【俺の楽器・私の愛機】1605「YAMAHA SGは至高」

【YAMAHA SG-1000】(石川県 りゅう 30代)

このギターとの出会いはとあるリサイクルショップにて。そのリサイクルショップは倉庫のような建物の中に溢れ返るように売り物が積んであるといったラフなスタイルで、見るからに掘り出し物が出てきそうな古き良き風情がありました。

2015年頃のことだったでしょうか。当時転職して少し経ち、新しい職場にも慣れて来た頃、給料も出たということで何か買おうとそのリサイクルショップへ足を運びました。そこに他の売り物とは明らかに雰囲気が違う、真新しいハードケースが置かれていました。店主に了承していただき、ハードケースを開けてみると、そこにはハードケースの真新しさを凌ぐほどの眩い輝きを放ったギターが。当然一般的なギターは発光するなんてことはないですが、少なくとも当時の私の目にはそのギターが輝いて見えました。

色はチェリーサンバースト。調べてみるとYAMAHAのSG-1000と判明。もう一度店主に了承していただき、音出ししてみることに。適当に置いてあったギターアンプから音を出し、とりあえず音が出ることは確認。しかしこの音が良いか悪いかは分かりませんでした。いえ、音よりもその見た目があまりに格好良く見ました。完全なる一目惚れです。

実はYAMAHA SGの存在は知っており、ネットで写真を見る度に、失礼ながら「ダサい」と思っておりました。しかし実物を見るとその思いは一気に消し飛び、むしろ「世界一格好良いギターだ!」とすら思えました。その時点で即購入を決定。店主いわく、「このギターは所有者から一時的に預かっているもので、とりあえずここに置いてある。買い取るとしたらウン万円かな」とのこと。私は「ぜひこのギターを買わせてください」と念を押し、お店を立ち去りました。

それから何週間か後に再びお店へ伺うと、例のギターが無いことに気付きました。店主に話を聞くと、「買取金額で折り合いがつかなかったから持って帰ってもらった」とのこと。なんてこった。機を逃した。仕方ないので店主に「またSG-1000が入荷したら教えてください」と伝えて去りました。

もちろん諦めなどせず、自分のほうでもサイトを巡るなど予算内で買える個体を探しました。そしてあのお店で見たものと同じチェリーサンバーストのSG-1000をオークションサイトで発見、すぐさま入札。一日一日と経ち、数時間が経過し、そして一分一分とオークションの終了時間を待つ。その間にも入札が入る。

競り合いに入る。現在の私の予算だとこれぐらいだ、と目安を付け入札を繰り返す。しかし相手も全く引かず競り合いは続く。そして価格が高騰する。もう予算がオーバーしてもいいと入札を続ける。結果。

「……このギター、私に似合うのか? 特に色。チェリーサンバーストって派手過ぎじゃないか? 某軽音楽アニメみたいな色してるし……」という思いがよぎり、入札を見送りました。入札を続けて急に冷静になったんですね。別に某軽音楽アニメは嫌いではないです。

1か月後、予算を増やして再びオークションサイト。調べてみるとSG-1000には色が何種類かあるらしく、その中で最も私に似合う、あるいは無難な色であろう「黒」のSGに狙いを澄まして探しました。オークションサイトで丁度良く黒のSGが出品され、潤沢に用意した予算もあり、順当に落札。人生初の「プロ仕様のギター」を手にすることが出来ました。

手元に届いてきて初めて、YAMAHAのギターの「白濁」を知りました。出品者が説明文に書いていた「白濁」ってこういうことか~と思いながら、意外にも落胆することはなく、さながらオリンピックホワイトのギターでいう「日焼けという名の勲章」という風に捉えました。というかYAMAHA SGのデザインが良すぎて白濁なんて気にならなかったのかもしれません。

ようやくこのギターの本当の音を知れるということでアンプに繋ぎ、鳴らしてみる。ハイゲインながらも高音が際立った、リフに適した音だと感じました。弾いていて非常に気持ちが良い音と感じ、さすがプロ仕様のギターと唸っていました。演奏性の面も、裏面にコンター加工があり弾きやすい点や、非常にボディバランスが良い点が好感触でした。また私は手が大きいので指板の大きさも気にならず、普通に弾きやすいと感じました。世間で時折言われているような「弾き辛い」という評価は私には当てはまりませんでした。

そうして無事念願のSG-1000を手にしたわけですが、忘れてはならないことがあります。あのリサイクルショップの店主に伝えるべきことです。週末にお店へ赴き、「もうギターは買ってしまったので連絡しなくても大丈夫です。ありがとうございました」と伝えました。この度は本当にお世話になりました。

その約一年後、電装系の修理のついでに改造を施そうと「Railhammer Anvil」というピックアップを導入。しかしここで気付く。

「YAMAHA SGのパーツって独自仕様なのか……」

よく見るとピックアップのサイズが他のハムバッカーに比べて大きく、それに伴いエスカッションも大きい。仕方ないので汎用のエスカッションを無理矢理取り付けてAnvilを搭載しました。弾いてみると、バランスが良く非常に心地良いハイゲインサウンドが飛び出してきました。これが人生最高のギターの音だと未だに思っています。代わりにバイサウンド(コイルタップ)はできなくなりました。

そうしてSG-1000と付き合うこと約5年。ある懸念が頭を過ります。そう、改造の際に苦労した「パーツが独自仕様」という問題です。ギターは壊れない訳がないですし、パーツ交換も有り得る。その際に独自仕様の物しか使えないとしたら純正の部品が必要。そしてそれすら生産終了も有り得る。現に2010年にSG-1000は生産終了しているのでその可能性は高い。現行のYAMAHA SGに乗り換えることも考えましたが、コンター加工が無いという点や価格面が引っ掛かり、見送りました。

本来ならばここでSG-1000と「一生付き合う」と宣言できれば格好良いのですが、私はそう宣言できず、2020年に別れる決意をしました。搭載したAnvilも外し、元に戻してまた別の中古屋へ持っていくことに。そして最初にSG-1000と出会ったあの倉庫のようなリサイクルショップも、いつの間にか閉店していました。私とSGを出会わせていただき、ありがとうございました。

別れもあれば出会いもある。現在はB.C.RichのEagleにAnvilを搭載し弾いています。しかしあのYAMAHA SGにあったハイゲインの気持ち良さは少しばかり劣る気がします。Eagleの方は万能でなおかつ24フレットあるのでそれがお気に入りですが。このEagleはボディ重量もあり、重量のあるギターとAnvilは相性が良いと思っていますが、YAMAHA SGのほうがもっと重かったので、より好みな音で鳴っていたのかと思います。「Eagleは至高」と言いましたが、YAMAHA SGもまた「至高」でした。

不思議ともうYAMAHA SGに未練は全くありません。今ではもうEagleに馴染み、共に人生を歩んでいます。まあ、そんなものではないでしょうか。

◆ ◆ ◆

いいですね。不思議な出会いと別れ。一時期に訪れる流行病のように熱中する気持ちもわかりますし、何がきっかけなのか、ウソのようにスーッと熱が冷めていく感覚も分かる気がします。いわゆるそうやって階段をひとつひとつ登っていくのでしょうね。階段途中の踊り場が広ければ、またいろんな出会いがあるのでしょう。汎用性のない独自設計は改造やメンテの障壁になったりするわけですが、自らが定めるサウンド・デザインに対し意図しない変更をできるだけ避けたいというメーカー側の思惑もあるのかもしれないですね。難しいところです。(BARKS 烏丸哲也)

★皆さんの楽器を紹介させてください

「俺の楽器・私の愛機」コーナーでは、皆さんご自慢の楽器を募集しています。BARKS楽器人編集部までガンガンお寄せください。編集部のコメントとともにご紹介させていただきますので、以下の要素をお待ちしております。

(1)投稿タイトル
(例)必死にバイトしてやっと買った憧れのジャガー
(例)絵を書いたら世界一かわいくなったカリンバ
(2)楽器名(ブランド・モデル名)
(例)トラヴィス・ビーン TB-1000
(例)自作タンバリン 手作り3号
(3)お名前 所在 年齢
(例)練習嫌いさん 静岡県 21歳
(例)山田太郎さん 北区赤羽市 X歳
(4)説明・自慢トーク
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