若葉竜也が日本のドラマ界を変える? 三瓶役が話題の『アンメット』で担う役者以上の役割

若葉竜也を見ていると、ワクワクする。日本のドラマ界を変えてくれるような存在になるかもしれない、と思うから。

役者の仕事というのは、カメラの前で演技をするだけではない。ただ、スピード感が求められる連続ドラマの現場では、どうしても役割を分けざるを得ない瞬間がある。3月31日に放送された『だれかtoなかい』(フジテレビ系)で、鈴木亮平が「日本の業界で俳優が先頭に立ってプロデュースをするってことが、あまり良くないとされていた風潮があった」と語っていたように、監督業、脚本業、プロデュース業、俳優業……と“分業制”で作品づくりを行うのが、従来のスタンダードだ。

しかし、若葉は『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系/以下『アンメット』)において、台本の準備段階から打ち合わせに参加をし、0から1を作り上げる作業をスタッフとともに行っているらしい。

これまでも、作品をつくる上で一切の妥協を許さなかった若葉が出演する『アンメット』は、放送開始前から「名作になるだろう」と思っていたが、第1話を観た時点で、その予想は確信へと変わった。ふだんはテレビドラマを観ないという人にも、自信を持って勧められる作品になっている。

若葉が演じている三瓶友治は、丘稜セントラル病院で働く脳外科医。主人公の川内ミヤビ(杉咲花)の同僚なのだが、どうやらただの仕事仲間ではなさそうだ。第2話のラストでは、それ以上の関係を匂わせる発言が飛び出していたりと、物語の鍵を握る存在になってくるのは間違いない。

気まぐれで、なにを考えているのか分からない。だからといって、とっつきにくいわけではないし、ふつうに他者とじゃれ合ったりすることもある。三瓶は、猫のような人だなぁと思う。

みんなを受け入れないように見えて、実はみんなを受け入れている。懐が深いところは、演じている若葉に似ているだろうか。若葉がいい作品を作りたいという一心で動いているとしたら、三瓶は少しでも患者を回復させるために手術に臨んでいる。

筆者のなかでとくに印象に残っているのは、第1話。記憶障害を抱えるミヤビが、三瓶の顔を覚えておくために「写真を撮っていいですか?」と聞くシーンでのこと。今となっては、実は温かい人というのが分かっているので、そんなに驚くことはないと思う。ただ、序盤の三瓶はとにかく無愛想だったため、「写真撮られるのなんて、嫌だ」と拒否するのでは……? と勝手にヒヤヒヤしてしまった。

しかし、三瓶は「どーぞ」と快諾。それどころか、ゆるっとピースまでしてみせたのだ。このシーンで、一気に三瓶ファンになった人も多いのではないだろうか。筆者も、このピースを見た瞬間、「若葉竜也、最高すぎる……」と心のなかでガッツポーズを取ってしまった。

また、第2話にメインゲストとして出演した島村龍之介と黒田昊夢は、若葉が発案したオーディションで選ばれたらしい。サッカー強豪校を舞台とした第2話は、彼らのフレッシュな演技が見どころになっていた。

なかでも、島村は身体の左側の感覚をすべて失う“左半側無視”という後遺症を患う難役に挑戦。未視聴の方はぜひチェックしていただきたいのだが、『アンメット』をきっかけに、さまざまな作品に出演することになるだろう……と誰もが確信するほどの表現力を見せていた。

経験が浅い役者に、難度の高い役をあてがうのは、スタッフ陣もかなりの覚悟が必要だったはずだ。ただ、『アンメット』には若手を育成させられるだけの心の余裕がある。それは、主演の杉咲をはじめとし、若葉に井浦新に岡山天音に……実力派のキャストが勢揃いしているからできたこと。

このドラマは、一体どこまで突き抜けてしまうのだろう。第3話も、重厚感のある素敵な時間が堪能できるのを楽しみにしている。

(文=菜本かな)

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