【天皇賞・春 みどころ】長距離を愛し、長距離に愛された馬たちによる伝統の大一番

ドゥレッツァが菊花賞を3馬身半の圧勝 (C)SANKEI

歴史と伝統に彩られた天皇賞がこの春で169回目を迎える。中でも京都で行われるこのレースは平地GⅠ最長となる3200mでその覇権が争われる。

スピード勝負になることが多い近年の競馬界にあって、頑固一徹なまでにスタミナが求められるこのレース。

【予想配信】古馬最高の栄誉を懸けた ステイヤー日本一決定戦「天皇賞・春」をガチ予想!キャプテン渡辺の自腹で目指せ100万円!

今年で4年連続の出走となるディープボンドのように、このレースを待ち望んでいたという馬も少なくない。日本競馬界でも希少なものになった芝3000m以上のレースで馬券圏内に入った経験がある馬は18頭中11頭もいる。

長距離を愛し、そして長距離に愛された馬たちがビッグタイトル、天皇賞(春)に挑む。その筆頭となるのは......ドゥレッツァだろう。

デビュー2戦目で後の重賞勝ち馬、サトノグランツを下して初勝利を挙げた素質馬だったが、3勝目を挙げたのはダービーが終わった後の6月。春のクラシック戦線を見逃してまで、この馬の成長を促すことに時間を費やした。

しかし、その判断は間違っていなかった。山吹賞もホンコンJTもスタートで大きな不利を受けて厳しいレースとなったが、それでもしっかりと勝ち切った。夏の新潟の日本海Sで中団から差し切って古馬をも捻じ伏せてみせた。

そして迎えた菊花賞は大外枠からのスタートだったが、スタートから思い切って逃げの手を打つと、2週目の3コーナーを迎えるところで一度息を入れて、直線で再度エンジンを点火させて押し切るという強い内容で快勝。

タスティエーラにソールオリエンスといった春のクラシック戦線で活躍したスターたちを突き放してみせた。

怖いもの知らずの勝ちっぷりを見せたことで、世代最強の声も聞かれたドゥレッツァだったが......

年明け緒戦となった金鯱賞でプログノーシスから5馬身も離されての2着に。決定的な差を付けられたことで明け4歳世代のレベルそのものが疑われることとなった。

菊花賞の快走はフロックだったのか、それとも――その答えは天皇賞(春)でハッキリすることだろう。

金鯱賞では勝ち馬から離されたとはいえ、久々の一戦となった上にトップハンデとなった59キロの斤量を背負ったことも少なからず響いた。

今回は叩き2戦目ということで体調面の上向きは必至で斤量は同じ58キロ。

クリストフ・ルメールの落馬負傷で日本海S以来となる戸崎圭太とのコンビとなったが、先日の皐月賞を制して勢いに乗っている。菊花賞馬の意地にもかけて春の盾をつかみ取りたい。

そんなドゥレッツァに対し、リベンジに燃えているのがダービー馬、タスティエーラだ。

弥生賞を制してクラシック戦線の主役に躍り出ると、皐月賞はいったん先頭に立つもソールオリエンスの爆発的な末脚に敗れて2着。最後まで集中して走ることが課題とされたが、その課題は続くダービーで克服。

ダミアン・レーンの華麗な手綱さばきで直線早めにスパートを打ち、またもいったん抜け出したが今度は最後まで首をしっかりと下げて走り、見事に勝利。集中した時の強さを見せる形になった。

しかし、その後のタスティエーラは勝ち星から見放される。二冠を目指した菊花賞はドゥレッツァを捕まえられず、古馬初挑戦となった有馬記念は大幅な馬体増が響いて6着。

4歳年明け緒戦となった大阪杯では1番人気に支持されたが、先行策からの末脚勝負で全く脚を伸ばせず、11着に大敗。ダービー馬らしからぬレースに落胆したファンも多いことだろう。

菊花賞で敗れたドゥレッツァへのリベンジはもちろん、古馬相手に久しぶりの勝利をあげたい今回は大幅に距離を延ばしての一戦。

ダービー以降、最も距離が短いレースになったためかやや忙しそうにしていたレース序盤のことを考えると距離が延びた方が本領を発揮する可能性はある。ダービー馬の誇りをここで見せることはできるだろうか。

そんな4歳馬たちに立ちはだかったのが、歴戦の古馬の勇者たち。中でもステイヤーとしてのポテンシャルの高さはテーオーロイヤルの右に出る者がいない。

2年前のダイヤモンドSを制して以降、前走までに9戦しているが、その中で3000m以上のレースを走って[3・1・1・0]という圧倒的な好成績をマーク。

明け6歳になった今年はダイヤモンドS、阪神大賞典をともに先行抜け出し策で見事に連勝。3000m以上のレースでの無類のスタミナを見せつけた。

長距離戦での無類の適性の高さ、そして圧倒的なスタミナを武器にした強気のレース運びで今度こそ春の盾を掴むだろう。

最後にこのレースで3年連続の2着に入っている古豪、ディープボンドに注目したい。

同い年の三冠馬、コントレイルとともにクラシック戦線に挑み続け、菊花賞の4着が最高着順に。その後阪神大賞典で2度目の重賞制覇を果たすと、その後は一貫して2400m以上のレースに挑み続けた。

その結果が天皇賞(春)の3年連続銀メダル。昨秋の京都大賞典で3着に入ったのを最後に馬券圏内に食い込めていないが、身体にしみこんだであろう、3200mでの渾身の走りで悲願の金メダルをつかみ取りたい。

若き4歳馬たちが意地を見せるか、それとも長距離適性に特化した古馬勢が粉砕するか......およそ3分20秒の豪華で華麗な覇権争いをこの目に焼き付けたい。

■文/福嶌弘

© 株式会社テレビ東京