年金月17万円・77歳の父、「老人ホーム」で悠々自適な生活を満喫も、ひとり娘「もう限界!」と嗚咽のワケ

昨今、高齢者の住まいの選択肢としてあがることも多い「老人ホーム」。入居にあたり、懸念となることのひとつが費用です。しっかりとしたマネープランのもと、身の丈に合った施設を選ぶことが重要ですが、少しでも無理をしてしまうと、限界を迎えることも……。みていきましょう。

ひとり娘…久々に父が住む実家を訪れたら

厚生労働省『令和4年人口動態統計(確定数)の概況』によると、2022年に亡くなった人は156万6,032人。そのうち、65歳以上の男性が71万4,183万人、女性が72万5,417人。そのうち結婚をしていた有配偶者の死亡者は、男性45万2,943人、女性14万3,116人でした。

夫婦の年齢差が2~3歳差ということから、すべて誤差と仮定すると、夫を亡くした高齢妻は1年で45万人ほど、妻を亡くした高齢夫は1年で14万人ほどになるといえます。

【年齢別・有配偶者の死亡者数】

65~69歳:24,661人/12,142人

70~74歳:56,975人/23,591人

75~79歳:73,045人/27,392人

80~84歳:100,986人/33,807人

85~89歳:106,830人/29,848人

90~94歳:61,634人/13,922人

95~99歳:14,636人/2,299人

100歳以上:1,124人/115人

※数値左:男性の死亡者/女性の死亡者

パートナーを亡くす女性のほうが圧倒的に多いのは、男性81.05年、女性87.09年とされる平均寿命から考えてみても当然のこと。また妻を亡くした夫のほうが、パートナーの死をきっかけに意気消沈、後を追うように旅立ってしまうケースが多いとはよく聞く話です。

――実家がごみ屋敷だった

そう投稿した50代女性の父親(77歳)も、先に妻を亡くした後に塞ぎこむように。地方に住む女性が久々に実家を訪れると、家の中はパンパンのゴミ袋でいっぱいだったといいます。理由を父に尋ねると、毎日の食事はコンビニ弁当、掃除もする気になれず、ゴミ出しに持っていくのが億劫でゴミ袋は溜まるばかり……。

――どうせ、誰もこない家だから

と父親。ほぼ外出もせず、人とも話さず、1日が過ぎていくだけだといいます。ひとり娘だという女性がどうにかしてあげないと、父はどんどんやつれていき、取り返しのつかないことに……そこで決めたのが「父を老人ホームに入居させる」ということでした。

親孝行の気持ちから「予算以上のホーム」を選んでしまった先の顛末

老人ホームには色々な種類がありますが、要支援・介護認定を受けていない女性の父親が入居可能なのは、「サービス付き高齢者向け住宅」「自立型ケアハウス」「自立型有料老人ホーム」の3つ。さらに「住宅型有料老人ホーム」も、施設によっては自立=要支援・介護認定を受けていない人が入れる場合も。どちらにせよ、興味のある施設があるなら、一度、問合せしてみるのが安心です。

女性の父が入居したのは、介護施設・医療施設が隣接し、なにかあったときも安心というホーム。ただネックだったというのが費用で、入居金一時金が1,000万円、月額費用が25万円。入居金は父親の貯蓄から捻出するとして、問題は月額費用。父親の年金は手取りで月15万円ほどで、残りを貯蓄で補うとすると、年間120万円ほどを取り崩すことになります。77歳の父親の貯蓄は5年ほどで底をつく計算だったとか。

ハッキリ言って予算オーバー。しかし、できれば環境が大きく変わるのは父への負担になるから、実家の近くという条件は譲れない。万全な、医療・介護体制、というのも、長い目で見れば大きな魅力……結局、毎月足がでる10万円のうち、半分は女性が肩代わりすることで費用問題は解決したといいます。

女性の後日談。

ホームに入居してから父親はすっかり元気を取り戻しているとか。何不自由なく、悠々自適に暮らす父に、女性も「無理してでも父をホームに入れて良かった」と胸をなでおろしていたといいます。しかし再び費用問題が勃発。この物価高を受けて、女性の父親が入居するホームでは、月額費用を5万円ほど値上げに。

株式会社TRデータテクノロジーが行った『老人ホーム業界の価格改定の現状調査』によると、月額費の値上げを行った法人は全体の26%。月額費用20万~30万円帯の施設では、管理費が27.0%増、食費が10.3%増でした。

値上げの分を父の貯蓄からの補填すれば、あっという間に貯蓄はなくなってしまう……できることは、女性の負担を増やすこと以外なく月10万円を肩代わりすることで決着。しかし女性自身、それほど余裕があるわけではなく、すぐに限界を感じたといいます。

――ごめんなさい、お父さん、もう限界!

笑顔で毎日過ごす父親に対して「老人ホームを退去して」と頭を下げる女性。思わず、声にならないほど泣いてしまったといいます。住み慣れた故郷を離れることは高齢の父にとって負担ではありますが、一旦、地方にある女性の自宅で同居を始めることにしたといいます。

昨今は、終の棲家としても人気が高まる老人ホーム。入居費用は入居者自身が払うのが多数派ですが、2割程度は入居者の子どもが払っています。子ども自身、経済的に十分な余裕があるなら問題はありませんが、自身の老後に向けた資産形成に影響を与えることもあるでしょう。老人ホームの平均入居期間は4~5年といわれているものの、10年以上になるケースも珍しくなく、誰が費用負担するにせよ、身の丈にあった施設を選ぶことが大切です。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年人口動態統計(確定数)の概況』

株式会社TRデータテクノロジー『有料老人ホーム等の月額管理費・食費改定の現状調査結果を公開 平均値上げ額は管理費7,570円・食費4,810円となり 2022年末調査と比べて、値上げ額が増加』

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