タカアンドトシ「尊敬されるタイプじゃないんです。僕らはタッグ屋なので(笑)」令和ロマン、錦鯉、タイムマシーン3号…後輩芸人に影響を与える存在に

タカアンドトシ 撮影:武田敏将

札幌よしもとの一期生としてデビュー後、「欧米か!」でブレイクすると国民的人気芸人になったタカアンドトシ。2人は後輩芸人のインフルエンサーになり、いまもネタを作り続けている。結成から30年、タカアンドトシが目指すのは“看板”だ。彼らの「THE CHANGE」に迫る――。【第3回/全3回】

プロレスラ―に例えるとロード・ウォリアーズ

――レギュラー番組では『帰れま10』(テレビ朝日系)がヒットします。

タカ 「運がよかったなと思います」

トシ 「スタッフに恵まれました。いまはナスDと呼ばれている友寄(隆英)さんが“タカトシさんで番組をやりましょう”と言ってくれたのが、『帰れま10』なんです」

――タカさんは「1人で番組に出たくない」と話していますが、その真意を教えてください。

タカ 「コンビ間の格差が出てしまうのはよくないんじゃないかと思って、なるべくコンビだけの仕事にしようと。マネージャーには“相方だけに仕事のオファーがきても、一度、僕に確認してほしい”と話しているんです」

――トシさんも異存はないと。

トシ 「そんなにピンの仕事が来るわけでもないし、無理してピンの仕事をやろうという気持ちもないので。幸いコンビの仕事が多いので、それがあるうちは頑張ろうと思います」

―― 結果的に、タカトシさんにとってプラスにつながったと思います。

トシ 「そうですね。僕らは『タッグ屋』と呼ばれていますから」

タカ 「昨日、スポーツ新聞に載ったインタビューの見出しね(笑)」

トシ 「“タカアンドトシをプロレスラーでたとえると?”という質問に、“僕らはタッグ専門なのでロード・ウォリアーズでしょうか”と答えたら、『タッグ屋』と書かれて(笑)」

―― カッコいいじゃないですか(笑)。いまのM-1を観て感じることはありますか?

タカ 「M-1が年に一度のお祭りのようになって、ネタをしやすい環境になっていると感じます。僕らのときは緊張感がすごくて、お客さんが笑ってくれなかったので」

トシ 「当時は、決勝に出たほとんどのコンビがウケなくて、突出してウケた一組が優勝する、という大会でした。でも、いまは違って。去年は“みんなでM-1という番組を盛り上げよう”という雰囲気だったと聞いて驚きました。僕らなんて、他の芸人と目を合わせようとしなかったですから」

タカ 「僕ら以外の芸人はみんなスベってくれ、と思ってました(笑)」

トシ 「ただ、僕らの前の千鳥がスベったんですけど、それはそれでやりにくかった(笑)。いまの若手はM-1をテレビ番組として考えているんです。控え室でボケている芸人を観ていると、器用な子たちだなぁと思います」

令和ロマン、錦鯉、タイムマシーン3号…後輩芸人に影響を与える存在

―― その代表が昨年優勝した令和ロマンだと思います。おふたりは以前から令和ロマンと仕事をしていたんですよね。

トシ 「令和ロマンが2年目でNHK新人大賞を獲って、僕らがやっているラジオ番組のアシスタントを1年務めてくれたんです。ネタが面白いことはわかっていたけど、M-1優勝後に飲みながら話を聞いて“こんな緻密に考えているんだ”と驚かされました。その年のM-1全体の傾向を分析して、周りの芸人のムーブを考慮しながらネタを選んで……優勝したから説得力があるんですよ」

――令和ロマンのおふたりは「タカトシさんになりたい」と話しています。

トシ 「2人がそう言ってくれることが救いになってます」

タカ 「人付き合いも上手いんだよなぁ(笑)」

トシ 「(高比良)くるまなんて人懐っこくて、いまの若手には珍しくグイグイくる(笑)」

――「M―1グランプリ2021」で優勝した錦鯉との付き合いも長いですよね。2本目のネタは、タカさんに「めっちゃ面白いな」と言われて決めたとか。

タカ 「僕らのイベント“新ネタやろうぜ!”に錦鯉が出てくれて、猿を捕まえるネタが面白かったから、思ったことを言っただけなんです。優勝しなかったら、責任を感じていましたね(笑)」

―― タイムマシーン3号は、タカトシさんの番組での“俺たちも、自分たちが面白いと思ってなくてもウケると思ったらやってたよ”という言葉が転機になったそうです。

タカ 「売れていないときも客を絶対に笑わせていたから、彼らのことはすごいなと思ってました。他の芸人に“その笑いの取り方は云々”と言われても、お客さんを満足させることに重きをおくなら、タイムマシーン3号のやり方が正解だと思うんです。自分たちが“これが一番面白い”と思ってウケないネタより、自分たちには3番目、4番目でもお客さんが喜んでくれるネタを選んだほうがいい。僕は笑い声が聞きたいんですよ」

―― 後輩芸人に影響を与える存在になっていることは、どう捉えていますか?

トシ 「結果的にそうなっているかもしれないけど、“誰かに影響を与えよう”と考えたことは1ミリもなくて。目の前のお客さんを笑わせることだけを考えてきました」

タカ 「どちらかというと尊敬されるタイプじゃないんです。僕らはタッグ屋なので(笑)」

トシ 「そうそう。シングルのベルトを持ってないとね(笑)」

―― テレビのレギュラーがありながら、いまも定期的に新ネタライブをやっています。

タカ 「テレビ出演本数がピークの頃は忙しくてネタを作る時間がなかったけど、少し落ち着いたときに“ボーッと休んでいるのも違うな”と思って、劇場の出番を増やしてもらったんです。テレビ番組はどうなるかわからないから、劇場で漫才をやっていれば食えるようにしたくて」

―― いまはNGKの看板を目指しているそうですが。

トシ 「もうトラウマも払拭されましたし、中川家さんや海原やすよ・ともこさんといった近い先輩が看板になっているので、いつかはそうなりたいと思ってます」

タカ 「30年経って、ようやく吉本興業のすごさがわかったんです。これだけの数の劇場を回して、70歳を超えた師匠方が舞台に立ち続けている。悪口ばかり言ってきたけど(笑)、いい会社ですよ」

取材・文/大貫真之介

左:タカ。1976年4月3日生まれ、北海道出身。
右:トシ。1976年7月17日生まれ、北海道出身。
中学校の同級生だった2人が1994年5月にコンビ結成。2004年の「M-1グランプリ」で決勝進出したほか、2005年と2006年の「爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」(NHK総合)で優勝。レギュラー番組は『帰れマンデー見っけ隊!!』(テレビ朝日系)、『今夜はナゾトレ』(フジテレビ系)、『有吉ぃぃeeeee!そうだ!今からお前んチでゲームしない?』(テレビ東京系)など。

© 株式会社双葉社