THE YELLOW MONKEY、“因縁”の東京ドームで復活の狼煙「ついにこの日が」 5万人が大合唱

THE YELLOW MONKEYの東京ドーム公演が開催された【写真:Masato Yokoyama/Takeshi Yao/Yukitaka Amemiya】

3年ぶりフルステージのパフォーマンスが同バンド史上最多動員数を記録

4人組ロックバンド・THE YELLOW MONKEYが27日、「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 “SHINE ON”」を“因縁”の東京ドームで開催した。およそ3年ぶりとなるフルステージのパフォーマンスに、同バンド史上最多動員数となった5万人の観衆が酔いしれた。(文=中村彰洋)

東京ドームのバックスクリーンに配置されたメインステージ。頭上のモニターには開演時刻の午後6時30分までの秒数がカウントダウンされていた。60秒を切った頃には満員の観衆は総立ち状態でその時を待ちわびた。

カウントダウンのコールとともに、0秒となると会場は暗転。メンバーの登場と同時に大歓声が巻き起こった。吉井和哉は開口一番、「ついにこの日がやってきました」と一言。3年前にコロナ禍で開催された東京ドーム公演を振り返り、「2020年に声が出せなくなったとき、皆さんからたくさんの声を集めてこの東京ドーム、2万人の小規模でやらせてもらいました。そのときの声も今夜ここで一緒に復活させたいと思います」と高らかに宣言した。そして、「今日は遠慮なく、たくさん大きな声で騒ごうぜー!」と呼びかけた。

『バラ色の日々』の前奏が鳴り響くと、5万人の大合唱で幕を開けた。1曲目から観客のボルテージは最高潮。そのままの勢いで、4月3日に配信スタートされた新曲『SHINE ON』へと続けた。

1発目のMCでは、「本当にここまで長かったです。いろいろ言いたいことはたくさんありますけど、今夜はそういうことよりもTHE YELLOW MONKEYのロックンロールを久しぶりにぶちかましたいと思います」と気合い。「そんなにヒット曲はありませんけども、代表曲のオンパレードでいきたいと思います!」と叫ぶと、1992年に発売された1stシングル『Romantist Taste』を披露した。

さらに『Tactics』では、コール&レスポンスでひと盛り上がりすると、会場は静寂に包まれ、ギターの菊地英昭のソロプレイを見守った。ギター1本で奏でるメロディーで観客を魅了する中、そのままの流れで『聖なる海とサンシャイン』へとつなげ、その後も『BURN』『ROCK STAR』と人気曲を続けた。

吉井和哉【写真:Masato Yokoyama/Takeshi Yao/Yukitaka Amemiya】

THE YELLOW MONKEYにとっての東京ドームは、2001年の活動休止前最後の場であり、04年解散時には最後のパフォーマンスを行った舞台で、“聖地”としても知られている。MCで吉井は「2020年ここで東京ドーム2daysほぼソールドアウトしてたのに、その先は言わないけど」とコロナ禍での中止についても触れ、「本当に因縁の東京ドーム」と同地での開催を喜んだ。

さらに、「平均年齢58歳のバンドにもかかわらず」と“自虐”を交えると、ベースの廣瀬洋一は頭に手をあてたり、両手の人差し指でいじける仕草を見せるなどおちゃめな姿。吉井が「HEESEYはね、興奮しすぎて一睡もしてません」と暴露すると、廣瀬は大きな動きで体力が有り余っていることをアピールした。吉井も「いないだろ、こんな61歳」とツッコミを入れるなど、トークでもファンを楽しませた。

今回は古くからサポートメンバーを務めていた三国義貴がキーボードで参加。再結成以来、おなじみとなっている鶴谷崇と共にこの日のライブをサポートしていることも紹介された。

菊地英昭【写真:Masato Yokoyama/Takeshi Yao/Yukitaka Amemiya】

8曲目に披露したのは1996年リリースの『楽園』。さらに同年リリースの人気曲『SPARK』では、吉井が前奏中にステージサイドへ猛ダッシュ。ジャケットを脱ぎ捨てながら、躍動感あふれる姿を見せた。

その後は、菊地英二によるドラムソロがスタート。途中からはベースの廣瀬も加わり、リズム隊による重厚な音色が鳴り響いた。そのままの流れで4月3日に配信されたばかりの新曲『ソナタの暗闇』を披露。背後のビジョンには、同曲の歌詞が散りばめられ、歌ったパートから徐々に塗りつぶされていくさまが印象的だった。

『天道虫』では、大きな音とともに火花も舞い上がり、ステージを華やかに彩った。続く『太陽が燃えている』では、ギターの菊地英昭が演奏しながら、アリーナを歩いて移動。アリーナ後方に配置されたステージでパフォーマンスしてみせた。

ステージが暗転すると、モニターには吉井にまつわる映像が流れた。2023年10月に早期の喉頭がんを公表していた吉井だったが、22年1月に発見された腫瘍のレントゲン写真、がんと発覚して以降に行われた術後の痛々しい首の様子までもが映し出され、観客からはどよめきがあがった。バンドメンバーが吉井の様子について語る映像なども流れ、病名の発表を決断した経緯などが明かされた。術後の発声に苦しむ姿なども流れ、最後には吉井が「死にたくないと思ってたけど、ずっと。不思議とがんになってからその恐怖がなくて」「すごく命とはなにかって考えた数年間」など、“生”への思いが語られた。

映像が終わると同時に流れたのは、『人生の終わり(FOR GRANDMOTHER)』。スポットライトの下で吉井は感情を込めながら、しっとりと歌い上げた。『SUCK OF LIFE』では、吉井が菊地英昭のギターを使いながら2人で演奏する姿も。さらには口元を手で隠しながらまるでキスをするかのような仕草を見せ、黄色い歓声を浴びていた。続く『LOVE LOVE SHOW』では、ベースの廣瀬がアリーナの後方まで移動し、後方のステージで低音を響かせた。

廣瀬洋一【写真:Masato Yokoyama/Takeshi Yao/Yukitaka Amemiya】

本編ラストとなったMCでは、「いろいろありまして、本当に生まれて50年過ぎるといろんなことがあるし、ますます想像しにくい世の中になっていっているような気もしてます。でもこうやってまた、ステージに立てて、皆さんとTHE YELLOW MONKEYのロックンロールを楽しむことができて、今日は本当にありがたく思っています。どうもありがとう」と復活の時をずっと待っていたファンたちへの感謝を述べた。

さらに5月29日に発売される10th Album『Sparkle X』についても触れ、「今までのTHE YELLOW MONKEYの旨味成分はちゃんと残しつつ、新しくみんなで楽しんで作ったアルバムですので、ぜひ発売日を心待ちにお願い致します」とアピールした。

続けて、「人生の7割は予告編で 残りの命を数えた時に本編が始まる。本当にそう思ってこの曲を作りました」と語り、1月1日に配信開始した『ホテルニュートリノ』を歌い上げ、本編は幕を閉じた。

鳴り止まないアンコールを求める拍手の中、再登場したメンバーたち。アコースティックギターを手にした吉井は「東京ですよ~」とあおりながら、『東京ブギウギ』を歌唱。その流れのままに『アバンギャルドで行こうよ』へとつなげた。

『ALRIGHT』では、吉井がステージから降り、アリーナをかっ歩。観客とハイタッチを交わし、さらにはファンのタオルを手に取り、汗を拭いて返すなどのサービス精神も見せた。後方のステージに上がると、「最高のバンドを紹介するぜ」とバンドメンバーを紹介。『悲しきASIAN BOY』のイントロではステージ前に炎の幕が上がり、ボルテージはさらに上昇。終盤では会場中に金テープが舞う中、吉井は仰向けに寝そべりながら歌うなど、万感の表情を浮かべながら全身で至福のひとときを楽しんでいた。

菊地英二【写真:Masato Yokoyama/Takeshi Yao/Yukitaka Amemiya】

ラストMCで吉井は「すげぇアドレナリンが出た」と興奮を伝え、「アルバムできたということはきっと……」とさらなるライブを匂わせた。一方で「ごめんね、まだ完璧な声になってないけど、少しずつちゃんとなっているから、ごめんね」と繰り返し謝罪。「なんの保証も確信もないまま、東京ドームやっちゃって本当に申し訳ないけど、皆さんの歓声があればできると思った」と決断の背景を吐露した。

そして、「これからもTHE YELLOW MONKEYと一緒に人生を共にしてください。本当に今日はどうもありがとう」と感謝を伝え、代表曲『JAM』でアンコールを終えた。

ここで終わるかと思いきや、ステージ上のモニターには吉井が歌う映像が流れ始めた。「出発の日にぴったりだ あなたとわたしの復活の日にぴったりだ」などの“復活と再始動”をテーマにした楽曲を歌い終えると、再びメンバーがステージ上に登場。吉井が「我がTHE YELLOW MONKEYは永久に不滅です!」と東京ドームにちなんだ言葉を高らかに叫び、ライブ定番曲『Welcome to my doghouse』で正真正銘のラストを飾った。

歌い終わるとドラムの菊地英二がステージ両サイドまで駆け下りて、最後のあいさつ。さらに観客と一緒に記念撮影を行い、吉井による「治ったら2daysやるぞー!」の約束とともに4人はステージを降りた。

最後は4人で肩を組んでファンへあいさつを行った【写真:Masato Yokoyama/Takeshi Yao/Yukitaka Amemiya】

実に2時間50分にもわたった今回の東京ドーム公演。再集結の翌17年に2daysで開催された「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017」はシングル曲やライブ定番曲を惜しみなく披露した“べストセレクション”となっていたが、今回も「SUPER BIG EGG」というライブタイトルにふさわしいセットリストとなった。

吉井の歌声は完璧には戻ってはいなかったが、観客が大合唱や手拍子で後押しするといった5万人の一体感が存分に伝わる公演となった。ライブが盛り上がったのはもちろんのことながら、5万人いることすらを忘れさせてしまうようなアットホームな温かな空気感。THE YELLOW MONKEYの再起を示す一夜にふさわしい、最高に良いライブとなった。

5月29日には、10枚目となるアルバム『Sparkle X』のリリースを控えている。ライブ終演後には、新たなアーティスト写真も公開となるなど、THE YELLOW MONKEYの新たな1ページがめくられた。

THE YELLOW MONKEYの最新のアーティスト写真

◯「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 “SHINE ON”」/2024年4月27日@東京ドーム
1.バラ色の日々(19th Single/8th Album『8』収録)
2.SHINE ON(10th Album『Sparkle X』収録)
3.Romantist Taste(1st Single/1st Album『THE NIGHT SNAILS AND PLASTIC BOOGIE』収録)
4.Tactics(9th Single/5th Album『FOUR SEASONS』収録)
5.聖なる海とサンシャイン(20th Single/8th Album『8』収録)
6.BURN(13th Single/7th Album『PUNCH DRUNKARD』収録)
7.ROCK STAR(3rd Album『jaguar hard pain 1944-1994』収録)
8.楽園(11th Single/6th Album『SICKS』収録)
9.SPARK(10th Single)
10.ソナタの暗闇(10th Album『Sparkle X』収録)
11.天道虫(Digital Single/9th Album『9999』収録)
12.太陽が燃えている(8th Single/5th Album『FOUR SEASONS』収録)
13.人生の終わり(FOR GRANDMOTHER)(6th Album『SICKS』収録)
14.SUCK OF LIFE(2nd Album『EXPERIENCE MOVIE(未公開のエクスペリエンス・ムービー)』収録)
15.LOVE LOVE SHOW(12th Single/7th Album『PUNCH DRUNKARD』収録)
16.ホテルニュートリノ(10th Album『Sparkle X』収録)
~EN~
17.アバンギャルドで行こうよ(2nd Single/2nd Album『EXPERIENCE MOVIE(未公開のエクスペリエンス・ムービー)』収録)
18.ALRIGHT(25th Single『砂の塔』/9thAlbum『9999』収録)
19.悲しきASIAN BOY(3rd Single/3rd Album『jaguar hard pain 1944-1994』収録)
20.JAM(9th Single)
~W-EN~
21.Welcome to my doghouse(INDIES Album『Bunched Birth』収録)中村彰洋

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