人気ミステリー作家が「本気で書いた」初の児童書、本屋大賞で初の快挙 話題作を連発する兵庫のライツ社刊行

「放課後ミステリクラブ」を手にする大塚啓志郎社長(左)と感応嘉奈子編集長=明石市桜町

 出版社のライツ社(兵庫県明石市桜町)が手がけた知念実希人さん作の児童書「放課後ミステリクラブ 1金魚の泳ぐプール事件」が、全国の書店員が選ぶ「本屋大賞2024」の9位に選ばれた。児童書のノミネートは、20年以上続く本屋大賞で初めての快挙。大塚啓志郎社長(38)は「人気のミステリー作家が子ども向けに本気で書いた。子どもたちに本の面白さを知ってもらうきっかけとなれば」と話す。(赤松沙和)

 同社は2016年創業。6人の小所帯ながら話題作を連発し、重版率は6割を超える。「放課後-」は小学校中学年向けで、シリーズ1作目として2023年6月に発売した。学校で起こる不思議な事件の謎を3人組が解き明かす、子ども向けの本格ミステリー。シリーズは3巻まで発売され累計で12万部を売り上げる人気作品となっている。

 「仮面病棟」「硝子の塔の殺人」などの医療ミステリーを手がける知念さんだが、児童向けの作品は初めて。企画のきっかけは4年前にさかのぼる。「彼が子ども向けの本を書いたら面白いはず」という徳島の書店員の紹介だった。知念さんも本が好きな子を増やしたいという大塚社長らの思いに共感し執筆を決めた。

 「中学年は本を一番届けたい、でも売れない年代」と大塚さん。低学年までは絵本や児童書を読む機会も多いが、ゲームや漫画、動画視聴などに興味が移り始める中学年にどうアプローチするか。今回の受賞は、絵本と小説をつなぐ児童書として、本をこれから好きになる人のためにという書店員の思いが集まった結果と受けとめる。

 編集を担当した感応嘉奈子さん(46)は「書店員さんからこの本を作ってくれてありがとうと声をかけられた。地元の書店を中心に応援してもらった」と感謝。同社には「本はあんまり好きじゃなかったけど、この本を読んで好きになった」という子どもたちの感想が毎日届く。大塚社長は「思いが読者に伝わった。これからも特徴ある作品を世に届けたい」とほほ笑む。

 160ページ、1210円。6月には4巻目の発売を予定する。

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