「過剰生産能力を抱えた中国によるダンピング」を巡る三つの疑問

「過剰生産能力を抱えた中国によるダンピング」を巡る三つの疑問

深圳市塩田港で、米大陸への輸出を待つ比亜迪(BYD)の電動スクールバス。(2023年12月3日撮影、深圳=新華社配信)

 【新華社北京4月27日】米国など西側諸国の一部政治家やメディアはこのところ、「中国の生産能力過剰」論を絶えず誇張し、中国製新エネルギー車(NEV)やリチウムイオン電池、太陽光発電製品を巡り、政府の補助金を受けて中国の新エネ業界に「過剰な生産能力」が生じており、海外へのダンピング(不当廉売)によって他国の経済に影響を与えていると主張している。

 中国外交部の報道官は、「中国の過剰な生産能力が世界市場に打撃を与える」という主張は誤っているとコメントした。なぜ「中国の過剰生産能力のダンピング」は成り立たないのか。多くの専門家が分析している。

「過剰生産能力を抱えた中国によるダンピング」を巡る三つの疑問

15日、第135回広州交易会で、バイヤーに太陽電池モジュールを紹介する出展者。(広州=新華社記者/劉大偉)

疑問1:輸出が「過剰生産能力の送り出し」なのか

 中国の生産能力が過剰かどうかの議論において、米国など西側諸国はしばしば「過剰生産能力」を、内需を上回る生産能力と定義する。しかし、この見解は明らかに経済学の常識に反している。今日の市場は開かれ、世界は経済がグローバル化していて、ある国が産業の発展を計画する時、国内市場だけでなく、国際市場の需要も考慮に入れる必要がある。

 NEVを例に取ると、2023年の世界の販売台数1465万台のうち中国の輸出販売は120万3千台で、8%に過ぎない。中国社会科学院米国研究所の楊水清(よう・すいせい)助理研究員によると、国際エネルギー機関(IEA)が公表したリポート「グローバルEVアウトルック2023」は、世界のNEV需要が30年に4500万台に達すると推計しており、中国が年間20%の生産量の伸びを維持したとしても、NEV生産台数は3435万2千台にとどまり、依然として世界の需要を下回る。中国の現在のNEV生産能力が過剰どころか、より大きな市場需要に応えるため、さらなる発展を要していることを示している。

 国家発展改革委員会マクロ経済研究院の金瑞庭(きん・ずいてい)研究員は、一国の必要量を超過すると過剰生産能力とされるなら、国家間の貿易基盤はもはや存在しなくなり、比較優位の原則も土台を失うことになるとし、西側経済学の自由貿易論や分業論と明らかに相反するとの認識を示した。

「過剰生産能力を抱えた中国によるダンピング」を巡る三つの疑問

上海市で製造され、ブラジルやロシア、インドなどBRICS諸国へ輸出される太陽光発電製品。(資料写真、上海=新華社配信)

疑問2:製品価格が安ければダンピングなのか

 中国は新エネ産業に力を入れ、グリーン(環境配慮型)・低炭素・質の高い発展を推進しており、新たな定番3品目として「新三様」と呼ばれるNEV、リチウムイオン電池、太陽電池の輸出によって世界の消費者に良質な商品を提供し、世界市場の需要に応え続けている。しかし、米国など西側諸国の一部政治家は見て見ぬふりをして中国の新エネ製品にダンピング批判を向ける。

 ダンピングとは何か。中国国務院参事室の特約研究員で国家統計局元チーフエコノミストの姚景源(よう・けいげん)氏は、ダンピングとは一般に製品を原価より安い価格で輸出することだが、中国の「新三様」輸出は利益を上げており、価格が通常の価値を下回っていないことを示していると説明した。

 中国マクロ経済研究院対外経済研究所・新興経済体研究室の李大偉(り・だいい)主任は、輸出品の価格優位性が技術の高さや規模の経済によって成り立っている可能性が高く、単純にダンピングと見なすことはできないと指摘した。統計によると、中国の自動車産業の利益率は依然として5%前後を維持しており、産業全体の経営状況は健全性が高い。李氏は、中国の電気乗用車、リチウムイオン電池、太陽電池の輸出価格が上昇し続けていることは、「新三様」の輸出後の販売価格が通常より高いことを証明しており、ダンピングは存在しないと説明した。

 中国人民大学重陽金融研究院の研究員で、合作研究部主任の劉英(りゅう・えい)氏は、中国が国連の国際標準産業分類における全ての工業部門を網羅している唯一の国であり、巨大市場の需要と長期にわたる技術蓄積、整った産業環境によって良質で安価な製品を提供する能力を備え、世界中の消費者に利益をもたらしているとの見方を示した。

「過剰生産能力を抱えた中国によるダンピング」を巡る三つの疑問

   上海で船積みされる輸出用電気自動車。(2023年4月18日撮影、上海=新華社配信)

疑問3:中国の補助金措置だけを問題視するのか

 一部海外メディアは、中国政府が自国のNEVに対して実施した取得税減免や高額の補助金政策に矛先を向ける。こうした攻撃は対中貿易問題で米国など西側諸国が用いる二重基準を露呈させている。

 中国でNEVの開発製造が始まった当初、スタートアップ企業の発展を支援するため、中国政府は部分的な税制上の優遇措置や補助金政策を適用していた。しかし16年からはNEV業界への補助金を徐々に減額するメカニズムを正式採用しており、22年12月31日にはプラグインハイブリッド車(PHEV)と純電気自動車(BEV)に対する国家支出による補助金制度が終了した。

 現在、電気自動車(EV)分野では、米国、英国、フランスの方が強力な補助金政策を実施している。米国政府はインフレ抑制法を通じて約3690億ドル(1ドル=約158円)の予算を計上し、EVを含むクリーンエネルギー産業に税控除や補助金を提供している。欧州の多くの国も、法人税から個人購入までをEV産業への補助金措置の対象としている。

 清華大学中国経済思想・実践研究院の李稲葵(り・とうき)院長は「現代の経済体はほぼ例外なく、どの国も自国の重要産業を発展させたい場合、最初は政府が補助金を出している」と率直に述べた。

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