもチームとしても乗っていける」。取れそうで取れなかったゴールが生まれ、笑みを浮かべる。

試合は以降、一進一退の展開となり、最終的に延長戦の末に4-2で勝利したが、山田が決めた先制点の価値は大きい。

「こういう大事な試合で先制点という大事なゴールを挙げられたのは、自分にとってもすごくプラスになるし、これからどんどん点を取っていける」

だが、これで終わりではない。パリ五輪出場を決める戦いが目前に迫っているからだ。29日の準決勝の相手はイラク。大会前最後の練習試合で戦った相手に対し、どんなプレーを見せるのか。

「腐らずにやれるのが自分の一番の特長。もちろん苦しい時もありましたけど、こういう大きい舞台で、点を取れる自信があったので、ずっと続けてこられた。まだまだこれからも腐らず、もっともっと積み上げていきたい」

良い時も悪い時もブレずに努力を重ねてきた背番号11は、勝てばパリ行きの切符が掴める大一番でも、楽しみながら結果を求めてピッチに立つ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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