初対面で駆け寄り手をぺろぺろしたボーダーコリー 「いい子を演じているのかな」という直感 「問題なし」と報告された体に複数の持病が判明した

「人懐っこさ」の影に、「いい子を演じて助けてもらいたい」という様子だったボーダーコリーの墨(すみ)

後に里親となるRさんとの初めての対面で、すぐに駆け寄り手を舐めたメスのボーダーコリー·墨(すみ)。2022年1月に繁殖場から東海エリアの保護団体にレスキューされた、推定6歳ほどのワンコです。

ただし、一見人懐っこそうに映りながらも、その耳は後ろに向き、尻尾の振り方もどこか不自然。Rさんから見て、「必死に『いい子』を演じて、『助けてほしい』とアピールしているように映った」と言います。

Rさんは墨が、過去に散歩したことがあるかを保護団体スタッフに尋ねました。スタッフは「できますよ」と言い、リードを付けて墨の散歩の様子を見せてくれました。その際、墨の後ろの左足が曲がっていないよう見え、Rさんは「なんか気になる」と思いましたが、そのまま何も聞きませんでした。そして、譲渡の手続きを終え、墨を連れて帰りました。

保護団体でもメディカルチェックは済ませていましたが、連れ帰った翌日、すぐに動物病院に墨を連れて行きました。

血液検査も含めてあちこちを診てもらいましたが、診断結果は問題なし。Rさんはなんとなく腑に落ちませんでしたが、そのまま墨との生活をスタートさせることにしました。

迎え入れから1カ月ほどで後ろ脚をケンケンし始めた

Rさんは面会のその足で、墨を自宅へと連れて帰りました

Rさんは「墨をたくさん散歩に連れていこう!」と考えいたため、すぐ連れ出しました。しかし、スタスタ歩くことはなくトッコトッコとゆっくり。そのペースに合わせての散歩を続けましたが、それから1カ月を過ぎた頃、ついに後ろ脚をケンケンし始めました。

Rさんは「やはり何かある」と別の動物病院に連れていくと両後ろ脚とも「股関節形成不全」という診断。特に左脚は重度だと言います。また、この影響で脚首にもダメージがあり、今後は痛みが出てくる可能性があるとも……。

Rさんは迷わず墨の手術を決断。大腿骨を切除しての大手術になりました。

墨の大腿骨切除の跡

この他にも、墨の多飲多尿が気になり診てもらっていましたが、血液検査では問題なく「きっとストレスでしょう、様子を見ましょう」という診断でした。Rさんは納得できず、さらに別の動物病院へ連れていくと、ここでは「完治が難しい」と言われるクッシング症候群という診断を受けました。愕然とするRさんでしたが、これら墨の持病を、一つずつ改善すべく適切な医療ケアをすることにしました。

「ゆくゆくは病気が出てくることは覚悟していましたが、まさかこんなに早く、そしてたくさんの持病を抱えていたことは正直驚きました。だけど、向き合うべきは墨の痛みを取ってあげること。それだけに専念し、お世話し続けることにしました」

私と墨のワンコライフが長く続くことを願う

Rさんのたっぷりの愛情と、持病一つずつの治療を受けることになった墨。いまだトボトボではありますが、以前よりは楽しそうに歩くようになりました。

そして、Rさんが何より嬉しく思っていることは墨が「いい子」を演じる様子がなくなったこと。きっと、墨はRさんの愛情を前に信頼を寄せているのだろうと思います。

墨はRさんからの愛情を受け、リラックスした表情を浮かべるようになりました

この先も墨の治療は続きますが、Rさんは前述の通り「そのお世話をする毎日が楽しいです」と語ってくれました。

「何よりも墨がうちに来てくれたことに対して『本当にありがとう』と言いたいです。そして、治療を重ねて墨が少しでも元気になったり、穏やかな表情を浮かべてくれるようになることが、今は何よりもの楽しみです。

これから先も墨と一緒に、私たちだけのワンコライフを1日でも長く続けていければ良いなと願っています」

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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