日本橋高島屋から盗まれた純金茶碗 買い取った業者の罪は?【「表と裏」の法律知識】

古物商には盗品が持ち込まれることもある

【「表と裏」の法律知識】#232

先日、東京の日本橋高島屋で開催されていた金製品の展示即売会で、純金製の茶碗がショーケースの中からこつぜんと盗まれる事件が起きました。この茶碗は1040万円で販売されていましたが、その日のうちに窃盗犯が古物商に持ち込み、約180万円で売却されたことがわかっています。

盗まれた純金茶碗の重さは380グラム。時価480万円相当になります。相場に対して安すぎる価格で買い取られていることも、話題のひとつとなっているようです。

今回の事件、古物商は「盗品であることは知らなかった」と主張しているそうですが、罪に問われることはないのでしょうか。こうした場合、“盗まれた物であることを知って”その物を買い取ると、「盗品等有償譲受罪」(刑法256条2項)に当たります。また、“盗まれた物であると知りながら転売”した場合は、「遺失物等横領罪」(刑法254条)にも当たります。

古物商には盗品が持ち込まれることもあるため、取引価格が200万円を超える場合には、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」で、より厳格な本人確認が求められます。

今回の事件、古物商の買い取り価格が不相当に安く、200万円以下で取引が成立した背景には、より早く盗品を手放すために厳格な本人確認を避ける価格での取引が行われたのではないかとも考えられます。純金茶碗を持ち込んだ窃盗犯が急いでいる様子はなかったのか、安くてもいいから買い取ってほしいと申し出たのか。

いったい窃盗犯と古物商との間でどんな会話があったのか、盗品であるかもしれないとの認識は本当になかったのか。そのあたりが焦点になるような気がします。

今日では、メルカリやネットオークションなどで、一般の消費者だれもが中古品を購入することができます。つまり、盗品に関する罪が、身近に潜む犯罪になってきているともいえます。くれぐれも注意してください。

(髙橋裕樹/弁護士)

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