【NHKマイルC】マイルで再評価、ジャンタルマンタルが中心 穴はトライアル2、3着からチャンネルトンネル

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2歳マイルGⅠ馬そろい踏み

タイキフォーチュンが勝った第1回から今年で29回目を数えるNHKマイルCだが、前走桜花賞2着馬が参戦するのは2頭目となる。20年はレシステンシアが2着に敗れた。アスコリピチェーノが勝てば史上初になる。ただ、同じマイルで争われるとあって、前走桜花賞は16年メジャーエンブレムなど4勝。桜花賞組の勝利自体はそんなに珍しくはない。

皐月賞3着馬はジャンタルマンタルで3頭目。過去2頭はいずれも3着に敗れた。皐月賞掲示板組は【2-1-2-3】。28回でたった8頭しかいない。ダービーの出走権をつかみながら、わざわざマイルを選択するのは勇断といっていい。

過去、皐月賞3着から駒を進めたのは、次走ダービーを勝つタニノギムレットと快足でならしたメイショウボーラー。ジャンタルマンタルは立ち位置としてはどちらだろうか。現代の常識で考えれば変則二冠ではなく、間違いなく距離適性を考慮しての参戦だ。であればここはマイルGⅠ馬として負けられない。アスコリピチェーノやマイル重賞好走組を破り、マイラーとして未来の可能性を広げないといけない。あえてここを選択したからには、陣営にはそんな覚悟があるはずだ。ジャンタルマンタルはそれだけのスケール感がある。データは全28回ではなく、過去10年分を使用する。

1番人気【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%、2番人気【3-2-1-4】勝率30.0%、複勝率60.0%など3番人気以内は6勝。4番人気以下4勝のうち9番人気が2勝と、上位人気の期待値を踏まえると、どちらかといえば波乱傾向にある。東京5週連続GⅠのうち、もっとも馬券妙味があるのは初っ端のここではないか。

10番人気以下も【0-3-3-83】複勝率6.7%。それも14、17、18番人気などNHKマイルCの大穴は半端じゃない。思い切り振り回せる貴重なGⅠでもある。

マイルで再評価、ジャンタルマンタル

大穴も含め、好走馬にはどんな傾向があるのか。前哨戦を振り返りつつ、今年の好走候補を導き出していこう。

前走GⅠ【4-3-1-24】勝率12.5%、複勝率25.0%のうち、桜花賞は【2-2-0-13】勝率11.8%、複勝率23.5%。その5着以内【2-1-0-3】、6着以下【0-1-0-10】と、やはり結果を残した馬が強い。

アスコリピチェーノは桜花賞当日の馬体重+10キロ。4コーナーから勝負所にかけての反応の鈍さが敗因であり、直行がアダとなってしまった。栗東入厩など打てる手は打ってきただけに陣営の落胆も大きい。だからこそ、1度使われた今回は前進しかない。カギは東京との相性だろう。父ダイワメジャーといえば16年桜花賞4着から勝ったメジャーエンブレムがいる。2019年以降の東京芝1600mで、前走差してきたダイワメジャー産駒は【3-2-3-36】勝率6.8%、複勝率18.2%。理想はメジャーエンブレムのようなスピード型で、末脚勝負では少々分が悪い。これをどう考えるかだ。

前走皐月賞【2-1-1-9】勝率15.4%、複勝率30.8%は4~9着【2-1-0-0】。直近10年で3着以内からの出走はいない。今年の皐月賞は1:57.1のレコード決着。全体的に緩急がなく、マイル戦に近い2000m戦だった。そんな流れのなか逃げるメイショウタバルを早々につかまえ、直線先頭の場面をつくったジャンタルマンタルは、急坂で脚があがってしまったがマイラーとしての素養を感じさせた。NHKマイルC参戦も納得。持ち前の持続力で押し切るシーンもあっていい。

残る前哨戦組の内訳をみると、ニュージーランドT【2-2-2-41】勝率4.3%、複勝率12.8%、アーリントンC【2-0-5-23】勝率6.7%、複勝率23.3%はチェックしないといけない。一時期、短縮ローテの前走毎日杯が強かった時代もあるが、最近は【0-2-0-6】複勝率25.0%。2着ノーブルロジャーはジャンタルマンタルと同じパレスマリス産駒。前走は道悪を踏まえ先行策に出たが、シンザン記念のように末脚もしっかりしたタイプ。当然、候補に残したいところだ。

ニュージーランドTとアーリントンCを合わせて着順別成績を出すと1着が【2-0-1-14】勝率11.8%、複勝率17.6%だが、ニュージーランドT1着【0-0-0-10】、アーリントンC1着【2-0-1-4】なので気をつけよう。やはりワンターンの外回りマイル戦を勝ち抜いた脚力は上位にとれる。エコロブルームではなく、ディスペランツァを評価しよう。

トライアル組でおいしいのは昨年9番人気1着シャンパンカラー、8番人気2着ウンブライルのようなトライアル2、3着馬。クラシックからの転戦組やトライアル勝ち馬に人気を譲り、盲点になったところが狙い目。ボンドガール、ユキノロイヤル、アレンジャー、チャンネルトンネルが候補だ。

このなかで東京マイルに向きそうなのは、実績としてはボンドガールだろう。可能性という意味ではチャンネルトンネルにかけたい。スプリングS4着後に福永祐一厩舎に転厩し、初戦のアーリントンCで3着。プロセスを考えれば上々の結果といっていい。上がり600m32.5はディスペランツァと0秒1しか変わらない。冬の東京では条件戦4着止まりだったが、重賞を2度経験し変わり身があってもいい。

川田騎手のジャンタルマンタルと福永祐一厩舎のチャンネルトンネルの競り合い。そんな最後の攻防をみてみたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。



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