「出産の立ち合いより重要な仕事はない」 現役メジャーリーガーに聞いた男性の産休取得の価値観

ドジャースのジェームズ・アウトマンが語る産休の考え方【写真:Getty Images】

ドジャースの選手たちが「父親休暇」に持論

米大リーグ・ドジャースは25日(日本時間26日)まで、敵地でナショナルズとの3連戦を行った。ジェームズ・アウトマン外野手は2試合に出場。初戦は8回に貴重な適時二塁打を放ち、勝利に貢献した。今月上旬には、妻の第一子妊娠をインスタグラムで公表。日本と異なる産休取得の風潮について聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・土屋 一平)

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産休の取得は「普通のことになっていると思う」。ドジャース期待の26歳は、当たり前と言わんばかりに答えた。

2022年にメジャーデビューし、昨季は23本塁打を放ったアウトマン。今季は、中堅の定位置を確実なものにするためにも重要なシーズンだ。それでも、妻の出産と試合が重なれば休みを取るつもり。「妻をはじめ、みんなを助けたいからね」。我が子の存在が、さらなるモチベーションに繋がっているという。

アウトマンにとって心強いのは“前例”が豊富なこと。昨季ドジャースでは、ムーキー・ベッツ内野手、マックス・マンシー内野手、エバン・フィリップス投手、ブルスダー・グラテロル投手が、出産に立ち会うために「父親休暇リスト」入りしていた。1~3試合休みが取得できるMLBの規定。アウトマンも「まだ僕は経験したことがないから、彼らに聞いてみないとね」と笑顔を浮かべていた。

米国の連邦法では、有給での産休は認められておらず、州によって独自に定められている。MLBは11年に「父親休暇」をリーグ独自に規定。22年にはパドレスのダルビッシュ有投手や、カブスの鈴木誠也外野手がリスト入りするなど、多くの選手が取得してきた。

今でこそMLBでも一般的になったが、19年にはプレーオフの大舞台で「父親休暇」を取得した投手が話題を集めた。彼は今、ドジャースでプレーしている。

ドジャース37歳投手「出産に立ち会う以上に重要な仕事はない」

ダニエル・ハドソン投手はナショナルズ時代の19年、出産に立ち会うため、カージナルスとのリーグ優勝決定シリーズ第1戦を欠場。ネット上で議論を呼んだ。しかし、同僚たちは決断を支持。ハドソンは「大半はとても好意的だった」と当時をこう振り返った。

「チームメイトを残すことになるから、その意味では難しい決断だった。でも、僕にとっては家族が最も重要。野球ですらそれは同じだ。キャリアを通じて常に支えてくれている妻のため、出産の場にいることは重要だった。1試合を欠場して、チームに戻った次の試合では、チームメイトがみんな支えてくれたから感謝しているよ」

2度のトミー・ジョン手術に両膝靭帯の負傷を経験した37歳。マウンドに立ち続ける理由は「野球が好きだから」と語る。その野球ですら、家族を前にすれば二の次。「個人的な意見だけど、何をしていようと、出産に立ち会う以上に重要な仕事はないと思う」。日本でも男性の育児休暇など有給取得に対する社会の風潮は徐々に変わりつつあるが、浸透しきっているとは言い難い。

もちろん文化や歴史的背景、国民性など様々な要素が複合的に重なるため、一概にどちらが正しいとは言えない。ただ、そんな日本のことをハドソンに伝えると、慎重に言葉を選びながら語ってくれた。

「文化の違いはあるだろうね。一人ひとり優先順位は違うだろうから、その人にとって優先度の高い方を選べると良いよね。2、3日産休が取りたいのであれば、そうできるのが普通であるべきだと思う。それと同時に、仕事を優先した人も批判されるべきじゃないと思う。その人の決断が尊重されると良いね」

選択には自由があり、自ら選んだからには責任を持つ。そして、それぞれの選択が尊重される。そんな環境は理想的なのかもしれない。世界トップレベルで競技に向き合うアスリートも、家族の支えがあってこそ活躍できる。そう改めて実感させられた。

THE ANSWER編集部・土屋 一平 / Ippei Tsuchiya

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