新湊、春の曳山巡行沸く ドラマ撮影に合わせ

地震の被害があった新湊地区を巡行する曳山=射水市放生津町

  ●秋へ順路の安全も確認 被災住民「元気出た」

 国の重要無形民俗文化財である「新湊曳山まつり」の巡行が27日、射水市新湊地区中心部で行われ、港町が活気に沸いた。インターネット配信ドラマの撮影に合わせ、例年より約5カ月早く曳山が巡行した。同地区は能登半島地震の影響で液状化による道路や宅地が傾くなどの被害が出ており、秋の巡行に向けて安全を確認する狙いもある。撮影前の町内曳きでは、町中に「イヤサー」の声が響き、被害を受けた住民にも笑顔が広がった。

 まつりは10月1日に行われ、放生津八幡宮の秋季例大祭として約370年の歴史を誇る。昨年12月にはユネスコ無形文化遺産の追加候補に選定されたが、1月の地震では曳山の巡行ルートでも道路の損傷が見られ、関係者からは「修復はされたが、無事に巡行できるのか不安だ」との声も聞かれていた。

 27日は「古新町」「南立町」「奈呉町」「東町」「中町」の5地区が参加。昼過ぎから町内引きをする地区が見られ、優雅な提灯山の巡行を住民や観光客らが楽しんだ。地震で蔵の壁が崩れる被害があった立町の二上克己さん(75)は「暗い気持ちで過ごす日々が続いていたが、曳山囃子の音色を聞いて元気が出た」と笑顔を見せた。

 新湊曳山協議会によると、日中の巡行では秋の祭りに影響がある場所はなかった。中野剛会長は「曳山は皆を笑顔にする力があると実感した。秋の祭りで安全に巡行できるよう準備していきたい」と述べた。

 ドラマは映画「Winny」の監督・脚本を担った松本優作さんが監督を務める。詳細は公表されていない。

  ●石崎奉燈祭から参加

 巡行には、七尾市石崎町で行われる「石崎奉燈祭」に参加する会社員竹田一平さん(30)と会社役員石倉哲也さん(38)の2人が曳子として参加した。新湊地区を中心とした若者でつくる「越中祭青年会」と2人は以前から交流があり、1月の地震発生直後には青年会のメンバーがブルーシートや水などの物資を送っており、住民からは涙ながらに感謝されたという。

 今回の巡行では久しぶりに合うメンバーもおり、2人は握手をしながら、感謝の気持ちを伝えた。恩返しとして参加したという竹田さんは「本当に困っている時に助けてもらった。今回は『イヤサー』の声で祭りを盛り上げたい」と話した。青年会の五十嵐友輔副会長(25)は「祭りを通じた交流を今後も大切にしていきたい」と述べた。

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