廃炉の現状と今後(4月28日)

 東京電力福島第1原発事故で溶け落ちた燃料デブリ(がれき)の取り出しは、廃炉の中でも一番困難な工事だ。その工法について国の専門機関から一つの方向性が示されたので、デブリの取り出しに関して号機ごとに現状と今後についてまとめてみた。

 1号機では最近、ドローンを使った内部調査が行われた。映像からは炉心を支える基礎部分に大きな損傷は見当たらなかったという。1号機のデブリの多くは格納容器底部にあり、このデータも参考にしながら取り出し工法が今後検討される。

 2号機では、格納容器の内部からデブリの試験的取り出しを行うロボットアームの使用が延期され、格納容器内部に通じる貫通部の堆積物等を除去する作業が進められている。今後は、除去作業を継続するとともにテレスコピック式(釣り竿[ざお]のようなもの)装置で先行してサンプルの取り出しを行う。またロボットアームの調整も進める。さらに段階的に取り出し規模を拡大するため格納容器底部からの取り出しは、ロボットアームを改良した後継機で継続される。

 3号機はデブリの取り出し規模を拡大するため、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の小委員会が提案した「気中工法」と「充[じゅう]填[てん]固化工法」を組み合わせる工法を中心に検討されている。デブリに水をかけながら取り出す「気中工法」が柱で、デブリを充填材で固めて取り出す「充填固化工法」と組み合わせる。気中工法では高線量環境になるので遠隔作業となるが、デブリを充填材で覆い安定化し、格納容器の上方に遮[しゃ]蔽[へい]体を設けることで、遮蔽効果により原子炉建屋上部でも人が入って作業できるようになる。

 この工法を3号機から適用する理由は二つある。一つ目は、原子炉建屋上部にある使用済み燃料の取り出しが終了しており、デブリ取り出し準備時に、そのリスクを考慮する必要がない。二つ目は準備工事をするための場所の確保だ。デブリ取り出しに当たっては、周辺の放射性廃棄物処理設備やタービン建屋等を全部または一部解体する必要が生じる。3号機の場合は周辺ヤードの準備が比較的円滑に進むと考えられる。ただ、準備時間はかなりかかり、本格的な取り出しが始まるのは2030年代と想定されている。また東電が設計を担当するが、具体的な工程や工事の規模が明らかになるのは1~2年程度先と思われる。

 1号機と2号機の使用済み燃料取り出しの準備も進んでいる。1号機は2027~2028年度、2号機は2024~2026年度に開始予定とのことだ。東電は、2号機の燃料デブリ取り出しについて10月までを目指すと発表した。廃炉の中長期ロードマップでは、今年の秋までには第2期が終了し第3期の廃止措置終了までの期間に入ることになる。30~40年の長い期間だが、全体的に予定より遅れている。困難な工事だが、原子炉建屋の経年劣化も考慮すると、このロードマップの期間内で廃炉工事を完了してもらいたいと考える。(角山茂章 会津大学元学長)

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