【コラム・天風録】円安のゴールデンウイーク

 トリスを飲んでハワイへ行こう―。1961年のウイスキー会社によるハワイ旅行の懸賞は大きな話題に。3年後、海外渡航が自由化されて当選者はついに夢の旅行へ。ところが実際に旅立ったのは4人だけ▲大半は旅行代金額の40万円を受け取ったそうだ。今の物価に換算して400万円余り。ハワイより現金を選んだのも無理はない。現在ならどうだろうか。やはり海外を選ばぬ人は多いだろう。何しろ円安が進んでいる▲きのう始まったゴールデンウイーク。コロナ禍という憂いが消えたこともあり、駅のほか空港も混雑していた。海外へと繰り出す家族連れも多いようだ。ことしの人気はアジアなどの近場という。ハワイや欧米への旅行は円安が二の足を踏ませるらしい▲それでもハワイへ行く人の姿をテレビニュースで見た。ある家族のスーツケースは食料でぎっしり。高くつく外食を控え、自炊するために。工夫しながらの旅行も楽しそうではあるが…▲きのう広島市中心部は外国人観光客が目立った。海の向こうに黄金週間はあるまいが、円安で日本を旅先に選んだか。グルメや観光を楽しんでもらおう。話しかければ、こちらも海外旅行気分が味わえるかも。

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