【社説】大阪・関西万博 今なぜ?の疑問に答えよ

2025年大阪・関西万博の開幕まで1年を切った。国内では20年ぶりの大規模国際博覧会なのに、開催ムードは一向に盛り上がらない。

いまなぜ万博なのか、という根本的な疑問を多くの国民が持っているからだろう。元日に能登半島地震が発生し、被災地の復旧復興を優先すべきだとの声も上がる。

多額の税金を費やす以上、政府や大阪府・市は開催意義の説明を尽くすべきだ。

万博は大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で、来年4月13日から10月13日まで開かれる。会場ではシンボルの巨大木造屋根「リング」の建設が進む。

政府や主催の日本国際博覧会協会(万博協会)は、会場を「未来社会の実験場」と位置付ける。来場者が新技術を体感する場になるはずだが、目玉の「空飛ぶクルマ」は商用運航の見通しが立たない。

万博の華である海外パビリオンは各国が自前で建てる施設で遅れが目立つ。建設費の高騰や労働者不足の影響で、開幕に間に合わない施設が出るのは避けられまい。

1970年大阪万博の「月の石」、2005年愛知万博(愛・地球博)の「冷凍マンモス」のように話題性のある展示物が乏しく、前売り入場券の売れ行きは鈍い。万博協会の幹部が「隠し玉がある国は早く公表してほしい」と嘆くほどだ。

テーマの「いのち輝く未来社会のデザイン」が分かりにくいのも一因だろう。大阪万博の「人類の進歩と調和」、愛知万博の「自然の叡智(えいち)」は親しみやすかった。

国民の関心の低さは、大阪府・市が昨年12月に全国6千人を対象にしたアンケートにも表れている。

1年前と比較すると、万博開催を知っている人が88・6%に増えた半面、興味や関心がある人は34・1%、来場する意向がある人は33・8%にいずれも減少した。全体より大阪府民の下落幅が大きいのは深刻ではないか。

原因について大阪府・市は「万博準備の懸念に関する報道と、国際情勢の不安定化による先行きの不安感」と的外れな分析をしている。興味や関心を引く魅力に欠ける現実を直視すべきだ。

国、大阪府・市、民間が均等に負担する会場建設費は最大2350億円で、当初の2倍近くに膨らんだ。運営費1160億円は入場券の販売収入などで賄う計画で、販売目標の2300万枚を下回れば赤字の可能性がある。赤字を埋めるために税金を追加投入するのは論外だ。

政治団体・大阪維新の会代表で万博協会副会長を務める吉村洋文大阪府知事は、万博を批判したテレビコメンテーターを名指しし、会場への出入りを禁止すると発言した。すぐに撤回したが、万博の私物化は見過ごせない。

大阪府・市には万博を誘致した責任がある。批判に目くじらを立てるより、中身の充実に力を入れてほしい。

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