「マウンティングを制する者は、人生を制する」一流エリートが実践するマウント攻略法とは

上昇志向が強いオトナのために、東カレ編集部が厳選した“ワンランク上の自分になれるための本”を紹介します。

今回、紹介するのは、『人生が整うマウンティングマウンティング大全』マウンティングポリス著(技術評論社)

あなたは、SNSで繰り広げられるマウンティング合戦に疲弊してませんか?

実は、一流エリートほど、マウンティングをビジネスに利用しています。マウンティングする人の心理を攻略して、上手に利用してみましょう。

▶前回:21世紀の英才教育とは?Google社も重要視する、AI時代を生き抜く子どもの脳の育て方

▼INDEX
1. マウンティングは、現代社会を生き抜くうえでの必須の教養

2. SNS上で繰り広げられるマウンティング合戦

3. 一流のエリートが駆使する「ステルスマウンティング」

4. 「マウントする」ではなく「マウントさせてあげる」超一流の処世術

5. 本書のココがすごい!

1. マウンティングは、現代社会を生き抜くうえでの必須の教養

『申し訳ありません。その日はあいにくのニューヨーク出張でして、同窓会に参加することができません』

『ピーター・ルーガー、NYに住んでいた頃によく行きました。ニューヨークで食べる、いつもの味が懐かしいなぁ』

これは、「グローバルマウント」の一例だ。「ニューヨーク出張」や「ニューヨークにおける自身の豊富な食体験」を挙げ、自身のグローバルな活躍ぶりを周囲に見せつけるマウンティング。

海外留学や海外在住歴といった欧米の都市が、グローバルの材料として用いられることが多い。その背景には、日本人特有の欧米コンプレックスがある。

中でも世界の経済と流行の中心地であるニューヨークは特別な存在であるため、ニューヨークを題材にしたマウンティングが、我が国では日々盛んに繰り広げられている。

SNSの発達で、私たちはほかの人がどんな人生を送っているのかをリアルタイムで知ることができるようになった。

しかし、弊害も生まれている。自身の充実した生活をSNS上でアピールする「マウンティング合戦」が絶え間なく繰り広げられ、マウンティングによって精神を疲弊させる「マウンティング疲れ」が増加した結果、深刻な社会問題となりつつある。

自分らしく満ち足りた人生を送るうえで、不毛なマウンティング競争は、できるかぎり回避したい。

一方で、人間の行動の大半はマウンティング欲求によって支配されており、マウンティングから完全に逃れることはほとんど不可能だ。

だとしたら「マウンティングは現代社会を生き抜くうえでの必須の教養である」と肯定的にとらえ、マウンティングを人生を切り開くためのツール、と考えるほうが得策なのではないか。

本書では「マウンティング地獄」から抜け出し、逆にマウンティングリテラシーを高め、マウンティングを適切に活用する方法をお伝えする。

2. SNS上で繰り広げられるマウンティング合戦

学歴マウント

『もともと音大志望でしたが、親に言われて仕方なく東大を受験することにしたんです』

『ハーバードかイェールに行くつもりだったのですが、親の介護のこともあったので、仕方なく東大進学を選びました』

上記のように、自分が高学歴であることを自慢したり、反対に相手の学歴が低いことをけなしたりする行為を「学歴マウント」と呼ぶ。

最初の例は、東大に合格する能力を持っているだけでなく、芸術などの分野においても優れた才能を持っていることをアピールしている。

次の例は、海外の名門大学への進学が実力的に可能であったことを示し、自分にとって東大は唯一の選択肢ではなかったことを強調している。

東大受験生の中でも最上位層の学生にとっては、合格すること自体はあたりまえであり、「いかにたいした対策もせずに合格したか」を示すことが重要となる場合がある。

「私は学歴を気にしない」「学歴主義は好きではない」と強調する人がいるが、そういう人ほど実は学歴を気にしていて、自分の子どもの学歴にこだわる傾向があったり、当の本人もかなりの高学歴だったりする。

東大出身の起業家がメディアのインタビューなどで「学生時代はバンド活動に明け暮れた」「受験勉強は基本的にしたことがない。そもそも高3の秋までE判定だった」と述べたがることにも、同様の背景があるのではないかと思われる。

教養マウント

教養水準の高さを示すことで、「いかに自分が知的な人物か」をアピールする行為を「教養マウント」と呼ぶ。

教養マウントの材料としては、芸術、文学、音楽、美術、哲学などが用いられることが多い。

例えば、ワイン愛好家マウントはこちら。

『この生産者さん、とても気さくな方ですよね。シャンパーニュ訪問時には本当にお世話になりました』

『◯◯地方の◯◯年のものは、独特の風味があって優秀ですね。以前に試したワイナリーのものに似ている気がします』

最初の例は、フランスなどのワイン生産者との交流をさりげなく披露することで、ほかのワイン愛好家との差別化を図っている。

また、自宅のワインセラーの写真を見せたり、稀少なワインについて話すことでワイン通な自分の姿を周囲に対して強調する人もいる。

虎の威を借るマウント

権威性の高い存在との関係性を示すことによって、自身の価値をアピールする行為を「虎の威を借るマウント」と呼ぶ。

権威ある組織や団体に所属したり近い関係にあることをアピールすることによって、自分自身が世間から高く評価される人物であることを示そうとする。

その1つが「ゴールドマンマウント」だ。

『ゴールドマン・サックス時代の上司が教えてくれたのは、徹底したプロフェッショナル意識と顧客本位の姿勢でした』

『彼氏がゴールドマン・サックスで働いているんだけど、毎日夜遅くまで働いていて、なかなか会えないんだよね』

世界屈指の投資銀行として知られるゴールドマン・サックス出身であることをさりげなく示すことで、自身の優秀さをアピールするマウント。

あからさまにゴールドマン・サックス出身であることを自慢するのではなく、「GSのジュニア時代は、働きすぎて体が弱るとすぐに胃腸炎になっていました」などと話の流れの中で自然に前職の話題になるように仕向けることがポイント。

また、彼氏がゴールドマンで働いていると自慢げに語る女子も少なくない。

3. 一流のエリートが駆使する「ステルスマウンティング」

これまで紹介した通常のマウンティングは、自身の力や地位を誇示するためにおこなわれることが多く、だれもがその背景にある意図を容易に理解できるものだ。

一方、一見するとそれがマウンティングであるとわかりづらいのが「ステルスマウンティング」だ。

ステルスマウンティングは、ビジネスパーソンの中でも特にエリート層によって用いられる手法である。

ここでは、エリートが活用するステルスマウンティングをいくつかのパターンに分類したうえで、特に押さえるべき事例を解説していく。(本書では5つ紹介されているが、そのうち2つを取り上げる)

自虐マウンティング

自虐マウンティングとは、自分を卑下する言動を通じて、相手に対する優位性をアピールしようとするコミュニケーション手法のこと。

一見すると、自虐的な態度を取っているように見えるが、実際にはそれを通じて自身のほうが立場的に上であることを示そうとすることが特徴だ。

『年収1億円稼いでも、ほとんど税金で召し上げられるわけで、国のためにボランティアで働かされているようなもんだよ。もちろん、海外移住を考えたことは何度もあるけど、自分は日本が好きだし、この国の未来に貢献したい気持ちも強いからね』

この場合「国のためにボランティアで働かされている」と自虐しながら、自分の年収の高さをさりげなく見せつけることに成功している。

感謝マウンティング

感謝マウンティングとは、相手に感謝している素振りを見せつつ、自身の優位性をさりげなく見せつけるコミュニケーション手法のこと。

『本年は、結婚・出産・転職とさまざまなイベントがありましたが、すべてトラブルなく進めることができました。支えてくださったみなさまのおかげです。あらためて感謝申し上げます』

年末年始のSNS投稿でよく見られる女性特有のマウント。周囲の人々への感謝を述べながら、女性にとって重要とされるイベントをやり遂げたことを示し、自身の女性としてのある種の優勢をアピールしている。

4. 「マウントする」ではなく「マウントさせてあげる」超一流の処世術

対人コミュニケーションを図るうえで、「ステルスマウンティング」はあらゆるビジネスパーソンにとって強力な武器となりうるスキルである。

一方で、ビジネスシーンにおいて良好な人間関係を構築するうえでは、より重要度の高いスキルがある。それは、「マウントさせてあげて、相手のメンツを立てることで、自分の味方になってもらう」方法である。

「マウントさせてあげる」ことによって、十分な敬意を示すことができれば、相手は自分に対してポジティブな印象を抱いてくれるようになる。

人間という生き物は、自分に好意を示してくれる人や自分という存在を丁寧に扱ってくれる人に対しては、攻撃しづらいものなのだ。

では、適切な形で「マウントさせてあげる」ためには、具体的にどのようなやり方が考えられるのだろうか。最も効果的に思われる方法の1つは、発言の冒頭に適切な「マウンティング枕詞」を加えることだ。

(本書では、おすすめのマウンティング枕詞を「共感型」「尊敬型」「謙虚型」に分類して紹介しているが、ここでは「共感型」と「尊敬型」について取り上げる)

共感型:相手の意見やアイデアに同意をする態度を示す

①まさに◯◯さんの仰るとおりでして

ミーティングの際に相手の発言に対して、「まさに◯◯さんの仰るとおりで」と前置きしてから持論を述べる方法。

「自分の発言に同意を示しているこの人は自分の味方に違いない」と相手が認識(誤認)してくれるため、議論をスムーズに進めやすくなる。

前置きで相手に対してマウントポジションを提供することが、このテクニックの本質であり、その後に続く内容についてはある意味どうでもよく、特に気にする必要がないという点で非常に便利な方法である。

②その点については私もまったく同感です

「その点については私もまったく同感です」と前置きしてから持論を述べることで、議論をスムーズに進めやすくする方法である。

冒頭に「まさにまさに」といった言葉を付け加えると威力が増す場合がある。

③仰ることは論点として極めて重要だと考えております

会議でトンチンカンな意見を述べてきた上司をスルーしつつ、議論を前に進める際に使える前置きフレーズ。

「論点として極めて重要である」と言われているため相手としてもこちらの意見に耳を傾けやすくなる。

尊敬型:相手の経験やスキルに対して尊敬している態度を示す

①こんなことを◯◯さんの前で申し上げるのは釈迦に説法ですが

「釈迦に説法」という言葉は、目上の人に対して恐縮・謙遜しながら何かを提案する際に使われることもあり、その意味でマウントポジションを提供する際に有効に働く場合がある。

「釈迦に説法」この言葉を冒頭に持ってくるだけで、相手は魔法にかかったかのようにあなたの意見や提案に耳を傾けてくれるようになるだろう。

②いただいたご指摘を踏まえ、改めて考え直してみたのですが

プライド高めな上司に対して、自分の提案を通す際に使えるフレーズ。

「私はあなたの意見を重視していますよ」「あなたに対して私は忠実ですよ」ということを示しつつ、議論を進めたい方向に誘導することができる。

③この点については◯◯の専門家である◯◯さんに伺いたいのですが

相手を専門家としてみなしていることを意図的に示すことで、相手のメンツを立てるテクニック。会議や商談の場面で主導権を握りたい場合に有効である。

類似の例としては、次のようなものが挙げられる。

「◯◯のプロである◯◯さんからすれば、当たり前の話かもしれませんが」
「◯◯さんのような国際的な感覚をお持ちの方からすれば、当たり前の話かもしれないのですが」

「マウントさせてあげる」スキルを活用し、人を組織を上手に動かそう

仕事をスムーズに進めるうえでは、人と組織を上手に動かす必要がある。そのためには、社内外の関係者に味方になってもらうスキルが必要不可欠である。

仮に世の中の課題を解決する素晴らしいアイデアを着想したとしても、そのアイデアを評価してもらえなければ何も始まらない。

また、そのアイデアが承認されたとしても、社内外の関係者の共感がなければ、十分なサポートが得られなかったり、様々な抵抗を受ける可能性もある。

それゆえ、ビジネスパーソンには人間心理を深く理解し、社内外の関係者に「味方になってもらう」スキルが求められる。このスキルが不足していると、人と組織を動かすうえで、さまざまな困難に直面することになる。

逆に人間心理を深く理解し、社内外の関係者を味方につけることができれば、あらゆる仕事をスムーズに進めることができる。そして、そのための最も効果的な方法の1つが「マウントさせてあげる」スキルなのだ。

「マウントする」のではなく「マウントさせてあげる」というスキルを習得できれば、あなたはさらに超一流のビジネスパーソンに近づくことができるだろう。

5. 本書のココがすごい!

今回紹介した、『人生が整うマウンティングマウンティング大全』マウンティングポリス著(技術評論社)のすごいところは下記に集約される。

①世の中にあるマウンティングを体系化して説明しているのが、とても面白い。

②読むと、マウンティングが面倒なものという考えから、人間の本質をついたイノベーションを起こす力があるものだという発想に変わる。

③人間のマウンティングしたいという欲求を利用するという視点が斬新

【著者】 マウンティングポリス

「人間のあらゆる行動はマウンティング欲求によって支配されている」「マウンティングを制する者は人生を制する」を信条に、世の中に存在する様々なマウンティング事例を収集・分析し、情報発信に取り組むマウンティング研究の分野における世界的第一人者。

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