映画界屈指の長寿人気を誇るゴジラとキング・コング、2大レジェンド・モンスター・ヒストリー

1954年製作の『ゴジラ』第1作© TOHO Co. LTD.

今年生誕70周年を迎えるゴジラ。その誕生に影響を与えたと言われるキング・コング。日米を代表するレジェンド・モンスターの歴史を追ってみましょう。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)
カバー画像:© TOHO Co. LTD.

生誕70周年を迎えた日本が誇る怪獣王

1954年11月3日に公開され大ヒットした映画『ゴジラ』(本多猪四郎監督)。それから70年経った今も日本だけでなく世界中で知られる「怪獣王」の誕生だ。当時社会的な問題となっていたビキニ環礁の核実験に着想を得て、戦後10年になろうとしていた日本を“核の落し子”のようなモンスターが再び恐怖のどん底に陥れた。

1954年製作の『ゴジラ』第1作© TOHO Co. LTD.

ハリウッド製の『キング・コング』(1933)『原子怪獣現わる』(1953)などに影響を受けたというが、第1作と翌年製作の続編『ゴジラの逆襲』では恐ろしい存在だったものの、その後しばらくスクリーンに登場せず、1962年に復活した『キングコング対ゴジラ』あたりからは、作風に明るさが加わり、徐々に人間の味方的な正義のヒーロー・キャラクターに変化。

子供たちから愛されるようになって、キングギドラやメカゴジラといった敵怪獣と戦うシリーズは1975年の第15作『メカゴジラの逆襲』まで製作された。これらは通称“昭和ゴジラ・シリーズ”と言われる。

そんなゴジラがスクリーンに甦ったのは1984年の『ゴジラ』。この時のゴジラは1954年に一度だけ日本を襲い、30年ぶりに現れた別の個体という設定で、これに続く続編『ゴジラVSビオランテ』以降は“平成ゴジラ・シリーズ”として、続く『VSキングギドラ』『VSモスラ』『VSメカゴジラ』などが次々ヒット。敵怪獣も新たにスペースゴジラ、デストロイアなどが誕生し、1995年まで連続公開された。

そして1998年、ついにハリウッド版『ゴジラ』が製作され、その人気がワールドワイドなものに。しかしこちらは1作のみで終わっている。平成版ゴジラは1999年の『ゴジラ2000 ミレニアム』から始まる“ミレニアムシリーズ”へと続き、生誕50周年に当たる2004年の第28作『ゴジラ FINAL WARS』で再び眠りにつくことになった。

そしてそれから10年後。今度はまたまたハリウッドでゴジラが甦った。ギャレス・エドワーズ監督による『GODZILLA ゴジラ』はレジェンダリー・ピクチャーズが製作する第一弾で、これが“モンスター・ヴァース”の始まりとなる。

一方日本では2016年に第29作となる庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』が製作され、従来のゴジラ映画にはなかったリアルな設定描写が話題を呼び大ヒット。批評家からも高い評価を得た。その翌年にはアニメ版3作(2017~2018)も作られている。

そして2023年、まだ記憶に新しい山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』がが高いクオリティーでまたも大ヒットし、ついに米アカデミー賞で視覚効果賞を邦画として史上初受賞する快挙となった。ちなみに本作は日本版シリーズ通算30作目に当たる。

そして誕生から70年、モンスター・ヴァースの最新作『ゴジラxコング 新たなる帝国』が記念作品として公開。すでに全米では記録破りのヒットとなっているが、ここまで長い間ファンに愛されるゴジラの魅力は驚異であり奇跡。人類にとって脅威の存在でありながらヒーローのように崇められるそのミステリーは、今後もファンを引きつけてやまないだろう。

90年以上も愛されるハリウッドが生んだ巨猿

巨大な類人猿が未開の島から大都会に連れてこられ、悲劇的な結末を迎えるモンスター映画の始祖『キング・コング』(メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シュードサック監督)は今から90年以上前の1933年に公開され、当時空前のヒットになった。これは今も映画史に残る名作として名を残している。

余りのヒットぶりにすぐさま続編『コングの復讐』が製作され、同年のうちに公開されたが、これは原題『Son of Kong』が示すようにコングの息子が登場するもので、評価は前作ほど高くなかった。また日本でも大きな話題となり、特撮の神様で『ゴジラ』の生みの親でもある円谷英二にも影響を与えたことで知られており、それ以外にも数々の亜流作品が誕生したという。

1933年製作の『キング・コング』Photo by Getty Images

コングの人気は、1960年代に東宝が正式に米側から権利を取得し、日本の怪獣王ゴジラと初の激突を迎えた『キングコング対ゴジラ』(1962)が、2大王者の共演で記録的ヒットとなったことで再燃する。続いて1967年には『キングコングの逆襲』が製作されたが、前作とストーリー的なつながりはない。ここでは電子怪獣メカニコングが登場し、コングと戦う。

それから約10年後の1976年、今度はハリウッドが超大作としてジョン・ギラーミン監督で『キングコング』をリメイク。特殊スーツやマスクも作られたがなんとクライマックスでは12メートルサイズのコングが製作され、世界貿易センタービルに万単位のエキストラを集めて撮影された。これも大ヒットとなり、1986年には続編『キングコング2』が作られ、甦ったコングと共にここではレディコング、ベビー・コングも登場する。

それからしばらくキングコング映画は途絶えていたが、オリジナルの大ファンだった「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督が2005年、満を持して現代版リメイクを敢行、高評価を得た。今回のコングはCGの時代になっていたこともあり、モーションキャプチャーで俳優アンディ・サーキスが演じたものを特殊加工。アカデミー賞では視覚効果賞、音響効果賞、録音賞を受賞している。

それからさらに10年近くが経ち、2014年に製作会社レジェンダリー・ピクチャーズがゴジラに続いてキングコングの新作計画を発表。その後、秘密機関モナークを中心としたゴジラの世界とコングの世界を交差させる企画を開発し、これがモンスター・ヴァースの構想となる。

2017年『キングコング:髑髏島の巨神』(ジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督)が公開され、髑髏島を舞台に第2次大戦中から始まる壮大な物語が展開する。これに続くのがいよいよゴジラと相まみえる2021年の『ゴジラvsコング』。『キングコング対ゴジラ』以来の2大王者対決シーンは大迫力の映像となり、コロナ下での公開ながら大ヒットとなった。ファンの熱い支持でモンスター・ヴァースは継続され、『ゴジラxコング 新たなる帝国』へ連なる。誕生から90年を超えても愛されるコングの冒険はまだまだ続きそうだ。

ゴジラやコングたちの物語はまだまだ続く! 〈モンスター・ヴァース〉10年の流れ

今回の『ゴジラxコング 新たなる帝国』はいわゆる〈モンスター・ヴァース〉の5本目の映画になります。その始まりとなったのは10年前の『GODZILLA ゴジラ』からで、その世界観は、巨大生物と特別機関モナークを基軸に展開していきますが、『ゴジラxコング』をより楽しむために、これまでのシリーズの流れを振り返っておきましょう。

『ゴジラxコング 新たなる帝国』のプロデューサーの一人、アレックス・ガルシアが

「モンスター・ヴァース10周年に『ゴジラxコング』が公開されるのはエキサイティングな出来事だ。1作目の『GODZILLA ゴジラ』から10年が経ち、本作ではクリーチャーたちの視点、特にコングの視点に多くの時間を割くことができる。ゴジラやコングのような古典的キャラと仕事をするときは毎回、映画的に新しく、新鮮で異なるものに昇華させることに挑戦している」

と語っているように、この10年で5本の映画が製作され、それぞれに共通の繋がりを保ちながら異なった楽しみ方が待っている。

モンスター・ヴァースとは/『GODZILLA ゴジラ』

まずモンスター・ヴァースとは何か。日本のゴジラとアメリカのキングコングを主人公とした、米レジェンダリー・ピクチャーズが製作する一連のシリーズ。

ハリウッドでは2度目の映画化で、2014年に公開されたモンスター・ヴァース第1作となる『GODZILLA ゴジラ』では、日本で起きた原子力発電所事故から15年後に出現した古代怪獣ムートーと、その捕食者であるゴジラの戦いを描いた。

『GODZILLA ゴジラ』

ここで登場したのが、当時は秘密機関(後に公になる)モナーク。モナークはモンスター・ヴァースでは時代を越えて怪獣をはじめとする未確認生物の研究・調査を行う重要な存在となり、シリーズを繋ぎ、まとめるような役割を果たしている。またゴジラやムートーのように、核によって古代に生息していた巨大生物が甦るという設定もモナークの活動に起因するものとなっている。

『キングコング:髑髏島の巨神』

このゴジラの復活に続いて、2017年に公開されたのは『キングコング:髑髏島の巨神』。人工衛星で発見された未知の島、髑髏島が舞台で、ここに生息する巨猿コングがメインキャラ。

『キングコング:髑髏島の巨神』

この島の生態系の頂点に立つ種ながら、爬虫類型怪獣スカル・クローラーに敗れ、コングが最後の生き残りになっている。他にもこの島にはバンブー・スパイダーなど何種もの巨大生物がおり、その中で人類であるイーウィス族がコングと共生している(このイーウィス族の末裔となるのが『ゴジラvsコング』『ゴジラxコング』に登場するジア)。

またジョン・グッドマンが演じるモナークの学者ランダもシリーズに再び関わるキャラとなる。この作品からモンスター・ヴァース構想が明らかになった。

『キングコング:髑髏島の巨神』
4K ULTRA HD&ブル ーレイセット
6,589円(税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

© 2017 Warner Bros. Entertainment Inc., Legendary Pictures Productions, LLC and RatpacDune Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

そして第3弾となったのが2019年公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』。ゴジラ以外にもモスラやラドン、キングギドラといった古代から存在した怪獣がモナークに管理されており、モンスター・ゼロと呼ばれていたギドラとゴジラたちが対決する。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

人間側のキャラでも渡辺謙扮する芹沢博士やサリー・ホーキンス扮するグレアム博士が『GODZILLA ゴジラ』に続き再登場。この作品のエンドクレジットで太古の壁画からかつてゴジラとコングが戦っていた時代があったことが判明する。

『ゴジラvsコング』

そしてついに両雄が激突する『ゴジラvsコング』が2021年に公開。ここでは前作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に登場した少女マディソン(ミリー・ボビー・ブラウン)が再登場し、ゴジラが人類を襲うようになった理由を探ろうとする。彼女の父でモナークに復帰したマーク・ラッセル(カイル・チャンドラー)も再登場。芹沢博士の息子、レン(小栗旬)も登場し重要な役を担う。

『ゴジラvsコング』

ゴジラとコングの戦いだけでなく、本当の敵となるメカゴジラも出現し大暴れ。前作登場のキングギドラの頭部から開発されたという設定。

『ゴジラxコング 新たなる帝国』

『ゴジラxコング 新たなる帝国』

そして今回の『ゴジラxコング 新たなる帝国』に繋がるのだが、その間に2つの配信シリーズも製作されている。一つはコングの生息する未知の島を舞台にしたアニメーション「髑髏島」で、もう一つが実写シリーズ「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」。

「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」(画像提供 Apple TV+)

シリーズ第1作のゴジラ出現の翌年2015年を主要舞台に、『キングコング:髑髏島の巨神』に登場した先述のランダ博士の子供たちが主人公となる。このランダ家の人々の物語と過去のモナークの活動が描かれ、モンスター・ヴァースをより深く理解するために欠かせないストーリーが展開。ゴジラやコング、ムートーなども登場する。いずれも2023年に配信開始となった。

10年でここまでの広がりを見せて来たモンスター・ヴァース。今後の展開も見逃せない。

Godzilla (2014) TM & © 2014 Legendary and WBEI. All rights reserved.
King of the Monsters TM & © 2019 Legendary and WBEI. All rights reserved.
Godzilla vs. Kong TM & © 2021 Legendary and WBEI. All rights reserved.

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