ご当地ラーメンの「袋麺」脚光のなぜ...識者の見解は サンヨー食品「旅麺」「ご当地熱愛麺」話題に

袋入りインスタントラーメン業界では、新製品を1000個開発しても、翌年には3つ程度しか生き残れない「千みつ」という言葉がある。それほど新商品開発が厳しいという。

そんななか、「サッポロ一番」を展開するサンヨー食品(本社・東京)が「旅麺」(2013年発売)と「ご当地熱愛麺」(2022年発売)をいずれも2024年にリニューアルするなど、袋麺タイプの「ご当地ラーメン」への注目度が高まりつつある。それは、なぜか。メーカーや識者を取材した。

「旅麺」「ご当地熱愛麺」ともに好調、とメーカー

サンヨー食品は2024年、それまでは「カップ麺」で展開していた「旅麺」シリーズに新たに「袋麺」を展開して、「喜多方醤油」、「札幌味噌」、「博多豚骨」の3商品を発売。「ご当地熱愛麺」では、より手に取りやすい商品形態とし、5個パックから3個パックに変更した。

「旅麺」と「ご当地熱愛麺」シリーズについて、メーカーに話を聞いた。サンヨー食品の広報宣伝部によると、「『ご当地熱愛麺』の袋めんの出荷量(生産量)は昨年と比較して、緩やかに増加しております」と話す。また、「旅麺」袋めんについては、2024年3月から札幌・喜多方・博多の3タイプも発売し、現在好評なのだという。

サンヨー食品の広報宣伝部によると、注目されている要因について、インバウンド需要の回復やご当地ラーメンの屋外イベントも再開、テレビなどで各地のラーメンに接する機会が増えていること、SNSの普及などが影響しているのではないかとみる。

「地元の人しか知らないご当地ラーメンの情報を簡単に知る機会を得た結果、食べてみたいという興味関心が多くの人に芽生えたことなどがあると思います」

ご当地ラーメンといえば、2000年代ごろに脚光を浴びた。さらに当時から、インスタント袋麺と相性が良かった。

たとえば、北海道旭川市に本社をおく藤原製麺では旭川ラーメンの「旭川らぅめん青葉しょうゆ味」を2008年9月から、「旭川梅光軒三方麺醤油味」を2007年9月から、「らーめんや天金旭川醤油」をセブンイレブン専売で2006年9月から、袋麺の商品として販売し、全国へと展開された。

そんななか、袋麺タイプのご当地ラーメンはいま、どれほど注目されているのか。インスタントラーメン専門店「やかん亭」を経営し、インスタント袋麺の動向に詳しい大和イチロウ氏に話を聞いた。

ご当地の名前にインパクト...手に取りやすい

大和氏は最近、袋麺タイプのご当地ラーメンはブームになっているとみる。その背景に、新型コロナウイルス感染症の影響を指摘した。

「新型コロナ禍において、外出がままならないことで、ご当地グルメにスポットが当たりました。通販はもちろんのこと、コンビニや量販店もご当地グルメを積極的に商品化する流れができあがりました」

ちなみに、5類移行後も、物価高や宿泊施設の高騰などで以前ほどは気軽に旅行がしにくいことも重なり、その結果、自宅で安価に楽しめる「ご当地グルメ」は人気があるという。

また、近年では、インスタント袋麺の市場は、ミニスーパーやドラッグストアでの競争が主戦場になっており、

「見たこともない、聞いたこともない新商品よりも、ご当地の名前が大きく書かれたインスタント袋麺はよく手に取られる傾向にある」

と説明する。

今後のインスタント袋麺について、大和氏は「年間1000ほどの新商品が出る業界において、残れるのはほぼ奇跡とまで言われています」と話す。なぜなら、過去にはCMや店頭プロモーションなどでマーケットコントロールも可能な部分があったが、いまではその効果は薄くなり「新製品を考える開発現場が大変苦労しているようです」と語った。

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