ボルボ EX30の衝撃シンプリシティ! テスラ以来、メカスイッチを極限まで減らしたエコ上質EV(小沢コージ)

全長4.2m台で全幅は1.85mを切る(写真)小沢コージ

【小沢コージ クルマは乗らなきゃ語れない】

ボルボ EX30
(車両価格:¥5,590,000/税込み)

◇ ◇ ◇

シ、シンプル過ぎる! エクステリアもそうだが、一番ビックリしたのはインテリアだ。マッチ箱風のキーを握り、近づくとドアロックが自動解除。これだけでもイマドキのEVっぽいが、それ以上にインパネが超そっけない。

パッと見、丸というより四角い小径ステアリングの左右にレバーがそれぞれ付いてる他は、センターに12.3インチの大型縦型モニターがあるだけ。

独立メーターはなく、エアコン送風口もボルボらしいオシャレな縦型以外に見当たらない。他のスイッチ類もステアリング内に十字キーと物理スイッチが数個と、中央ひじ掛けに2カ所のパワーウィンドウスイッチとタッチスイッチがあるだけ。

リアウィンドウも前席からはフロント用スイッチの切替えで開けることになっており、色々省略されまくっている。それが新型ボルボ EX30の面白さだ。

リサイクル素材っぽい安っぽさは一切なし

23年に日本発売、今年2月から本格納車が始まった北欧ボルボの新世代コンパクトEVなのだが、一見既存ボルボEVのXC40やハッチバックのC40の兄弟車にも見える。

だが骨格もコンセプトも完全なる新設計で、良い意味でボルボの伝統を引きずってない。ボディはサイズ感からデザインまで新しく、左右に寝かせたTの字に光るLEDヘッドライトは既存のトールハンマーデザインだが、LEDのセグメント分けっぷりは今までと全然違うし、何より全長4.2m台で全幅1.85mを切る小ささが凄い。

「ボルボ史上最小SUV」をうたうように、これまでで一番小さく、それでいて大人5人が普通に乗れ、318ℓのラゲッジルームも備わる。必要にして十分だ。

インテリアには今まで以上のリサイクル素材が使われ、現状プラスティック類のリサイクル率は17%。今後この比率はどんどん大きくなっていく予定で、当然のことながら贅沢な本革や天然ウッドパネルなどは一切使われてない。

今回乗った「ミスト」のインテリアはリサイクルポリエステルを70%使った線維でシート生地を編んでおり、合皮はコルクや松脂、再生ペットボトルの生成品。そのほか亜麻を使ったインパネ素材など環境に優しい天然素材が使われ、どれも質感は高く、リサイクル素材っぽい安っぽさがない。さすがはボルボだ。

“新しモノ感”はテスラEVに初めて乗った時のよう

肝心の走りもまた新しい。ボディ骨格はグループ企業も使う新世代のSEAアーキテクチャーで、剛性は非常に高く、なおかつ軽い。今回乗ったシングルモーターエクステンデッドレンジ仕様は272psのリアモーターと69kWhの大容量電池を備え、車重1700kg台。モード航続距離は560kmと長く、オマケに0-100km/h加速は5.3秒とスポーツカー並み。

それでいて、走り味は上質な柔らかさとしっかり感を兼ね備えたもので、これまでにない新プレミアムEVの味わい。

さらに面白いのはインフォテイメントで、日本車ではホンダしか使ってない車載グーグルを本格搭載。「OKグーグル」の呼びかけでスマホライクに使えるほか、グーグルマップがそのまま使え、停止中にはYouTube視聴も可能。さらにこの縦型モニター上部に実はスピードメーターが組み込まれており、ここでエアコン、オーディオ、電話、車両設定、ハザードスイッチのオンオフまで行える。

感覚的には、テスラEVに初めて乗った時のような新しモノ感が味わえ、それでいて質感はボルボプレミアム。

イマドキのEVに何回か乗ってみたけど、言うほど新しさは感じなかった……というアナタ。EX30は他とはひと味違いますので、是非ひとつ。

(小沢コージ/自動車ジャーナリスト)

© 株式会社日刊現代