出場停止明けの西尾隆矢が明かす谷口彰悟との邂逅。隣席したUAE戦でどんな言葉を交わし、何を学んだのか【U-23アジア杯】

3試合ぶりに23人全員が揃う。

出場権獲得まであと1勝。パリ五輪のアジア最終予選を兼ねるU-23アジアカップに参戦している若き日本代表は、現地時間4月29日に準決勝でU-23イラク代表と戦う。

大一番を前に守備の大黒柱がチームに戻ってくる。中国とのグループステージ初戦(1-0)で退場処分となったCBの西尾隆矢(C大阪)だ。

16日に行なわれた中国戦で、西尾は先発。17分に相手選手との小競り合いで肘打ちをする格好になり、オンフィールドレビューの末、一発レッドに。3試合の出場停止処分を受けていた。

この期間中は仲間の勝利を信じ、裏方としてチームをサポート。ナーバスになる気持ちをグッと堪え、気持ちを切り替えて練習から盛り立てた。激闘を制した準々決勝のカタール戦後には、チームメイト一人ひとりに対して「ありがとう」と伝えたという。

「おかえり、次から入れるね」と仲間たちから声を掛けられた22歳のDFは、「このメンバー、スタッフ、監督、コーチ、全員に本当に感謝しかない」と殊勝に語る。

責任を感じながら過ごした初戦からの12日間。だが、来るべき時に備えて準備もしてきた。メンタル面やコンディション面を落とさないようにするのはもちろん、経験豊富な現役日本代表CBからも刺激を得たという。カタールのアル・ラーヤンでプレーするDF谷口彰悟だ。

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今回のU-23アジア杯はカタールで開催されており、大会前に谷口はチームを激励に訪れ、中国戦と続くUAE戦(2-0)をスタンドで観戦。西尾はUAE戦では谷口の横に座り、仲間たちのプレーを見守った。2022年1月のA代表候補合宿で活動を共にした先輩と久々に言葉を交わしたが、この90分間は西尾にとって貴重な時間となった。

「彰悟さんとはラージのA代表合宿で一度お会いして、そこでもお世話になっていた。他愛もないカタールでの話だったりとか、A代表ってどんな感じですかという話もした」としつつ、「同じセンターバックなので、ラインの上げ下げの早さだったりとか、そういう戦術のところを話してもらった」と振り返る。

同じポジションでプレーしているとあって、守備の話に多くの時間を割けた点は、西尾にとって多くの学びがあったという。

「『もうちょいラインは早くあげられるんじゃない?』とか、『ビルドアップのところはもうちょっとテンポ良く』など(助言をもらった)。そういうところは自分も吸収して、ピッチで表現できれば良い」

27日にアル・ラーヤンの練習場で取材に応じた谷口は「深い話はしていない」と苦笑いを浮かべていたが、西尾にとっては先輩のリアルな声を聞けた点はプラスになったはずだ。

「残念な退場で本人のメンタルも多少落ち込んだところもあると思う。でも、もう終わってしまったことは仕方ない。とにかくチームのために。『コンディションは落とさないようにして、勝ち上がったら出場のチャンスはあるから』と。チームのためにも、コンディションのためにも、しっかりメンタルを落とさずに行こうというのは伝えました」(谷口)

先輩から愛のある言葉で激励を受けていた西尾。谷口から学んだことを活かし、イラク戦での活躍を誓う。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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