国立大法人化20年、岩手大学・小川智学長に利点や現状を聞く

法人化から20年がたち、「産学官連携で地域に貢献する優れた人材育成を目指す」と語る岩手大の小川智学長

 国立大学の法人化から20年がたった。本県唯一の国立大である岩手大の小川智学長(65)は、地元の特色を生かした研究・教育が可能になったと利点を挙げる。一方、人件費や教育研究費、光熱費などに充てる国の運営費交付金削減で大学経営が厳しさを増しており、地方の実情に即した運用を求めている。

 (聞き手は報道部・内城俊充)

 ―国立大の法人化から20年がたった。

 「大学のミッション再定義を求められた時期と、東日本大震災からの復旧復興が重なり、大きな学びがあった。その後は大学がグループ分けされ、就職率や大学院進学率、研究実績など共通指標の中で査定・相対評価されて運営費交付金が増減する厳しい仕組みができた。めまぐるしい変化だった」

 ―法人化の評価は。

 「法人化は悪いことではない。地域防災、平泉文化、ものづくり技術、分子接合技術など岩手大ならではの研究センターは従来の概算要求では通らなかった。特色ある研究と教育への展開は大きなメリットだ」

 「ただ、基礎的な運営費交付金は毎年減らされている。効率的運営はどこまで可能なのか。自分たちで稼ぐのは重要だが、都市圏と地方の大学では事情は大きく異なり、一律の削減は困る。功罪は冷静に判断しなければならない」

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