長谷川博己『アンチヒーロー』の『VIVANT』超えなるか カギを握る「見せない演出のさじ加減」と「正義の担保」

長谷川博己

4月28日、長谷川博己(47)主演の日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系/毎週よる9時)の第3話が放送される。

21日に放送された第2話は、平均世帯視聴率が初回から1.3ポイント増の12.8%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と、昨年7月期に同枠で放送された大ヒット作『VIVANT』第2話の11.9%を抜いて絶好調。このまま『VIVANT』超えヒットを期待されるがーー。

同ドラマは、“アンチ”な弁護士・明墨正樹(あきずみ・まさき、長谷川)が、たとえ犯罪者である証拠が100%揃っていても、無罪を勝ち取る姿を描く逆転パラドックスエンターテインメント。同僚の弁護士を北村匠海(26)と堀田真由(26)、敵対する検察官を木村佳乃(48)、検事正を野村萬斎(58)が演じる。

第2話の内容は以下。町工場の社長殺害事件の裁判で、検察が証拠として提出したハンマーから、緋山(岩田剛典/35)のDNAが検出され、弁護側は不利に。しかし、明墨は、姫野検事(馬場徹/35)が法医学教授・中島(谷田歩/48)と裏でつながっていて、被害者の爪から検出された被告人のDNA鑑定を改ざんしていると仮説を立てる。

そこで、紫ノ宮(堀田)らは大学を訪れ、中島教授の助手をしている助教・水卜(内村遥/38)と接触。また、弁護士としての正義に揺れる赤峰(北村)は、緋山に会いに拘置所へ。赤峰が本当にやっていないのかと問いかけ、緋山が「俺は」と言いかけたところで、明墨が入ってきて、答えはうやむやになってしまい……という展開。

明墨らによって裁判で無罪になった緋山が、本当は罪を犯していたことが匂わされる衝撃の展開で終わったため、X(旧ツイッター)上では、俳優陣への称賛の声以外に、《ラスト10分が衝撃すぎ!検察側の不正を暴く為に殺人犯を野放しにしたの?》など、とまどいの声も少なくない。

■見せないことのメリット・デメリット

「本作は“逆転パラドックス”とうたっているのですが、明墨(長谷川)は正義なのか悪なのか、あえてスタンスが明らかにされていません。これはほかの登場人物も同様で、緋山(岩田)の事件でも、彼のバックボーンや犯行現場を意図的に見せていないんです。視聴者の間でとまどいの声があがるのも当然かもしれません」(ドラマライター/ヤマカワ)

X上では、《もし緋山の回想シーンなんかがあれば、明確に判断できたと思う。だけど、そういった視聴者に親切な「分かりやすさ」はこのドラマでは省いているような気がする》という声がある。たしかに、見せないことによって、視聴者に想像の余地を持たせているからこそ、ここまで考察が盛り上がっているのだろう。

「巧妙な演出ですが、ヤリすぎるとわかりにくさにつながるので、メリット・デメリットはあるでしょう。どこかで明墨は正義のために動いていることをはっきりさせないと、視聴者が離れる可能性があります。もちろん、どこかで明墨のスタンスは明らかになるのでしょうが、このまま引っ張るようだと……『VIVANT』超えは難しいかもしれません」(前同)

日曜の夜9時という時間帯もあり、日曜劇場のファンは保守的な傾向にある。ずっとあいまいなままでは、視聴者に嫌われる可能性がありそうだ。

ただ、本作のプロデューサー・飯田和孝氏は自身のXアカウントで、脚本について、2話はまだキャラクターの紹介のような序章で、3話からが本作の真骨頂になっていくとポストしている。絶妙な脚本と演出、俳優陣の好演で懸念を吹き飛ばしてくれるのか、今後の展開に期待したい。

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