マイカスタム第9回 30g台のXシャフトで70歳代競技者の飛距離アップ

神奈川県相模原市で2つの練習場を行き来し、その駐車場で営業するのが移動式工房のグリーンポイント。練習場の入り口付近に駐車して、各練習場で週に2回ほど来場客相手に商売をしている。最近の困りごとは、市販クラブに重くて軟らかいシャフトの設定がないことだとか。そんなニーズが多いなか、今回の主人公は月例競技常連の70歳代後半のベテランゴルファー。最近飛距離が落ちているのが悩み。提案したのは20ヤードの飛距離アップを目指して開発されたプログレス『BB4』と、超軽量もラインアップする藤倉コンポジット『プラチナムスピーダー』の3Xの組み合わせ。それで飛距離が伸びたのか?

硬いシャフトは敬遠でも重軟シャフト装着モデルはない

「マイカスタム」も9回目を迎えたが、工房取材を続けているとトレンドが見える。そのひとつが「硬いシャフトのニーズが減少している」ことだ。

この点に同調するのは、神奈川県相模原市の2つの練習場で営業しているグリーンポイントの井上裕幸代表。

「フィッティングすると、ワンフレックスの軽くて柔らかいシャフトがマッチするゴルファーが多く、硬いシャフトを勧めるケースが少なくなりました」

HSが速くても、軽くて柔らかく、そしてしなり戻りが速いシャフトを推奨するケースが多いという。今回の登場人物は70歳代後半で競技ゴルファーのAさんである。HSは40m/sでスコアは70台。平均飛距離は230ヤードだが、競技で戦うには物足りない。そのベテランゴルファーに推奨したのが、『BB4』のヘッドと『プラチナムスピーダー』3Xのシャフト。何が起きるのか?

ケガで可動域が狭小化 硬いから余計な動きがない

井上代表が説明する。

「Aさんは肩をケガして手術した後、肩の可動域が狭くなってスイングがコンパクトになっていました。年齢的には軽くて柔らかいシャフトを勧めるのが王道ですが、それだと入射角が鋭角になる。ダウンブローにインパクトを迎えていたんだと思います」

先述の通り、昨今の軽柔シャフトはスイングするとしなり戻りが速い。スイングがコンパクトになったことに加えて、しなり戻りが速いとインパクトを迎えるタイミングも早く、スイープにインパクトを迎えることができなくなっていた。さらにスピン量が増加、ミート率も下がり飛距離が落ちたという見立てだ。

「流行りの軽柔シャフトはタメが作れず、シャフトをしならせられないゴルファー向きです。ただ、Aさんはスイングがきれいでタメも作れる。シャフトもしならせられます。軽くても柔らかいシャフトは必要ないんです」

出来上がったクラブは総重量290g。ただし、シャフトは30g台でもフレックスはX。クラブの振動数にいたっては260cpmだから、HS40m/s前後の、それも70歳代ゴルファーには、通常は推奨しない組み合わせだ。

「硬いシャフトでなければ、マッチしないケースの典型ですね」

それによって飛距離が10~15ヤード伸びたという。そしてヘッドだ。

HSに関わらずたわむヘッドとの相性

もうひとつ飛距離が伸びた理由は、ヘッドだ。プログレスの『BB4』はソールの蛇腹構造でHSのスピードに関わらず、ヘッドがたわんで飛距離が伸びるというのが謳い文句。ヒットがないと言われる地クラブドライバーのヘッドで、近年のヒット作と言われている。

「ヘッドとの相乗効果もあると思います。スイングが完成されていて、かつHS40m/sでもXシャフトを打ちこなせる技量の持ち主でも、ヘッドがシャフトとマッチしなければ、飛距離は伸びない。その点が奏功したのだと思います」

とはいえ、HS40m/sの70歳代ゴルファーに、シャフト重量30g台といえどもフレックスはXである。

「もちろん、ワンフレックスの軽柔シャフトも試しましたよ」

それでもXシャフトに行きついた。強烈な振動数のクラブが、ベテランゴルファーの飛距離を救った。

メーカー担当者コメント

藤倉コンポジット 飯田 浩治氏

「出来上がったクラブの振動数などを聞くと少し驚きますが、年配でもしっかりタメを作れるゴルファーなのだと思います。そのようなゴルファーのために『プラチナムスピーダー』でも30g台の設定があるので、お役に立てて嬉しいですね」

グリーンポイントとは

〒252-0135
神奈川県相模原市緑区大島2251-1
TEL 090-2440-2560 FAX 042-715-3114

この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年2月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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