「その言葉は大きかった」 今季初先発の浦和MFが公式戦6戦連続ベンチ外も心折れなかった訳

名古屋戦で今季初ゴールを決めた安居海渡【写真:徳原隆元】

安居は公式戦スタートから6戦連続でベンチ外の厳しい時期を経験

浦和レッズは4月28日のJ1リーグ第10節で名古屋グランパス戦と対戦し、2-1で勝利した。先制点をマークしたのは、今季初スタメンのMF安居海渡。昨季は公式戦60試合のうち54試合に出場した選手がなかなかチャンスを掴めなかった序盤戦だが、周囲の助けを受けつつ、観察力も発揮しながら今季のチームに順応してきている。

浦和を率いるペア・マティアス・ヘグモ監督は、今季から4-3-3システムを導入してキャンプをスタート。安居はボランチが本職と自身が語るなかで、昨季はマチェイ・スコルジャ監督にトップ下としても重宝された。その中間地点にあるインサイドハーフがメインになると見られたが、MF伊藤敦樹やMF小泉佳穂、あるいはMF関根貴大やMF中島翔哉といった比較的に長所が分かりやすい選手が先にチャンスを得て、シーズンインは厳しい立場でのものになった。

公式戦のスタートから6試合連続でベンチ外となり、一時は精神的にも厳しい時期になった。そんな時の試合のメンバーから外れた時の練習前、過去にトップチームのコーチを務めて現在はユースチームを率いる平川忠亮監督と、同チームの塩田仁史GKコーチから「いいところを分かってもらうのに、少し時間がかかるタイプだから」という声をかけられたという。安居は「その言葉は大きかった」として、「折れないで続けるのが大事だなと思えた」のだと話した。

公式戦の7試合目から途中出場を4試合続け、ついにこの日のスタメンが回ってきた。そして前半24分、名古屋のミスが重なったところ、敵陣のゴールに近いところで浦和ボールになると、FWチアゴ・サンタナのパスを受けて安居がゴールに流し込んだ。自分の前のスペースに出てきたパスについて「正直、驚いた。あれがストライカーの感覚なんだなと。遅れ気味でも、走り込んで決められて良かった」と、安堵の表情だった。

激戦区のインサイドハーフで勝負

この日の浦和は左ウイングに中島を起用したことで、より広範囲に動くタイプの選手であることから、ヘグモ監督が「そのような動きがあるので左(インサイドハーフ)の海渡はバランスを取らないといけない」と話したように、周囲を広く見たプレーを求められた。それでも背後へのランニングやプレスのスイッチを入れる動きも繰り返し、縦横無尽の動き。試合後には「疲労感も最後はあったけど、よくよく考えれば長く出られたのも今日が初めて。そういうのも含めて良かった」と充実感をにじませた。

安居がプレーした左インサイドハーフは、プレシーズンから多くの選手が競争するポジションになっていた。まずは小泉が開幕から起用され、MF岩尾憲が続いて出場を続けるようになったが負傷離脱。4月20日の第9節ガンバ大阪戦はMF大久保智明がこのポジションのスタメンだった。前述の関根や中島に加え、トレーニングではMFエカニット・パンヤや、MF早川隼平が入ることもある。

そのなかで当初は出場機会を得られなかった安居だが、チームとほかの選手を観察して「憲君からは、プレスにインサイドハーフから出ていかないとうしろも付いていかないし、前も分かりづらいというのもあるという話もしてもらったし、自分でも分からない部分を聞くこともあった。佳穂君は、ボールを受ける考えは自分以上にあるので、どういう身体の向きにしたらいいかも聞いたことがある」と話したように、アドバイス得ながら良さも吸収している。

弱点の少ない万能型であるが故の新監督のチームで出遅れた面を感じさせた安居だが、この名古屋戦を機に昨季と同様の存在感を発揮していく可能性は十分だ。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

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