【第3回WUBS】フィリピン勢としてWUBSで2チーム目のタイトル獲得を目指す名門デ・ラサール大

過去2年間のWUBS(Sun Chlorella presents World University Basketball Series=世界大学バスケットボール選手権)にフィリピン代表として2大会連続で出場したアテネオ・デ・マニラ大は、第1回大会で初代王者となった後、昨年の第2回大会でもベスト4入りと好成績を残している。第3回目を迎える今年の大会で初出場するデ・ラサール大はどうだろうか。デ・ラサール大についての基本的な情報については次ページにまとめるとして、何よりも注目すべきポイントを先にチェックしていこう。

デ・ラサール大はフィリピンの大学スポーツの統括団体の一つであるUAAP(University Athletic Association of the Philippines)の直近シーズン(シーズン86)で王座に就いたチームだ。それを含めこれまでにUAAPを10回制しており、今回の優勝は2016年以来7年ぶりとなる歓喜の古豪復活だった。

UAAPのバスケットボールは、マニラ近郊の8大学がホーム&アウェイで1度ずつ対戦する総当たり戦のレギュラーシーズン14試合が最初に行われる。その中で4強入りを果たしたチームが決勝ラウンドに進み、一発勝負のセミファイナルと2戦先勝の3試合シリーズによるファイナルで王座を決める。

デ・ラサール大は、秋口からのレギュラーシーズン序盤に2勝3敗と黒星が先行していた。しかし以降の9試合で全勝して11勝3敗で2位となり、セミファイナルではナショナル大を97-73で撃破。ファイナルでは、アテネオ・デ・マニラ大をセミファイナルで下したレギュラーシーズン1位のフィリピン大に初戦で67-97と大敗を喫しながら、GAME2を82-60で取り返し、GAME3で73-69と接戦をものにして王座奪還に成功した。

主軸はフィリピン代表期待のスター、ケビン・キンバオデ・ラサール大には、すでにフィリピン代表としても活躍しているスターが在籍している。そのプレーヤーは身長194cmのフォワード、ケビン・キンバオで、これまでにFIBAアジアカップ2022、FIBAワールドカップ2023アジア地区予選、そして直近のFIBAアジアカップ2025予選でフィリピン代表に名を連ねている。

アジアカップ2025予選ではカイ・ソット(横浜ビー・コルセアーズ)、ドワイト・ラモス(レバンガ北海道)という現役Bリーガー、1月まで琉球ゴールデンキングスに在籍していたカール・タマヨ、EASLで琉球と対戦したメラルコ・ボルツでガードを務めるクリス・ニューサムなど、日本のファンにもなじみ深いプレーヤーたちとともに活躍。チャイニーズ・タイペイ戦、香港戦の2試合出場でチーム3位の平均12.5得点、同3位タイの4.5リバウンドを記録した。キンバオは高校時代にタマヨとチームメイトであり、ソットとはライバルという関係。そんな間柄も影響してか、UAAPで王座獲得を果たした後の昨年12月には休暇で日本を訪れていたことが現地メディアで報じられている。

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FIBAアジアカップ2025予選でのケビン・キンバオ。「何でも屋(Mr. Do-it-all)」というニックネームで呼ばれるほどのオールラウンダーだ(写真/©FIBA.AsiaCup2025)

デ・ラサール大での活躍ぶりがどんなものかというと、シーズン86のMVPであり、激闘の末王座獲得に成功したファイナルシリーズでもMVP。ファイナルの3試合は平均14.7得点、9.3リバウンド、2.3アシスト、2.0スティールとオールラウンドな働きを見せたが、特にGAME3では、71-69の2点リードで迎えた第4Q残り2秒のクラッチフリースロー2本成功を含む24得点、9リバウンド、4アシスト、2ブロックという頼りがいのある活躍ぶりだった。

デ・ラサール大はもちろんキンバオのワンマンチームではない。例えば、身長203cmで運動能力の高いビッグマンのマイク・フィリップスというプレーヤーは、まだ日本のファンの間では知られていないタレントかもしれないが、ペイントでの存在感は非常に大きく、豪快なスラムダンクなど見応え満点のプレーで楽しませてくれる。シューティングレンジが広く得点力が高い、ジョンネル・ポリカルピオという身長194cmのフォワードもいる。

2023年1月に就任したばかりのトペックス・ロビンソンHCの下、個々のタレントがお互いの持ち味をうまく引き出しながら伸び伸びとプレーしているのがチームとしての特徴。そのスタイルで実績を作れたことにより、今年に入ってから新たに、ライバルのフィリピン大からルイ・パブロという有力タレントがトランスファーで加わるとのニュースもある。主力の一部は卒業でチームを去るが、その分の戦力補強も順調に進められているようだ。

WUBSで来日する頃にどんなチームになっているかはまだわからない。しかし、フィリピンのバスケットボールがどのような方向性にあるかを感じさせるプレーを期待できる。必見のタレントであるキンバオを含め、間違いなく注目に値するチームだ。

☆フィリピンのバスケットボール

フィリピンは1954年の第2回FIBAワールドカップにおいて、アジア勢初のメダル獲得に成功した国(銅メダル)だ。米軍基地の存在など環境的な影響もあり、バスケットボールは国技と言えるほど高い人気を誇る。

昨夏はFIBAワールドカップ2023の決勝トーナメントのホストを務め、その直後にアジア競技大会で中国を破って金メダルを獲得。国際舞台での存在感も増してきている。それだけでなく、Bリーグでフィリピンの有力スターが活躍し、EASL(東アジアスーパーリーグ)で日本のクラブがフィリピンのクラブと対戦する機会が生まれたことなどにより、フィリピンのバスケットボールは日本のファンにとってもいまや身近な存在だ。

FIBAアジアカップ2025予選のチャイニーズ・タイペイ戦にエントリーしたフィリピン代表の面々。後列左から2番目にキンバオがいるが、カイ・ソット、カール・タマヨ、クリス・ニューサム、ドワイト・ラモスら、日本のバスケットボールファンにも親しみのある顔が並んでいる(写真/©FIBA.AsiaCup2025)

大学スポーツに関しては、デ・ラサール大が加盟しているUAAPとNCAA(National Collegiate Athletic Association)という2つの統括団体が存在している。後者はアメリカの大学スポーツ統括団体と同名だが組織的な関係性はない。両団体はそれぞれでアスリートの強化に取り組んでおり、また加盟チーム同士の交流もある。しかし近年フィリピン代表やBリーグプレーヤーなど有力タレントの多くを輩出しているのは、デ・ラサール大やアテネオ・デ・マニラ大、フィリピン大などどちらかと言えばUAAPの大学が多い。

☆デ・ラサール大とは

フィリピン国内トップクラスのエリート私学の一つとして知られるデ・ラサール大は、学生数約16,000人のカトリック系総合大学だ。総合大学としての現在の地位は1975年からだが、ルーツは1911年にフィリピンに初めて誕生したカトリック系の学校までさかのぼることができる。伝統ある名門大学であり、近年では政府からの支援を得ながら取り組んだフィリピン初のソーラーカー開発など、特に理工学系の研究で注目を浴びる成果を挙げている。

デ・ラサール大はグリーンをスクールカラーとしており、バスケットボール部はグリーン・アーチャーズ(Green Archers=緑色の射手)というニックネームで親しまれている。チームの歴史は長く、1924年のNCAA創設時に加盟チームの一つだった。ただしその後、1986年にUAAPに転籍し、現在に至っている。

デ・ラサール大出身で、Bリーグにやってきたプレーヤーとしては、2022-23シーズンに広島ドラゴンフライズに在籍していたジャスティン・バルタザールという身長206cmのパワーフォワードがいた。バルタザールは短期間の在籍で出場機会も8試合と少なかったが、その後母国に戻ってプロとして活躍している。

広島ドラゴンフライズ在籍当時のジャスティン・バルタザール。デ・ラサール大出身のプレーヤーだ(写真/©B.LEAGUE)


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