5千個の入れ歯に圧倒、香川の異色美術館 歯とアートがテーマ「口福」願い

インプラントの模型を見せる「歯ART美術館」の飯間昇館長=2024年3月25日、高松市庵治町

 穏やかな瀬戸内海を一望できる高松市庵治町の湾岸沿いに、歯とアートをテーマにした“珍スポット”がある。「歯ART美術館」だ。館内外に展示されるのは、5千個の使用済み入れ歯や高さ約150センチの歯の模型など。来年4月に開館20周年を迎え、近年は海外からも客が訪れるという。(共同通信=吉田梨乃)

 美術館の入り口で、目と鼻がない人間の顔が大きく口を開け、白い歯と舌を見せた奇妙な石のオブジェたちに出迎えられる。「面白いでしょ」と4代目館長の飯間昇さん(71)はほほえんだ。

 2005年、入れ歯や差し歯の製造販売を手がける歯科技工の会社「和田精密歯研」(大阪市)の創業者和田弘毅氏(90)が、人々の口の幸せ「口福」を願い、歯の大切さを伝えたいとの思いで故郷の近くに開館した。

 館は4階建て。展示品でひときわ目を引くのは、全国の歯科医から集めた5千個の入れ歯を収めたケース。入れ歯一つ7万円で計算すると総額3億5千万円相当だ。「ぞっとするやろ。歯を粗末にしたらこれが必要になる」。虫歯で歯をほぼ全てなくしたという飯間館長ははにかんでみせた。

 この他、義歯や昔の診察台、インプラントの模型などを展示。和田氏や同社の従業員が世界各地から集めた約300枚の仮面や300台以上のクラシックカメラなども展示。

 最上階の一角は地元アーティストらにギャラリーとして無償で貸し出し、企画展示を隔月で実施する。吹き抜け窓から瀬戸内海の志度湾を眺められるカフェも併設、落ち着いたひとときを過ごせる。

 飯間館長は「歯は一生連れ添う宝物。波の音を聞きつつアートに触れ、歯の大切さを学んでみて」と話している。

 入館料は大人600円で中高生200円、小学生以下は無料。年中無休で開館時間は午前10時~午後5時。問い合わせは電話087(871)0666。

5千個の使用済み入れ歯ケースを前に、歯の大切さを語る飯間昇館長=2024年3月25日
「歯ART美術館」の入り口にある、大きく口を開けた奇妙な石のオブジェ
歯の模型と飯間昇館長

© 一般社団法人共同通信社