“羽生結弦の所作”を取り入れた「陰陽師0」 山﨑賢人主演でも"不入り"の深刻事情

山﨑賢人(C)日刊ゲンダイ

狂言師で俳優の野村萬斎(58)が主演を務めた映画「陰陽師」の第3弾、「陰陽師0」(ワーナーブラザース)が大苦戦している。2001年10月公開の「陰陽師」(東宝)は興収30億円を超え、03年10月公開の「陰陽師Ⅱ」(同)も約16億円の興行成績を記録した。安倍晴明が陰陽師になる前の知られざる学生時代を描いた本作で主演を演じるのは、「キングダム」シリーズや「ゴールデンカムイ」で主演を務めた山﨑賢人(29)。さらなる大ヒットが期待されていたのに、「陰陽師0」の公開3日目までの観客動員数は約18万6800人、興行収入は約2億5500万円だった。

「『ゴールデンカムイ』の公開3日目までの観客動員数は約35万6000人。興収は約5億3300万円で、公開から約3カ月経った最新の興収は約29億5000万円です。『陰陽師0』は、上映短縮や打ち切りがなければ『ゴールデンカムイ』のほぼ半分の15億円前後で推移すると予測されます。VFXシーンをふんだんに使った大作としては非常に微妙な数字ですし、上映期間の短縮もささやかれています」(映画関係者)

山﨑の「キングダム」シリーズは現段階で第3作まで公開されていて、総興収約164億9000万円を稼ぎ出している。それと比べると興収15億円という数字はどうしても寂しい数字に見える。しかも、「陰陽師0」のVFXシーンは今年のアカデミー賞でアジア初の最優秀視覚効果賞を受賞した「ゴジラ-1.0」のスタッフが中心となって手掛けている。どうしてこんな残念な結果となってしまったのだろうか。

羽生のスピード離婚騒動もマイナスイメージに

「最大の失敗は、プロモーションの段階で羽生結弦(29)の所作を参考に作り上げたことを大々的に宣伝し過ぎたからかもしれません。羽生ファンも取り込もうとしたのかもしれませんが、これが逆に本来の陰陽師のファンを刺激してしまった。そもそも羽生がフィギュアで演じた安倍晴明に違和感を抱いていた陰陽師ファンも少なくないと聞いていますし、昨年のスピード離婚騒動もマイナスイメージに作用したのかもしれませんね」(同)

今回の取材で筆者が意外に感じたのは、想定外の不入りにもかかわらず、山﨑の周辺から悲観的な声が全くといって聞こえてこないことだ。ある芸能関係者は「賢人の勝負作は7月12日公開の『キングダム 大将軍の帰還』です。シリーズ4作で興収200億円超えの金字塔を達成させること。陰陽師はその前哨戦」と漏らす。それを裏付けるように、筆者が都内の劇場から出てきた観客に直接取材した人の中には「山﨑ってキングダムやゴールデンカムイみたいな“動”の印象が強くて、呪術を静かに唱える安倍晴明って感じじゃなかった」という感想もあった。アクションシーンを見事にこなす山﨑だが、“静”の演技が何とも心もとないというわけだ。

「キングダムには熱狂的なアニメファンが付いていますし、これまでの3作品同様『大将軍』も間違いないとは思います。ただ気になるのは主演としての山﨑の絶対的な演技力です。番手の役者たちに助けられずにピンとして自立することができるのか……ということが今後の課題でしょう。いくら固定ファンが付いている作品でも、第4作ともなれば少し食傷気味になるのは否めません。それをカバーするのが主演の演技力です。周りを固める脇の役者たちがいいだけに、山﨑の役者としての未熟さが目立ってしまい、致命傷にならなければいいのですが」(前出の芸能関係者)

現在第71巻まで発売されている「キングダム」コミックスだが、“最終章”とされている「大将軍」は第16巻の物語。山﨑主演のまま実写版が続くのかが見ものだ。

(芋澤貞雄/芸能ジャーナリスト)

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