「最後の覚悟」5度目の挑戦でプロ合格 頑張り屋・天本ハルカの“強さ”

支えてくれた母・結子さん(左)と優勝トロフィを掲げた(撮影/奥田泰也)

◇国内女子◇パナソニックオープンレディース 最終日(28日)◇浜野GC(千葉)◇6669yd(パー72)◇晴れ(観衆3543人)

初優勝のかかる初の最終日最終組は、佐久間朱莉、尾関彩美悠と同組だった。2020年度、21年度のトップ合格という“エリート”と同じ首位スタート。天本ハルカは「負けたくない」と1番ティに向かった。

3番で1.5mを沈めてバーディ先行。8番で7mを決めると怒とうの5連続バーディで、頭一つ抜け出した。「8番で流れに乗れて、10番からは攻める気持ちも強くなった」。13番でこの日唯一のボギーをたたいたが、17番で取り返す。2打リードで迎えた最終18番(パー3)はバンカーから2.5mに寄せて、ねじ込んだ。「優勝の実感はまだ湧いてない。ふわふわしていますが、とにかく一言。うれしいです」。無我夢中のガッツポーズが飛び出した。

最終日は「66」。安定したショットでスコアを伸ばした(撮影/奥田泰也)

小学校1年でゴルフと出合った。祖父の家でテレビに映る宮里藍さんに夢中になった。母・結子さんに「何か習い事をしたら?」と言われて、自宅に近い練習場でスクールの入会希望を出したら、断られた。「低学年は危険だから」と言われて「真剣にやるので、入れてください」と訴え、保護者同伴を条件に無理やり入れてもらった。

最初の約2年間は一度もコースに行かず、ひたすら練習場で打ち込み「競技に初めて出てからは夢中になりました」という。中学の頃は練習先のコースに通信簿を提出し、成績維持を条件にラウンドさせてもらっていた。

プロテスト同期トップ合格の佐久間朱莉と同組だった(撮影/奥田泰也)

2021年度にプロテスト合格するまで5度かかった。結子さんや、高校生の時から師事する伊澤利光にも支えられて「3回目までは最終(ステージ)まで行けなくて、『本当に通るのかな』と。自信も失いかけたけど、『やっぱりプロになりたい。最後だ』という覚悟でやりきった」という。

4度の失敗は財産だ。「プロになりたいのは自分で決めたこと。母には『いつでもやめていいんだよ』と言われていたけど、『最後まで挑戦させてほしい。サポートお願いします』と言って受験を続けました。テストの経験は生きていると思う。あそこで鍛えられた」

黄金世代で15人目の優勝者(撮影/奥田泰也)

同い年の“黄金世代”の活躍を横目に「自分は自分」と思い、世代15人目の優勝者になった。昨季メルセデスランキング43位となり、初シードで臨むシーズンだ。「優勝して母のうれしがる顔を見られてホッとしたし、この優勝をきっかけに、ちょっとずつ恩返ししていけたら」。表彰式後にトロフィを結子さんと掲げたのは、最初の一歩と思っている。(千葉県市原市/内山孝志朗)

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