有事を想定し急速に進む南西シフトで守られるのは?政府が”特定利用空港・港湾に”全国16施設を指定

政府は2023年度末、武力攻撃を想定したシェルターの整備方針の発表や、本島に初めて配備された地対艦ミサイル部隊を発足させた。

また2024年4月1日には、有事の際に自衛隊などが使用することを前提とする「特定利用空港・港湾」に那覇空港と石垣港を指定した。

有事を想定し急速に進む南西シフトが急速に進んでいる。

那覇空港と石垣港を特定利用空港・港湾に指定

宮古島駐屯地や石垣駐屯地に続いて防衛省は2024年3月、地対艦ミサイル部隊を沖縄本島で初めて、うるま市の勝連分屯地で発足させた。

南西諸島の防衛力強化の名の下に自衛隊の増強を図る政府の強引な姿勢に、市民から強い抗議の声が上がった。

2022年に閣議決定した安保関連三文書の改定以降、一気に加速した南西シフト。

2024年3月末には、石垣市と宮古島市、与那国町、竹富町、多良間村の5市町村に武力攻撃を想定したシェルターを整備するガイドラインを発表した。

さらに、2024年4月1日には…

木原稔 防衛相:
自衛隊が多様な空港・港湾を平素から訓練や災害派遣などで円滑に利用できるようにすることは、有事における部隊展開や国民保護においても、自衛隊の能力を最大限に発揮する観点から、大変意義あるものだと考えています

政府は有事の使用を想定した「特定利用空港・港湾」に全国で16カ所を指定。

沖縄県内では、那覇空港と石垣港が指定された。

国家総動員体制の前段に

2024年4月14日、那覇市で開かれたシンポジウムで軍事ジャーナリストの小西誠さんは、国の機能や資源を戦争に利用するために統制する国家総動員体制の前段だと警鐘を鳴らした。

軍事ジャーナリスト 小西誠さん:
民間の空港・港湾の共用、軍事化。つまり、これは大げさに言えば、国家総動員体制の前段が始まりつつあるということです

公共インフラとしての機能強化

一方、特定利用空港・港湾への指定は、公共インフラとしての機能強化に繋がると歓迎の声もあり、石垣市の中山市長は、石垣港が指定されたことによるデメリットはないと評価した。

これと並行して、民間の空港や港湾は有事の際に九州などに島民を避難させる拠点とすることも議論された。軍民共用となることで攻撃の対象とされ、国民保護の観点からの問題点も指摘された。

軍事ジャーナリストの小西誠さんは、「ベトナム戦争では90パーセント近くが民間の死傷者であった」「1977年のジュネーブ条約で、軍民分離という原則ができたため、軍民分離をはっきりさせないと民間施設がやられ民間人や民間施設が攻撃対象になり得る」と指摘する。

政府は今後も指定を増やす考え

政府は今後、全国の16施設に加え、さらに指定を増やす考えだ。

玉城知事は、「軍事目標を規定するジュネーブ条約の関係や米軍の利用について、まだ明らかになっていない不明な点が残されているということから、国に対し適宜確認を行っている」としている。

特定利用空港・港湾の利用関係について内閣官房のホームページでは、「あくまで関係省庁と管理者との間で設けられるものであり、アメリカ軍が本枠組みに参加することはない」と否定している。

しかし、近年活発に行われている日米共同訓練では、民間空港にアメリカ軍のオスプレイも飛来するなど、これまで使用していなかった空港や港が使われ始めている。

小西さんは、自衛隊が統合作戦をしていき、米軍が共同関係を作って、共同指揮の関係に入る段階に来ているので、戦争を回避するためには、軍民共用に反対する声を全国に広げなければならないと指摘する。

軍事ジャーナリスト 小西誠さん:
唯一言えることは沖縄から台湾有事反対、軍民共用反対の運動を始め、全国化して政府を動かし、軍拡化を止めるという以外にないと思う

自衛隊の民間空港、港湾の利用は、軍事拠点の新たな整備だと指摘する声に対し、政府には詳細な説明が求められている。

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