未来感じる「動く心臓」「あの“人気アニメ”で見た機械」「50年前の進化系〇〇」 パビリオン展示物の最前線 【大阪・関西万博まで1年】

大阪・関西万博の開幕まで1年を切る中、建設費の上振れや海外パビリオン建設の遅れなど、万博に対する不安や批判が相次いでいますが、パビリオンの関係者たちは国内外から訪れる人をワクワクさせるような展示をしようと、急ピッチで準備を進めています。未来の医療技術を想像する「動く心臓」をはじめ、「アニメで見た未来の機械」、「50年前の万博の進化系〇〇」など、具体的に知っているようで知らない、万博の“見どころ”の最前線を取材しました。

■「ドラゴンボール」を彷彿⁉文字や図形が目の前に浮き上がる端末

(中野颯大記者)

「手のひらサイズの大きさの端末ですが、メガネに装着すると目の前に情報を浮かび上がらせてくれるのです」

まるで人気漫画「ドラゴンボール」に登場する“スカウター”のような機能を備えた、この機械。東大阪市に本社を置く「山本光学」が開発したウェアラブル端末です。

装着すると、視界には数メートル先に緑の文字などが浮かんでいるように見える上、反対側の目で実際に見ている景色も見えるため、視界の妨げにもなりません。

文字やイラストなどを目の前に表示することで、音声の自動翻訳のほか、救急車のサイレンの音を認識し、聴覚に障害のある方に知らせるなど、まさに“無限”の使い道がある端末なのです。

この端末が展示されるのは、大阪府と大阪市が出展する「健康」をテーマとした「大阪ヘルスケアパビリオン」。ガラス張りの屋根が特徴的なこのパビリオンでは、近未来の暮らしを感じてもらおうと民間企業など400社以上が展示を予定しています。

■25年後の姿を予想!?JR西日本が将来駅に設置を検討

JR西日本が大阪ヘルスケアパビリオンでの設置に向けた、「モックアップ(試作品)」と呼んでいるボックス型の装置。

このボックスでは、血管や肌・骨格などをカメラで撮影し、健康状態を独自に分析します。測定時間は、わずか3分ほど。その後、別のエリアで25年後の姿がアバターとして表示され、健康状態を知ることができます。

JR西日本は将来、駅に設置することも検討しているという、まさに“未来のどこでも健康診断”なのです。

(JR西日本 イノベーション本部 小森一課長)

「鉄道をご利用のお客様にも、健康状態を測定できるような場所をご提供することで、できるだけ長い間、健康管理を続けていただく。そういう場所を作っていきたい」

■美容室で髪を切るのと同時に…糖尿病のリスクをチェック!

さらに、パビリオンに出展予定の美容院「Tellme(テルミー)」では―

(有𠮷優海記者)

「糖尿病のリスクを髪の毛で知ることができると聞いたんですが」

(美容師)

「きょうは毛髪の分析をさせてもらいます」

なんと、切った髪の毛から「糖尿病のリスク」を測る研究を、専門機関と一緒に進めているのです。

この技術のウリはなんといっても、その手軽さ。髪を切るついでに検査ができ、結果はわずか2週間ほどで出るということです。

(テルミーソリューションズ 山本光平CEO)

「病院に行かない方は、痛い・恥ずかしい・面倒くさいということがある。美容院は定期的に通っていて、しかも、痛くなくできるのが大事なところ」

記者に届いた検査結果ではイエローの中心部分を指していたが、糖化リスクが上がり始めていて、生活習慣を見直すよう指摘されました。

■iPS細胞から培養の心筋シートで「動く心臓」を

大阪・関西万博には、150を超える国と地域が参加し、各国の文化や技術が、それぞれのパビリオンに集約されます。

その中で、今回の目玉として、兵庫県淡路市に本社を構えるパソナグループと大阪大学の澤芳樹名誉教授が共同で準備しているのが、未来の医療を担う最先端の技術です。

赤い液体の中に入っていたのは約500万個のiPS細胞を使って培養した心筋シートです。

さらに今、1年後に向けてもう1つの研究が進められているのが「動く心臓」です。

今はまだ動いていませんが、展示する際には心筋シートを加工して、拍動する「心臓」を作り上げるというのです。

(大阪大学 澤芳樹名誉教授)

「若い人たち、特に子供にいまの科学の力を見てもらって、興味を持ってもらって、我々の次の世代を担ってもらえればいいなと思う」

この「動く心臓」が展示される予定なのは、「大阪ヘルスケアパビリオン」と「パソナ館」の2か所。「パソナ館」では、鉄腕アトムや天才外科医・ブラックジャックが会場を案内する仕掛けも用意されています。

■1970年の万博「人間洗濯機」が進化!

そして、50年の時を経て再び展示されるのは、進化した「ミライ人間洗濯機」です。

1970年の大阪万博で大きな話題を集めた全自動で体を洗ってくれる「人間洗濯機」が、55年ぶりに戻ってくるというのです。

(サイエンス 青山恭明会長)

「54年前は小学校4年生で、サンヨー館で見た人間洗濯機が忘れられない。あのときの僕のように、『え!?嘘やろ!?』と子供たちが言ってくれるような未来型の人間洗濯機を再びやろうと5年前に決めた」

一面が真っ白になるほどの小さな泡の力を使って、毛穴の汚れを落とす。この技術を用いて浴槽に浸かるだけで綺麗になれるという、まさに“次世代の人間洗濯機”を生み出したのです。

この技術は浴槽だけにとどまりません。

開催期間中の重要な問題が「暑さ対策」です。万博で初めて公開されるのが、泡を作る技術を応用して、水の中に細かな泡の層を生み出し、曇った状態を作り出すことで、人工的に日陰を作るというのです。

未来の技術を間近で感じることができる大阪・関西万博。訪れた人たちをワクワクさせるための準備が急ピッチで進められています。

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