フライブルクのMF堂安律は、1-1の引き分けに終わったブンデスリーガ30節のマインツ戦で右ウイングバックとしてフル出場。随所に好プレーを披露した。
互いに5バックでシステムがかみ合う分、堂安は相手の左ウイングバックのフィリップ・ムウェネとマッチアップ。ライン際で常にマークされている状況が続くために、「出し手からすると、少し近くに自分のマークがいるふうに見えたと思うんで、仕方ない」と受け入れていた。
「もう少しアクションのできるチャンスが欲しかったなと思いますけどね」と残念がったが、6分にはチーム最初のチャンスから先制ゴールを見事にアシストしただけではなく、チームのチャンスの多くに絡んでいる。
【動画】堂安がマインツ戦でピンポイントアシスト
30分にはヘディングでの競り合いで勝利すると、ボールを受けたキャプテンのクリスティアン・ギュンターがゴール前のミヒャエル・グレゴリチュにパス。左足のダイレクトシュートはマインツGKロビン・ツェントナーのファインセーブでゴールとはならなかったが、堂安は鋭い動きでビックチャンスを創出してみせた。
前節のダルムシュタット戦後には、クリスティアン・シュトライヒ監督が名指しで堂安を褒めていたことがドイツでも話題になっている。
「プレースタイルを変えた。守備で全く違う存在感を発揮してくれている。守備がうまくいくからオフェンスもうまくいっている。ボールが自分のサイドになくても気を抜くこともない。アウェー2試合で2得点はその報酬だよ」(シュトライヒ)
チームとしてのコレクティブさを大事にするシュトライヒは、普段から特定の選手を褒めるケースはあまりない。メディアから「今日あの選手はよかったのではないか?」などと尋ねられても、「よかった。だが彼だけがよかったのではない。〇〇もよかった。チームとしてよかった」と返す。
そんなシュトライヒがかなり具体的に堂安のことを褒めたのだから、その評価はよほどのことなのだ。
マインツ戦後にその点について、堂安本人に尋ねてみた。
「彼が今のプレー強度であったりとか、最後のクオリティの質とかをかなり要求してくれた結果、今こうして成長できていると思うんで。彼をがっかりさせないようにラスト4試合やっていけたらなと思います」(堂安)
ストイックに成長と向き合う堂安と、妥協なくサッカーと向き合うことを要求するシュトライヒ監督。守備面でさらにたくましく、パワフルな競り合いを見せ、ボール奪取後の勢いが増し、攻撃でも決定機に顔を出す頻度が増えてきている。
守備への時間が増えると攻撃で力を発揮できないという言い訳をしない。ハードワークが自然なものとなり、アクションへのタイムロスがどんどん少なくなってきているところも注目点だ。
「もう監督とは話してなくても自分を信頼してくれてる感じはある。特にサッカーの話はあんまりせず、何かプライベートの軽い話くらいですかね」
以心伝心できている関係性が、なんとも素敵ではないだろうか。
取材・文●中野吉之伴